教室の窓から、夕日がじんわり差し込む。
ドアがきしむ音と一緒に、来訪者がそっと入ってきた。
机に肘をつき、頭を抱える。
「……私、生きてる意味ってあるのかな」
蓮司は背もたれに寄りかかり、片手でペンを回す。
「あるかないかで言うと……あるだろ。
でも、“大きな意味”を求めると疲れるんだよな」
「疲れるって……」
「だってさ、毎日飯食って学校行って、
それだけで終わる日もあるだろ?
そんな中で“意味”を探すのは、重すぎる」
来訪者が小さく息を吐いた。
「でも、なんか……虚しい」
蓮司は肩をすくめ、軽く笑った。
「虚しいのは当たり前。
俺だって、夜ベッドで天井見てるときに『なんで俺ここにいるんだ?』って思う」
「え……蓮司でも?」
「うん。
でもさ、意味なんて後からくっついてくるもんだと思う。
誰かを笑わせたとか、
道端で猫を見て笑ったとか、
それで十分。積み重なって、後で“あ、あのとき俺いたな”ってなる」
来訪者が視線を落とす。
「小さいことでも、意味になるのかな」
「なる。
俺は毎朝パンを焦がさずに焼くとか、
帰り道で友達に『おつかれ』って言うとか、
そんな小さなことで日々を生きてる」
外の風が窓を揺らし、教室に静かに入り込む。
「だから、意味を見つけようとしすぎなくていい。
生きてるだけで、誰かの景色の一部になってる。
それが存在意義の始まりだと思う」
来訪者は小さく頷き、机に手を置いた。
「……少し、見えてきたかも」
蓮司はにやりと笑って、
「見えなくてもいい。
気づいたら意味が増えてる、くらいがちょうどいい」
夕日が壁を染める中、教室は静かに色を変えていった。
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