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ある日、俺は変な夢を見るようになった。触手の化物が、俺のち・こに吸いつく夢だ。だけど、それはどうやらただの夢ではなかった。あの化物は、夢魔というのか、夢を扱う力を持っていたようで、そのせいか、俺は他人の夢に入って操る力を身につけた。


しかし、いろいろ実験してみた結果、俺の夢の中の世界なので、俺が詳しく知らないことはやっぱり具体的に出来ない、ということが分かってきた。例えば夢の中で大人の女の人とえっちしたいと思って、大人の女の人を出現させても、体とか視力が悪いときみたいにぼんやりしてしまう。小学生の俺が大人の女の人の体をよく知らないから、そうなるみたいだ。


それなら、俺自身が詳しくなれば、夢の中で出来ることも増えるんじゃないか? そう気づいた俺に、謎の男が近づいてきた。その男は夢魔の存在を知っており、俺がいろんな経験をする手伝いをしたいと言ってくれた。


その男の「秘密基地」で最高の経験をした俺は、地獄のような夢の世界を作るために、もっといろいろな経験をしようと心に誓ったのだった。


そうそう、それから、謎の男は別れるとき、気になることを言っていた。

「夢の世界を強化するには、精神集中の訓練も必要になるかもしれんな」

「そうなん? でも、それってどうやればいいの?」

「そうだな……。例えば呪文のようなものを一心不乱に唱えれば、よけいな考えが消えて、精神集中できるんじゃないかな」

「呪文?」

「目的は精神集中だから、呪文自体は何だっていいと思うぜ。お経でも、アブラカダブラでも、な。ま、私のおすすめはマントラだけどね」

「マントラ?」

「仏教系の呪文のようなものさ。特にお前なら歓喜天のマントラがよさそうだが……」

「それってどんなものなの? 教えてよ」

「こういうものはな、自分で調べないと意味がないんだ。図書館とかで調べてみな」

「わかった」


そういうわけで俺は今図書館にやってきている。とりあえず宗教系の棚に来てみたけれど、なかなか目当てのものは見つからない。そもそも、全部内容が難しいんだよなぁ。もっと一般向けの本はないか。お、これなんかよさそうだ。

『神秘のマントラ』

説明によると、密教の神々の真言がまとめられているらしい。ええっと、カンギテン、カンギテンっと。あった!カンギテンのマントラは……、あった! なになに?

「オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ」

ん、なんかよく分からなかったけど、これで精神集中できるならいいや。でも、すぐには覚えられないや。この本を借りて……、え、貸出禁止? まじかよ。そうだ、この呪文を何度も唱えて覚えよう。

「オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ……」

本棚の近くのベンチに座った俺は、カンギテンのマントラを一心不乱に何度も唱えた。よし、これなら覚えられそうだ……。と、そのとき、

「ちょっと、君!」

突然俺は女子高生らしき女性に話しかけられた。

「さっきからちょっとうるさいよ! ここ、図書館なんだから、大きな声を出したらダメだよ」

「あっ……えっ……そ、その、ごめんなさい」

「気をつけてね」

そういうと女子高生は立ち去っていった。そっちの方を見ると友達がいたようで、

「瑠美、何やってんの?」

「ん~、ちょっとうるさい子がいたから、注意してたの」

「ほっときなよ、そんなの」

「でも……」

という声が聞こえてきた。クソ! 自分たちも、図書館でしゃべってるじゃんか! なんで俺だけ注意されなきゃいけないんだ! クソクソクソクソ! あいつも覚えていろ! いつか夢の世界でひどい目にあわせてやる!


すっかり気分を害した俺は、図書館から帰ることにした。マントラもだいたい覚えたしな。帰り道の途中、川原の橋の下に何人かホームレスがいるのを見つけた。

「こういう人たちに襲われる夢ってのも、怖そうだな……」

そう思った俺は、じっくり観察することにした。ところが、しばらくすると、

「ねえ、君」

と女の人に話しかけられた。さっきの人とは違うけれど、この人も女子高生っぽかった。

「えっ、は、はい……」

「あんまりじろじろ見るの、失礼だからやめな」

「あっ、あっ……」

「ちょっと萌、行くよ」

「あ、うん」

「何してんのよ」

「ちょっとあの子注意してた……」

たくっ! 今日はいったい何なんだ! ついてないなぁ。ついてないなぁ。今の女も、絶対ひどい目にあわせてやるからな! 覚えていろ! 俺はさんざんな気分で家に帰った。


しかし、それから数か月後。俺は確実にパワーアップし、夢の世界をかなり自由に操れるようになっていた。そろそろいいだろう。俺に恥をかかせた女どもに復讐するとしよう。名前や、住んでいるところも調べてある。奥村愛梨、戸上瑠美、松尾 萌の3人だ。


どうやら、夢の世界に引き込むには、相手の名前や住んでいるところなどの情報が必要なようだった。夢の世界そのものはつながっているけれど、そうした情報がないと上手く俺の方が相手のことをイメージできないため、自分の世界に引き込むことが出来ないようだ。そのため、俺はあいつらの後をつけたりして必死で情報を集めたのだった。


さあ、時は来た。魔界と化した俺の夢世界で、あの女たちをさんざん弄んでやる。まずは精神統一しながら眠りにつこう。これが案外難しかったが、今ではすっかり慣れている。オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ、オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ、オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ、オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ……


よし、夢の世界が出来あがった。まずはあいつらをここに呼びよせよう。来い、来るのだ……。よし、1人、2人、3人4人っと。 ……ん、4人? なんか知らない女がいるな? 巻き込んでしまったのか? こういうこともあるのか。まあいい、こいつもついでに遊んでやろう。


夢の世界では記憶があいまいになる。そうだな、「試練」を与えて、合格したらこの世界から脱出できる、という嘘をついてあいつらをからかってやろう。松尾 萌はホームレスに襲われる夢だ。戸上瑠美は図書館で遊んでやる。奥村愛梨は適当にエッチな目にでもあわせておくか。残った一人は、そうだな、他のやつで遊んでいるうちに考えておこう。


さあさあ、魔界の始まりだ!(内容は第1話に続く)

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