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🌸が満開の春、恋に落ちた二人🌸✨ 深く愛しあっていたけれど離れ離れに....😢 そして長い年月を経て 日本に向かうカイルさん✈️ 次の更新が楽しみで ドキドキします✨
秘境の桜の花霞をみて感銘を受けた後の2人の愛も重なって❤️❤️ 運命の出会いは永遠では無い⁉️このまま別れてしまうのか…? 本当に運命の人ならきっと赤い糸が繋がっているハズ🥹⁉️✨✨
悲しいね。。。😭 あ、赤ちゃん、できてたりしない? できてたら ステキな2人の絆✨
翌日カイルはさくらの運転する車で近くの名所を回った。
有名な神社、大きなつり橋がある景勝地、郷土資料館や陶器の窯元等、ガイドブックには載っていない場所も案内してもらう。
そしてお昼はカイルが一度食べてみたいと思っていた採れたてのわさびを使ったわさびお茶漬けの店へ行った。
カイルは今日一日さくらのお陰でとても充実した時間を過ごす事が出来た。
宿へ帰る車の中でカイルは気になっていた事をさくらに聞いた。
「桜の名所にはいつ連れて行ってもらえますか?」
「明日の朝行く予定です。明日の方がきっと綺麗に見えると思うので」
「え? 今日と明日では見え方が違うのですか?」
「はい。お天気や湿度の条件で微妙に変わるんですよ」
さくらは無邪気な笑顔で言った。
カイルはそのチャーミングな笑顔に見とれる。
翌朝、二人は桜の名所を目指した。
この名所はガイドブックには載っていないこの集落の人しか知らない場所だ。
一体どんな桜が見られるのだろうか? カイルは楽しみだった。
車は小高い山をグングンと上って行く。
やがて道は行き止まりになりさくらはそこに車を停めた。
「ここから10分くらい歩きます」
車を降りた二人は山道を歩き始める。
しばらく歩くいて行くと少し開けた広場へ出た。さくらはその広場の一番奥へ向かう。
そこから先は崖で向こう側には小さな山々が連なっているようだ。
一番奥まで辿り着くとさくらが誇らし気に言った。
「これが我が町の自慢の景色なんですよ」
カイルが前方を見た瞬間、衝撃のあまり言葉を失う。
目の前には数えきれないほどの山桜の木が並んでいた。
連なる山々の谷間から中腹にかけて一面薄ピンク色に染まっている。
満開の桜の木々はぼんやりと霞んで見えた。まるで山肌一面に白い霞がかかっているようだ。
幻想的な美しい風景はこの世のものとは思えなかった。
(奥深い山里でこんなにも美しい桜が見られるのか……)
二人はしばらくの間無言でその美しい風景を眺め続けた。
少し経った頃、満足したカイルが漸く口を開いた。
「素晴らしい景色だね…」
「はい。ちなみにこれは『花霞』って言うんです」
「ハナガスミ?」
「そう。桜が霞のように滲んで見えるからそう呼ぶみたいです」
「ハナガスミ…」
カイルはその言葉を噛みしめるように言った。
「私が生まれた時、うちの父が名前をつける時に『さくら』と『かすみ』のどちらにしようか悩んだんですって。そのくらい父にとっては大切な場所みたいです」
さくらは微笑む。そのはにかんだような笑顔にカイルの心は一瞬にして鷲掴みにされる。
次の瞬間カイルはさくらを抱き締めていた。
突然の事でさくらは驚く。
しかしそんなさくらをカイルはこの上ない優しい眼差しで見つめながらゆっくりと唇を重ねた。
薄ピンク色の『ハナガスミ』に見守られて二人はしばらくの間熱いキスを交わし続けた。
その夜、カイルの部屋にはさくらがいた。
その日観光を終えて宿へ戻ったカイルは、車から降りる時にさくらにこう言った。
「今夜僕の部屋に来て欲しい」
その言葉が何を意味すのかは、もちろんさくらもわかっていた。
カイルの言葉を無視する事も出来た。
しかしその夜さくらはカイルの部屋を訪れる。そしてカイルに抱かれた。
4日目の夜もさくらは昨夜と同じようにカイルの部屋へ行った。
知り合ったばかりなのに二人は熱く燃え上がった。
男性経験がほとんどなかったさくらは、年上のカイルの巧みな手ほどきにより愛される悦びを初めて知る。
さくらがあまりにも素直に反応するのでカイルは嬉しそうだ。そしてさらに強く深くさくらを愛した。
たった二晩共にしただけで、カイルはもうすっかりさくらを手放せなくなっていた。
そしていよいよ5日目がやってきた。この日はカイルが東京へ戻る日だった。
チェックアウトを済ませたカイルはさくらが運転する車で駅へ向かう。
「さくら、このまま離れるなんて絶対に駄目だ! 東京に…いや、アメリカに一緒に来てくれないか?」
さくらはハンドルを握りながら驚いていた。いきなりプロポーズのような事を言われたからだ。
しかしすぐに淋しそうな笑みを浮かべるとカイルにこう言った。
「私はこの旅館を継がなくてはいけないの。本当は兄が継ぐ予定でしたが兄は7年前に交通事故で亡くなってしまったの…だから私はここを離れる訳にはいかないんです」
「でも僕は君を忘れる事なんて出来ない。だったら遠距離でもいいから僕と交際してくれないか? 僕も日本へ来るよう努力するから」
さくらはその言葉に惹かれる自分がいた。しかしすぐに首を振りながら言った。
「遠すぎるわ…それに先のない恋愛なんてきっと続かない。だからどうかこのまま…このまま良い思い出にさせて下さい……」
さくらの瞳には涙が溢れていた。
「さくらっ!」
カイルは悲痛な声で叫ぶ。しかし涙が溢れるさくらの瞳には確固たる強い意思が表れていた。
自分はどうしてもこの地を離れる訳にはいかないという強い意志が。
やがて駅へ到着すると、二人は車を下りて無人駅のホームへ立った。
遠くから電車の音が聞こえてくる。
悲痛な表情を浮かべながら、カイルはさくらを強く抱き締める。
さくらもカイルに思い切りしがみついた。
そして二人は最後の別れのキスを交わした。
キスの感触をさくらに植え付けるように、カイルは精一杯の思いを込めてキスをする。
それは深く深く長いキスだった。さくらはそれを必死に受けとめる。
そして電車がホームへ滑り込んで来ると、二人の唇は静かに離れていった。
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