テラーノベル
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静寂が広がる空間の中、―――は一冊のノートをめくっていた。
パラリ、パラリ
その音と同時に、それに詰まった僕らの全てが消えていくような気がした。
ゾムは退屈していた。
とてつもなく暇なのだ。これと言ってやることがない。そんな状況で、何かしたくて仕方がないと思うのは必然的だろう。
大先生たちで遊べたら最高なのだが、みんな先生に呼び出されてどっか行った。
「くそーー」
頭の中は暇暇暇。何かしたくてしかたがない。手足をそわそわさせながら、あたりをチラチラと見る。
この休み時間の間に猿山のところにでも行こうか。猿山は、この学校の教師だ。今は5年生の担任をしてる。ゾムは3年生。1年生のときに、教育実習生としてゾムの教室へ来た。そこからよく絡んでいた。
女子は女子、男子は男子で固まっている。
ゾムは普段あんな性格だが、そういう集団に話しかけるのは苦手だ。
教室の端の席に目がついた。
後ろ姿。栗色の髪。黄色いTシャツ。
………誰だっけ
ほんとにごめん。
けれど仕方がない。あまり話したことがないのだから。
チラッと周りを見てから、意を決して席をたった。
「何してるん?」
「うわぁあ!!!!」
肩をぽんと叩けば、オーバーすぎるリアクションが帰ってくる。一瞬教室中の目線がこっちに集まった。が、ちょっとしたらまたもとに戻っていった。
目の前の男子は、恥ずかしそうに肩をちぢこめている。
「ごめんごめんwそんな驚くとは」
「……いきなり触らないでよ ぉ、」
座っているせいか、彼が幼く幼児のように感じる。上目遣いでゾムをみてくる。
男にやられてもなんの需要もない。
「で、何してんの?」
「あぁ…これ」
彼は一冊のノートをパラリとめくった。
1ページ1ページに、びっしりと字や図、絵が描いてある。
「すっげえええ!!!!」
「そ、そう?」
コイツ、おもしろい。
ゾムは新しい玩具を見つけてご機嫌だ。
「何が書いてあんの?」
「んー、色々。日記とか、感情任せに書いたり、落書きしたり、睡眠時間とか食べたもの記録したり」
暇つぶしに使ってる。と彼はノートを撫でた。
ノートには天乃呂戊太。と書いてある。
あー、知ってる。聞いたことある。
どこで聞いたかは忘れたけど。
「呂戊太すげぇなぁ!!」
呂戊太の体がピクリと動いた。
「俺の名前、知ってくれてるん?」
「うん」
ゾムは咄嗟に頷いてしまった。
しまった。と思ったが、呂戊太が大層嬉しそうに微笑むので、言葉を飲み込んだ。
「ちょっと見せてぇや」
「ええよ」
はい。と呂戊太がノートを手渡してくる。
普通のノートだ。Campusとかいてある。
パラっと適当にページをめくる。
すごい。小学校に入ったところから書いているのか。そう匂わせる文章が書いてあった。
ゾムは好奇心に、自分の誕生日の日付を開いてみた。
『今日は、同じクラスの希君の誕生日。彼は4人の輪の中で笑っている。お誕生日おめでとう。俺もいつかあそこに入れたらな。』
呂戊太の顔をちらりと見る。
こちらと目が合わないので、またノートへと目を移した。
どうやら、他のやつの誕生日もしっかり祝っているようだ。クラスメイトから、先生まで。
最後のページを見ると、たくさんの名前と誕生日、好きなものや性格などが書かれていた。
ゾムは思わず魅入った。
おもしろい。自分は彼からこんなふうに見えているのか。
『鳥井希くん。3年間クラスが一緒。いつも、鬱島くんと、捏島くんと、桃瀬くんと一緒。先生にもよくいたずらを仕掛けていて見ているだけで毎日楽しい。』
知らず知らずのうちに口角が上がる。
「なににやけとんねん」
ぽんっと肩に手を置かれる。
後ろを見ると、鬱たちがいた。帰ってきたのだろう。
「大先生!!こいつおもろいで!!」
大先生は口を開けたまま硬直した。その横で豚平が天乃呂戊太くん。と囁いた。
「おー!天乃くんやな」
へらりへらりと笑う鬱。名前を呼んでもらえたことで喜んでいる呂戊太。
「そのノートなんなん?」
