大きな音……いや、実際にはそうでもなかったかもしれない。でも私の耳には、背中越しに玄関のドアの閉まる音が大げさなほど響いた。涼が施錠をする音まではっきりと。
涼に手を引かれるまま、ここまで来てしまって本当によかったのだろうか。
「麻衣」
「ッ、はい!」
うわずった上にボリュームさえも狂った声で返事をする私に、涼は心配そうな視線を投げる。
「大丈夫?」
「あ、……うん、大丈夫、です」
ここまで緊張するとは恥ずかしすぎる。付き合っていれば恋人の家に行くことはあることだし、ここに来るのは初めてでもない。
「ごめん寒いよな。ちょっと待ってて。すぐタオル持ってくるから」
そう言って、私の頬に触れた涼の手は親指の腹で2、3度頬を撫でて、離れていく。そんな軽いスキンシップにさえ身体を震わせ、涼が触れた一点にだけ熱が集まっていく感覚に唇をキュっと結んで耐える。**************
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