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月遊び

第51話 - Moon Love4

265

2024年08月03日

#恋愛

#大人の恋愛

#イケメン

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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海斗がスタジオに入ると、メンバーが一斉にヒューヒューと指笛を吹いたり拍手をした。

今回のスクープの事は既にメンバーも知っているようだ。

中学時代からの付き合いの吉田がまず口を開く。

「海斗、やっぱり美月ちゃんと付き合っていたんだな」

「ああ、黙っていて悪かったな。言おうと思っていたら先にスッパ抜かれた」

海斗が申し訳なさそうに言うと、ギターの中島が微笑んで言った。

「これで海斗も近いうちに俺達既婚者の仲間入りか！」

すると今度はベースの山崎が言う。

「中島みたいに三回目の結婚と一緒にされたくないよなぁ、海斗」

そこで中島以外の三人が大笑いをする。

「三度目の正直っていう言葉があるんだからいーの」

中島が開き直って言ったので他のメンバーが声を出して笑った。

「ところで結婚はいつ頃する予定なんだ？」

「コンサートツアーが終わってから考えるよ。それが終わらないと今は身動き取れないだろう？」

「そうだな。ということは今年の終わりか年明けか？」

「そうだなぁ、早ければそうなるかな？」

海斗は笑顔で答えた。

その日の音合わせは終始明るい雰囲気の中で進んで行った。

海斗がスタジオを出たのは午後9時を過ぎていた。

海斗が駐車場に停めてある車に乗り込むと携帯が鳴った。電話は海斗の兄の航からだった。

「もしもし兄貴？」

「海斗、今日ワイドショーでえらい事になってたぞ！　父さんと母さんが心配しているから電話したけれど、今大丈夫か？」

「ああ、今ちょうど帰る所だったから」

「あのスクープはまた嘘スクープか？　それとも本物か？」

「あれは本当だよ。彼女と結婚しようと思ってる」

海斗の言葉に兄の航は嬉しそうな声を上げた。

「そうかぁーそれは良かった。お前もついにか。今度彼女を連れて来いよ」

「うん、そのつもりだよ」

「そう言えば母さんが心配していたよ。あんな記事が出たんだから相手のご家族にはちゃんとご挨拶に行けって」

「うん、実は記事が出る前にちゃんと挨拶に行ったんだ。だから母さんには心配ないよって伝えて」

「そうか、それなら安心だな。じゃあ近いうちに連れて来いよ」

「わかった」

「じゃあな」

そして海斗は兄との電話を切った。

海斗が車のエンジンをかけてカーラジオをつけると、ちょうどチェット・ベイカーの「Moon Love」が流れてきた。

あまりの偶然に海斗は驚いた顔をして「また魔法か？」と呟いた。

海斗がマンションに着くと、駐車場の入口から十メートルほど向こうに怪しいバンが停まっていた。

（週刊誌の記者だな）

海斗はそう思いながらその車を横目に駐車場へ入って行った。

（これじゃあしばらく美月を呼べないな）

車から降りた海斗は部屋へ向かう。

玄関へ入りがらんとしたリビングへ行くとなぜか無性に寂しさを感じた。

美月のいない部屋は空虚に感じられ無性に違和感を覚える。今まで家にいてそんな風に感じた事がなかったので海斗は驚いていた。

昨夜美月に会ったばかりなのにもう会いたくて仕方がなかった。

こんな気持ちは初めてだ。これが恋っていうやつなのだろうか？　海斗は初めて知る感情に少し戸惑っていた。

そして次の瞬間海斗はシルバーフレームの眼鏡をかけると、財布と携帯だけを持って部屋を後にした。

海斗はマンションのエントランスまで行くと注意深く辺りを見回す。

すると先ほどのバンはもういなくなっていた。

念の為もう一度辺りをチェックしてから、海斗は美月のアパートへ向かって歩き始めた。

美月のアパートの前に到着すると部屋には明かりがついていた。

海斗はアパートの前から美月にメールを送る。

【シンデレラさん、もし夕食がまだなら屋台のラーメンでもどう？】

ちょうどその時美月は仕事から戻ったばかりだった。そして夕食に何を作ろうかと考えているところだった。

そこへ携帯の音が鳴ったので見てみると海斗からメールが来ていた。

海斗とはまたしばらく会えないと思っていたので、メールを見て嬉しくて飛び上がる。

【行く！】

するとすぐに海斗から返事が来た。

【階段側の窓の外を見て】

美月は不思議に思いながら窓のカーテンを開けて外を見た。すると海斗が電柱にもたれて立っていた。

美月の顔はみるみる笑顔になった。

『今行くね！』

身振り手振りでそう伝えると、慌ててメイクと髪型を直してからアパートを出た。

そして美月は笑顔で階段を下りる。

その姿を見ただけで、海斗は胸はギューッと締め付けられるような気がした。

（これはかなり重症な恋の病だな）

そう思いながら海斗はフッと笑った。