俺が手に持っているものに捏島が気づき、声をかけてくる。
「呂戊太のやで。めっちゃおもろいねん!!!」
呂戊太見せてもいい?と聞くと、少し焦り交じりにいいよと言ってくれた。
鬱たちがそれを見終わるのを待つ。
「アーはっはっはwww」
「こりゃあすごい」
「え!?天乃くんすっごwww」
やはり好感触。
3人は次々にページをめくっている。
美味しかった給食とか、呂戊太の絵とか。
ぎゃーぎゃーと騒ぎながらノートを見た。
「呂戊太すっげぇな!!」
「コイツおもれぇwww」
「ぁ、ぁ」
呂戊太は見るからに顔を赤くして、ありがとうとか細く答える。
それにまた鬱たちは大爆笑した。
「呂戊太ー!!!今日俺らと帰らんか!!」
ゾムは、呂戊太を帰りに誘った。
鬱たちには言っていなかったけど、歓迎してくれているようで、来いやーと言っている。安心した。
「いいん?」
「俺らが帰りたいのー」
強引に手を引いた。
「ちょ、希くん、」
「あー、俺のことゾムって呼んでぇや」
希くん。その呼び方にはどうも距離があって気に入らなかった。
「え、いいの?」
「俺がそーしてほしいの」
「じゃ、じゃあ」
ゾム。と無駄にいい声で言うのだからどこか、恥ずかしくなった。でも確かに、嬉しかった。
「そ、それでええんや」
「ゾム照れてるぅ〜〜」
横から鬱が煽ってくる。
「俺のことは大先生って呼んでな〜」
「俺は…なんでもええけどシッマって呼んでくれ!!」
「トントンって呼んでな」
呂戊太は一人一人の名前を声に出す。心から嬉しそうに言うものだから、こちらまで温かい気持ちになった。
「呂戊太のことはなんて呼ぼ」
「そーやなぁ」
「呂戊太…ろぼた……ロボタ…ロボット?w」
「誰がロボットじゃ!!」
そんなふうに騒ぎ立てていると、
ロボロ。誰かがそう呟いた。
「ええやん!!!」
「ロボロ!!ええなぁ!!」
「じゃ、改めてよろしくな!ロボロ!」
俺はまたぐいっと手を引っ張った。今度は廊下まで出るほどの力で。
「ちょ、力強いねんw」
廊下には5人の笑い声が響いていた。
「ロボロは兄弟とかおるん?」
ロボロとは初めて話すもので、まずは家のことから知ろうと思った。初めてでここまで打ち解けられたのも何かの縁だろう。
「兄さんがひとり。絵斗兄さんっていうんだけど」
「へーお兄さんいるんや」
「何歳?」
鬱たちが質問する。
「22歳」
「はへ〜結構年離れてんねんな」
ロボロは少し目をそらしたあと言った。
「俺ん家、離婚してん。兄さんはそのときに」
「ほぇ、なんか……すまんな」
「いいよ別に、離婚する前のこと何も覚えてないから」
「なんでなん?」
ロボロはきっぱりと言った。
「赤ん坊の時やってんwそんとき兄さんは……12?13?くらいだったかなー?」
全部後から聞いた話やから。とロボロが笑う。
内容は全く笑えない。離婚。3年生にしては難しい言葉だ。シッマは、その言葉に肩をビクリとあげた。
「てことで、おれも何も知らへんねん。」
だから気にしやんといて。とロボロは笑った。
みんな、意外にそういうのあるんだな。とゾムは頭の中で考えた。
「じゃあ俺とシッマこっちやから」
「じゃあな!!」
「おう」
2人の背中を見届けて、トントン、ロボロ、俺は歩き出した。
なんだか、前にもこういうことがあったかのように感じる。ほら、なんかあるじゃん。
なんか知っているようなことが起こって、これ2週目かも(?)とか思っちゃうやつ。
「ありがとう。ほんまに」
「なにが?」
急に礼を言い始めたロボロに、トントンもゾムも?マークだ。
「俺と、話してくれて」
「?」
「なんやいきなり」
ロボロの方を見る。ロボロも俺たちを見ていた。
「俺、友達もおらんし、話せる人も居なかったから」
嬉しかった。と、ロボロは少し寂しそうに笑った。
「…」
「俺らはもう友達やろ。これからもずっと」
やからそんな寂しそうな顔すんな。とトントンが言った。無言の俺とは違って、こんなことが言えるトントンはかっこいい。
「ありがとう…!」
「じゃあ、俺ん家ここやから」
また。とトントンは、その大きな家に入っていった。
