テラーノベル
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白霧の丘を後にした一行は、村の外れにある“忘れの境”へと向かっていた。そこは、霧が最も濃く、誰も近づかない禁域。
記録によれば、“白夜の霧禍”の中心地だったという。
「ここが……あの夜の、場所……」
mf君が地図を見ながら呟く。
「空気が違う。霧が……生きてるみたいだ」
ya君が剣に手をかける。
「etちゃん、大丈夫?」
rnが心配そうに見つめる。
「うん……でも、ここに来た瞬間、胸が苦しくなった。
何かが、近くにいる気がするの」
「霧の流れが、etさんに集中しています」
noさんが目を閉じて言った。
「まるで、あなたを待っていたみたいに」
「……行こう」
etが一歩、霧の中へ踏み出す。
霧の奥に、ぽつんと立つ祠があった。
その前に、白い影がいた。
「……また、あなた」
影は、ゆっくりと振り返る。
けれど、顔はやはり見えない。
ただ、そこに“確かな存在”として立っていた。
『ここまで来たんだね』
「あなたは……誰なの?」
『君が、忘れた人だよ』
「……どうして、私の記憶から消えたの?」
影は、少しだけ悲しそうに笑った。
『君を守るためだよ。
あの夜、君が壊れないように、霧が僕を隠した』
「……あの夜?」
『“白夜の霧禍”。
君は、すべてを見てしまった。
だから、霧が君の記憶を包んだ。
僕のことだけ、消して』
etの心に、冷たい風が吹いた。
でも、その奥に、確かにあった。
あの夜の、光と闇。
「……あなたの名前は……?」
etが口を開いた、その瞬間。
霧が、爆ぜた。
光が、世界を包み込む。
「etさん!」
naさんが駆け寄る。
「etちゃん、大丈夫!?」
rnが涙ぐみながら手を握る。
「……うん。大丈夫」
etは、ゆっくりと目を開けた。
「思い出したのか?」
ya君が尋ねる。
etは、静かに頷いた。
「……でも、まだ言えないの。
口に出すのが、怖いの。
だって……その名前を呼んだら、
もう、戻れない気がするから」
「それでも、前に進むしかねぇだろ」
jpが言った。
「うん……そうだね」
etは、霧の奥を見つめた。
そこに、彼がいる。
名前を呼ばれるのを、待っている。