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(第10話からの続きの話)
ここまで萌ちゃん、愛梨ちゃん、瑠美ちゃんの三人が試練に失敗した。次は私の番だ。……けど、これまでの試練を見ていて、本当にこれをクリアしたここから帰られるのだろうか、と疑問を感じた。なんだか、試練というより、本当は私たちをいたぶって楽しんでいるだけのような、そんな何者かの悪意を感じたのだ。
でも、だからといって他にいい方法を思いついているわけじゃない。私もあんな試練を受けなければならないのか――。そう思っていたら、どこか遠くからベルの音が聞こえてきた。なんだろう、この音。なんだか、聞き覚えがあるような……。
「ハッ!」
目覚ましの音で私は目を覚ました。起きたばかりなのに、体がひどく重い。なんだかとても悪い夢を見ていたような気がするのに、内容を思い出せない。ただ、気が付けば体が汗でじっとりと濡れていた。気持ち悪い、学校に行くにはまだ時間がある、シャワーでも浴びて気持ちを切り替えよう……。
「はっ!」
しまった、3人に時間をかけすぎて、そこで朝が来てしまったようだ。
「くそ、永遠にあいつらを夢に閉じ込めておければいいんだがな……」
だが、残念ながら俺にそんな力はない。まあでもいい。どうせ結局、俺の夢の世界から逃れるすべはない。それなら、中断はあるものの、結局夢の世界に閉じ込めているのも同じことだ。
さあ今日はどんな夢をあいつらに見せてやろうか。朝になったばかりだが、今から夜が来るのが楽しみだぜ……。
その夜――
「……ここは、あの世界? 私たち、脱出できなかったんだ!」
気が付くと私は、またあの得体のしれない場所にいた。周りを見渡すと、やはり不安な顔をした萌ちゃん、愛梨ちゃん、瑠美ちゃんの3人がいた。
それにしても、さっきまで私は何をしていたんだろう? 思い出せない……。そこに、何か重要な手がかりがある気がするのに!
「また、あの地獄が始まるんだ……」
誰かがつぶやいた。……また? そうだ、あの試練の後、私たちはどうなったんだっけ? なぜか、記憶に曖昧なところがある……。
「ねえみんな! あれを見て!」
愛梨ちゃんが指差した方向には、いつの間にか壁に穴が空いており、その穴の上には『この世界から脱出したいものはこの穴に入れ』と書いてあった。
「……どうする?」
萌ちゃんが不安そうにつぶやいた。
「アタシ、思ったんだけどさぁ」
と、愛梨ちゃんが眉間にしわを寄せながら話し始めた。
「なんか、結局、あの指示に従ってもいいことなくない?」
彼女もやっぱり同じことを考えていたんだ! みんなにも、それに同調する雰囲気を感じる。と、そのとき、どこからか地響きのような音がしてきて……。
「え、何これ?」
「あっ、あれ!」
瑠美ちゃんが指差した方を見ると、大量の水がこちらに迫ってきていた! 気づいたときにはもう遅かった。私たちが何をする間もなく、水は腰ぐらいの高さになり、そうなるともう立っていられなかった。そうやって私たちは無理やり穴の中に押し流されてしまった。穴の中はすべり台のようになっていたが、水で満たされていたため、だんだん上も下も分らなくなり……。
(続く)