「でっかい家やったなぁ、トントンの家」
「ほんまにな」
2人きりになった空間で、言葉が響いていた。
「……俺、あれよりでっかい家に住んでるトントンを見たことある気がする」
「奇遇やな、俺もや」
定期的に、2週目をみているかのような、そんな感覚がする。
自分が見てなくても、聞いてなくても、見ていないはずだったのに見える。そんな感じがした。
「ゾム、俺な、お前らと昔、めっちゃ昔」
会ったことある気がする。ロボロはそうつぶやいた。自分でも何を言っているか分からない。そんな顔をしながら。
「俺も、そんな気がする」
その日の夕焼けは、今まで以上に鮮やかで、橙色で世界が染まっていた。
橙に染まるロボロは、さぞかしそれが当たり前のように自然だ。
「お前、橙色似合うな」
「そうか?お前も綺麗やで」
ゾムと別れてから、俺はすぐランドセルからノートを出すと鉛筆を走らせた。
今日の給食なんかどうでもいい。睡眠時間もいらない。
手は動き続けた。
最後のページをめくり、クラスメイトという文字を消す。そこに、いつもより丁寧に”友達”と書いた。
なんども、なんどもそこを見た。見るたび口角ががっていった。
その日が、俺たちの出会いだった。
あれから、4年生、5年生とそれぞれクラスが離れてしまったけど、帰りは一緒だったし休み時間も集まっていた。
6年生、俺らはまた同じクラスになることができた。しかも担任は猿山。ゾムが一番好きな先生だった。
めっちゃ喜んだ。楽しかった。
楽しかった、?
うん。楽しかった。
「楽しかったなー、」
暗闇の中に、無駄にいい声が響いた。
呂戊太は、ノートをそっと撫でた。
すると、ぱらぱらとページをめくり始めた。
『4月7日 天気☼/☂
今日は始業式だった。ついに6年生。絵斗兄さんは、時は早いな〜と泣いていた。まだ卒業もしてないのに。この様子じゃ卒業式はどうなるんだろう。待ちに待ったクラス替え。ドキドキしながら張り出された紙を見た。はじめは自分の名前じゃなくて、鳥井希。その名前を無意識に探していた。ゾムは1組だった。次に自分の名前、それから他3人。みんなクラスが一緒だった。うれしくて仕方なかった。しかも担任は猿山先生。一番話しやすい先生だったから嬉しかった。この1年が楽しみだな』
普段より長い文章。字も丁寧で、明らかにこの日を特別扱いしているようだった。
「へー、懐かし」
呂戊太は目を通したあと、最後のページをめくった。
目につく、”友達”という文字。
「友達、かぁ 」
あの時の、光景が頭のなかで再生される。
みんな、俺に背を向けて逃げていく。待って、行かないで。と手を伸ばしても、それはゾムの手によって阻まれた。
斬られた。
ゾムに、友達に。
雑面が真っ二つになり、視界がクリアになる。
胸から下腹部にかけて、大きな傷ができていた。
そこから血が溢れ出す。
ぼやける視界の中、 ゾム達の口が動いたのが見えた。確かにその口角は弧を描いていた。
聞きたくない。嫌だ。と耳を塞いだ。
思い出すたび、苦しくて、惨めで、涙が溢れてくる。
「友達なんかッ………」
力任せにノートを破った。
ビリッと音がした、
だいっきらいだ
おはなしー
友情破壊!!!ドーン!!!!
はい、すみません。
こういうの、好きです。
呪鬼自体、話の内容めっちゃえぐいけど、本人たちの雰囲気で明るいものになってますよねww
それがいいんですけどね!!!
でもいつかガチのやつ見てみたいって気持ちがある。
映画とかにならないかなー、私絶対見ますよ。絶対人気ですよ。
まぁ、もう、叶わないんですけどね笑
話を戻しましょう。
呂戊太くんからしたら、ゾム達は初めての友達でもあって、親友でもあります。中でもゾムとは関係が深い。そんな人に斬られたら、皆さんはどう思いますか?
親友でも、なんでもいいです。想像してみてください。
大切な人に裏切られる気持ちを。
呂戊太くん可哀想!!すきすき!!
すみません。
ではまた!
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