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霧の中を進む道は、まるで水の上を歩いているようだった。足元に広がる湿地は、空を映す鏡のように静かで、どこまでも青白い。
「ここが……水鏡の祠」
et(私)は、霧の切れ間に現れた小さな社を見上げた。
社は水面に浮かぶように建っていた。
その周囲を囲むように、白い花が咲いてい
る。
「空気が……違う」
mf君が立ち止まる。
「霧が、流れてない」
ya君が低く呟いた。
「まるで、時間が止まってるみたいだな」
jpが辺りを見回す。
「ここ、怖い……」
dnがetの後ろにぴたっとくっつく。
「大丈夫、dnちゃん。rnがいるから」
rnがにっこり笑う。
「etさん、ここは“記憶の反響点”です」
noさんが静かに言った。
「強い想念が、霧に染み込んでいます。
触れれば、過去が“映る”かもしれません」
「映る……?」
etが水面を見下ろす。
その瞬間──
水が、揺れた。
波紋が広がり、etの影が歪む。
そして、もうひとつの影が、隣に現れた。
「……誰?」
影は、etの手を取った。
その手は、温かくて、懐かしくて──
「っ……!」
視界が、白に染まる。
──水の中に、記憶が沈んでいた。
幼いetが、誰かの手を握っている。
その人の顔は見えない。
でも、声が聞こえる。
『大丈夫。僕が、守るから』
「……あなたは……」
『et。君は、笑ってて。
泣かないで。俺が、全部、守るから』
「……名前……教えて……」
『……』
影は、何かを言おうとした。
けれど、霧がそれを飲み込んでいく。
『──忘れて。君は、覚えていなくていい』
「やだ……忘れたくない……!」
etが叫んだ瞬間、世界が砕けた。
「etさん!」
naさんの声が、遠くから聞こえる。
「etちゃん、しっかりして!」
rnが手を握っている。
「っ……私、また……」
etは、濡れた頬を拭った。
「見たの。小さい頃の私と……誰かがいたの。 でも、顔が見えなかった。
名前も、やっぱり……聞こえなかった」
「でも、確かにいたんだな」
ya君が言った。
「うん。私の手を、握ってくれてた。
“守る”って……言ってた」
「その人が、etさんの記憶の鍵なんですね」
noさんが頷く。
「記憶の封印が、少しずつ緩んでる」
mf君が水面を見つめる。
「このまま進めば、きっと……」
「でも、霧も反応してる」
hr君が空を見上げる。
「さっきから、流れが不穏だ」
「何かが、近づいてるのかもな」
ttnが静かに言った。
「etちゃん、次はどうするの?」
rnが尋ねる。
etは、水面に映る自分の影を見つめた。
「……“白霧の丘”に行きたい。
理由はわからないけど……そこに行かなきゃいけない気がするの。
ずっと前から、あの場所だけが、心に引っかかってて……」
「記憶が、呼んでるんだな」
ya君が静かに言った。
「うん……たぶん、そこに何かがある。
私が忘れてしまった、大事な何かが」
霧が、ざわりと揺れた。
まるで、その言葉に応えるように。