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第1話 春の嫌がらせ
この春、櫻葉(さくらば)中学校に入学した梨柚は、自分の新しいクラスメイトの名簿を見て、
「嘘でしょぉ…..?」
と、隣にいた澪那(れな)に泣きついた。
梨柚のクラスの名簿には、あの、栲(たく)の名前があった。
栲は、小学校の頃のクラスメイトで、そして、
梨柚のことが好きだった。
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卒業式の日、みんなが友達や家族と写真を撮り、感動の涙を流す中、梨柚は中庭に呼び出された。 相手はもちろん……栲だ。
梨柚が中庭に入り、周りを見渡すと、桜の木の下に栲の姿があった。緊張しているように見えた。 梨柚が、
「話って何?」
と聞くと、栲が顔を真っ赤にして言った。梨柚も、何を言われるか、想像がついていた。
「梨柚、好きだ。付き合ってくれ!」
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「ほんとびっくりしちゃうよね〜。あのモテモテ男子栲が、まさかあんたみたいのが好きで、しかも告白して振られたんだから。おまけに中学のクラスも一緒。これはもう運命でしょ」
澪那が名簿を見て苦笑いする。
こんな奴に運命感じるなんて嫌だよ、と思う。
梨柚は結局、栲の告白を断った。
栲は、女子からモテる。栲のことが好きな女子はたくさんいる。梨柚が告白を断ったのは、その女子達から嫌な目を向けられたくなかったからだ。
ごめん、と謝る梨柚に、それでも栲は言った。
「俺、諦めないから。」と。
「バッカみたい。私は嫌だって言うようなつもりで断ったのに。諦めてくれないと困るんだけどぉ!」
今更腹が立ってきて、梨柚は泣き言のように叫ぶ。
困る、というのは、この時梨柚が思っていた「困る」よりも、もっと、大きな、梨柚の中学生活を動かすような、そんなものだったということに、梨柚はつい最近になって、気付かされた。