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夕暮れの教室は、少し冷たい空気に包まれていた。ドアのきしみと一緒に、来訪者がそっと入る。
机に手を置き、顔を伏せたまま小さくため息をつく。
「……誰にも言えないことがあって、重くて」
蓮司は窓際に腰をもたれ、片手でペンをくるくる回す。
「言えないってやつは、重いんだよな」
「うん……言ったら、きっと嫌われるか、笑われるか、
誰も理解してくれない気がして」
「それ、普通の感覚だと思う。
誰だって自分の弱さや失敗を見せるの怖いし」
来訪者は小さく肩を震わせる。
「でも、ずっと溜めてると、自分が壊れそうで」
蓮司は少し笑って、肩の力を抜く。
「俺もさ、隠してることある。
でもな、秘密って一人で抱えるしかない日もあるんだよ。
だから、抱えてる自分を責めなくていい」
「抱えるだけで……いいんですか?」
「うん。話せる時が来たら話せばいい。
タイミングは勝手に来るから。
今は溜めてても、ただの自分の一部」
来訪者が机の端を握りしめる。
「一人で抱えるの、寂しいけど……」
「寂しいのは当然。
でも、誰にも話せないものを抱えられる強さでもある。
秘密は重いけど、持ってる自分は負けじゃない」
外の風がカーテンを揺らし、教室に冷たい空気を運ぶ。
「無理に誰かに打ち明けなくてもいい。
そのままの自分を認める時間も、ちゃんと意味がある」
来訪者はゆっくり息を吐き、少しだけ肩を下ろした。
蓮司はにやりと笑いながら、
「秘密と一緒に過ごす夜も、意外と悪くないんだぜ」
教室の影が長く伸び、静かな時間がゆっくり流れていった。