テラーノベル
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「——ねぇ、イッてよ義兄さん。義兄さんなら、出来るでしょ?」
「で、でも……ココで、ですか?」
「うん。コ・コ・で」と言い、陽が指先でトントンと叩く。眩しいばかりの笑顔で言われても、無理なものは無理だ、と奏が思った瞬間、くっと体に力が入った。
「ダメだって。力は抜いて、ほら……ね?イッて欲しいって言っているだけじゃないか」
軽く首を傾げ、奏の方へと陽が手を伸ばす。指先が奏の肌へ触れた瞬間、彼女の柔らかな感触の心地よさから陽の体がブルッと震えた。
「ふかふかしていて気持ちいいね。薄紅色で綺麗だし。早く……ココでイッてよ」
スッと目を細め、陽が囁く様な声で懇願する。
「無理、無理です。そんな、離し——」と言いながら奏が身をよじった。いくら義弟(予定)とはいえ、異性に触れられて焦りが隠せない。だがしかし、実質的社長でもある陽の機嫌を損ねたくはないという思いから、それはとても中途半端なものとなってしまった。
「あ、ナカに入っちゃった。もぉ……抵抗して暴れるからだよ?義兄さんったら」
そう言うのと同時にぐちゅっと水音がたち、「ひゃっ!」と奏が声をあげる。初めての感覚に驚き、車の前に飛び出した小鹿の様に彼女の体は硬直してしまった。
「うわ……トロトロしてる。気持ちいぃ……とても温かいね。ヌルヌルしてて……あぁっ」
「ぬ、ぬぃへぇくらはぃ」
「え、やだ。だって全然イッてくれないんだもん」
「れも、ソコは指をいへるとこじゃないへふ」
「呂律回ってないね。義兄さんも……気持ちいいんじゃないの?だからイッてしまうのは勿体ないんじゃない?」
ニヤリと口元に淫猥な笑みを浮かべ、陽が奏のナカへと入ってしまった指先を軽く動かし内部を撫でる。ちょっと動いただけでも透明な液体がトロリと彼の細い指先に絡まり、溢れて指を伝い落ちた。
「ち、ちが——」
「違うの?じゃあ、私のお願いきけるよね?義兄さんはとっても優秀な子なんでしょ?なら、これくらい簡単じゃないかな。ほらほら、イッちゃおうよ」
「ほれとこれとは、はらしが別で、入ったままじゃ出来なぃれふ」
——社内の二階にある休憩スペースの一角で、先程から卑猥な会話が聞こえてくる。
ジュースなどの自動販売機を利用する為に幾人もの人達が行き来するこの場所で、コイツらはさっきから何をやっているんだと思いつつも、会話の内容が内容なので色々と気になってしまい、近くを通りかかった人達が続々と自販機前にある椅子に座って聞き耳を立てている。一人、二人とそれらは増える一方で、そわそわとした面持ちで彼らは、奏と陽の会話の盗み聞きし続けた。
「イッて、ねぇ、ほら。あまり私を焦らさないで。義理でも弟だよ?甘えさせて欲しいだけなのに、何で?」
(コレが弟の甘え方ですか?ウチの圭君はこんな甘え方なんかしてこないけど、他の家は違うんでしょうか)
そう思うが言えない。コレは流石にオカシイと断言出来る判断材料となる知識が、仕事一筋である奏には圧倒的に不足していた。
「ひゃあ、コレ、抜いれくらさい」
軽く涙目になりつつ、必死に懇願する。無表情ばかりな奏のそんな表情が愛おし過ぎて、陽はもう色々と限界に近い。
「抜いたら、イッてくれる?でも……抜きたくないなぁ、ずっと中にいたいなぁ」
深くまで指を奏へと入れてしまいたい衝動を感じつつも、陽が必死に耐える。
「ずっととか、し、仕事がっ」
「そうだよ。仕事!仕事に戻らないと。お互いに時間無いよね、じゃあその前にね?ほら、イッちゃおう?照れないで、ね?」
名残惜しさを感じつつも、奏の中から陽が指をスッと抜き取る。じっとりと彼女の体液で濡れたソレをじっと見て、彼は自らの指を舐め尽くしたい気持ちに駆られたが、ここは職場だからと無理矢理諦めた。
「——よ、陽さん!」
『イ、イッたー!』
周囲で聞き入っていたモブ達が、同時に同じ言葉を心の中で叫んだ。
陽の表情も発言も卑猥だし、目を閉じてじっくり聞き入っていると、脳内には奏と陽の目眩く淫靡なシーンが見事に再現出来る会話内容だったのだが、彼らはただ単に『私を名前で呼んで欲しい』『それは流石に出来ない。貴方は上役じゃないか』というやり取りをしていただけだったようだ。
「惜しいなぁ、もう一声!もっと気軽に」
「じゃあ……よ、陽君?」
「わーい!やったね、義兄さん!」と言いながら、陽が嬉しそうな顔で奏の胸へと飛び込み、抱きつく。まな板に近い胸なせいで、ここまでしても彼は奏が“女性”だとは思わぬまま、すんすんと匂いを堪能した。
白衣を着ている少年っぽい容姿の奏に、スーツ姿の陽が抱きつく姿は完全に“ショタ系BL”の世界にしか見えない。
(……休憩時間に平気でいちゃこらしやがって)
勢い余って口の中に指を突っ込むわ、抱きつくわ。他でやって欲しい……とは思いつつも、『ちょっと美味しい時間をありがとう』とも思ったモブ達であった。
#カラフルピーチ
桜井 かな
26
花月夜れん
3,056
コメント
1件
ふふ、読み終わりましたよ。この「幕間の物語」、ちょっとした休憩時間がこれだけ盛り上がるなんて、職場の休憩スペースが一瞬で違う場所に見えました。陽くんのベタベタ甘え方が「イッて」発言に聞こえる会話のすれ違い、本当に絶妙で笑ってしまいました。奏さんが無表情なだけに、内心の焦りが伝わる演技がいいですね。周りのモブたちの反応も含めて、しっかりとした誤解コメディになっていて楽しかったです。日常のほのぼのした空気が作品のアクセントになっていて、こういう一幕も好きだなって思いました。月咲さん、毎話楽しく読ませてもらってます!