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かんな
75
#カンヒュ
腐女子☆
224
#オフィスラブ
ゆうクロ。
322
夜の校舎は、空気まで眠ったように静かだった。蛍光灯は落とされ、ランプの淡い光だけが机を照らしている。
日下部は書類をまとめる手を止め、ノックの音に顔を上げた。
「……どうぞ」
ドアの向こうに立っていたのは、同じ学年の男子だった。
制服の第一ボタンを外し、無理に笑ってみせるような顔。
それでも、その笑いはどこか痛々しかった。
「……ちょっとだけ、話してもいいですか」
「もちろん」
日下部は、窓際の椅子を指さした。
沈黙のまま、彼は椅子に腰を下ろす。
カチリ、と時計の音が響く。
やっと、ぽつりと声が落ちた。
「――“強がり”って、悪いことなんですか」
日下部は少しだけ眉を寄せた。
「なんで、そう思った」
「最近、疲れたって言えないんです。
部活でも、家でも、“頑張ってるね”って言われるけど、
本当は全然、頑張れてない。
それでも“平気なふり”してる方が、
人に迷惑かけない気がして。
でも……なんかもう、誰にも本音が言えなくなってきて」
その声は、途中でかすれていた。
日下部は腕を組んだまま、しばらく黙っていた。
その沈黙が、責めではなく“考えてくれてる時間”だと、
なぜか伝わってくる。
やがて彼は、低い声で言った。
「強がるのって、悪いことじゃないと思う。
それは“強くなりたい”って気持ちの裏返しだから。
でもな、強がり続けると、
“誰も助けてくれない”って世界を、自分で作っちまうんだ」
少年は小さく目を見開いた。
「本当は、助けてもらえる場所があるのに、
“平気な顔”で閉じてるから、
誰も入れなくなる。
それって……一番、つらい強がりだよ」
言葉が喉の奥で揺れた。
少年は俯き、指先で制服の裾をいじっていた。
「……弱音、言ってもいいんですかね」
「言えよ。誰かに。
それを出す場所を、ちゃんと持ってろ。
じゃないと、自分まで嘘になる」
その声は淡々としていたが、不思議と温かかった。
少年は静かに頷いた。
「……ありがとうございます」
「礼はいらない。
強がりも悪くねぇ。
ただ、たまには誰かに甘えろ。
それも、強さのうちだから」
夜風が窓を叩き、ランプの光が小さく揺れた。
その影の中で、少年の肩の力がほんの少しだけ抜けていた。