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9話 雪みち
朝
あたり一面が雪に埋もれている
ふっくらは
丸い体をゆっくり揺らしながら
雪の前に立っていた
短い脚は半分埋まり
腹の下にも雪が入り込んでいる
ふっくら
「……これ……道……?」
後ろで
琶が静かに立っている
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼に雪が積もり
それでも微動だにしない
琶
「……道だ」
ふっくら
「えっ……
じゃあこれ全部どかすの……?」
琶
「依頼だ」
ふっくらは覚悟を決め
短い脚で雪をどかし始める
よいしょ
よいしょ
丸い体が前に出るたび
雪が左右に逃げる
ふっくら
「……ちょっと進んだよ……!」
琶
「……二歩だな」
ふっくら
「二歩も進んだんだよ!?
読者見て!?
ちゃんと進んでる!!」
その直後
ふわり、と風が吹く
さっきどかした場所に
また雪が積もる
ふっくら
「……え?」
琶
「……戻ったな」
ふっくら
「やる意味あった!?
いまの作業!!」
ふっくらは黙って
もう一度雪をどかす
また積もる
またどかす
静かな繰り返し
そのうち
ふっくらの丸い体は
すっかり雪に囲まれ
ついに
頭だけが出ている状態になった
ふっくら
「……ねぇ琶……
これ……埋まってない……?」
声が少し遠い
琶は
一瞬だけ雪原を見回し
読者のほうを見るような気配を出す
「……順調だ」
ふっくら
「なにが!?
どこが順調なの!?
わたし今、地形の一部だよ!?」
琶は
ゆっくりと爪を使い
雪を掘り始める
ざく
ざく
無駄のない動き
静かな作業
ふっくらの丸い体が
少しずつ姿を現す
ふっくら
「……助かった……
ありがとう……」
琶
「……埋まる速度が速い」
ふっくら
「感想それ!?
心配とかないの!?」
雪は相変わらず降り続け
どかしても
どかしても
元に戻る
ふっくら
「……これ……
終わる……?」
琶
「……終わらない」
ふっくら
「言い切った!!
読者も覚悟しちゃうよ!!」
それでも
二匹は作業を続ける
静かに
黙々と
誰に見られるでもなく
結果も残らず
ただ
雪の下で
道だけが
少しずつ
形を変えていった気がしたが
ふっくらは気づかない
雪みちは
今日も
ゆっくり
埋まっていく