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16 - 【第二章】第7話 出逢いの記憶(日向司・談)

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2023年09月27日

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それから一ヶ月半。

仕事が互いに忙しくなり、付き合う前より会う機会が激減した。メールで細々とやり取りはしているものの、ほとんど会えないのはやはり寂しい。自分の一部がなくなったみたいな感覚すら感じる事さえあった。自覚していた以上に、どうやら俺は、唯にすっかり惚れ込んでいたらしい。


だが今日は、久しぶりに一緒に食事をする約束がある。


朝からちょっと浮かれ気味だった俺は、桐生に「なんだよ、誰かとデートか?」なんて冷やかされた。

「まぁな」

昔の俺だったら絶対に『んなわけあるか』と隠していただろうが、今回はそう言う気分じゃ無かった。

ニヤッと笑い、素直に答える。付き合っている事を隠したくなるような相手でもないし、コイツには教えても構わないだろう。

「お⁈どんな子だっ、今度紹介しろよ!」

「実はな、相手は皆川唯なんだ」

頬をかきながら言う。桐生も知っている相手なせいか、正直照れ臭い。

「まじか⁈なんて懐かしい…… ってか、オイオイちょっと待て!いつの間にそんな関係になってんだよ!俺のアイドルと!」

「色々あったんだよ」

「色々って何だよっ!んな言葉で括るな!」



職場を出て、待ち合わせした場所に駆け足で向う。珍しく報告書の手直しが入ってしまい、思ったよりも出るのが遅れてしまったのだ。『遅れる』と連絡しようとも思ったんだが、そんな時間も惜しかった。

「ごめん、遅れた!」

息を少し切らしそう言うと、唯は笑顔を向けてくれた。

「私もさっき来たんです。遅れるってメールしてたんですが、私が先でよかった」


(え?メール?)


スマホを取り出し確認すると、確かに二十分前にそれは届いていた。

「ごめん、見てなかった」

頭をかきながらそう言うと、「気にしないで」とまた笑顔に。その顔はもうとにかく愛らしくて、仕事をしているような女性には到底見えなかった。

「今日は私が店決めてもいいですか?」

「ああ、別にいいよ」

特に場所を事前に考えていなかったので、正直ありがたい。

「こっちです」

手を引かれ、案内される。そういえば、手を繋いだのはこれが始めてかもしれない。初めての唯の肌の体温に、心が——ざわついた。



駅前からバスに乗り、降りてからも十分くらいは歩いただろうか。大きく、かなり立派なホテルに案内された。正面には『ホテルカミーリャ』と書いてある。


(——カミーリャ?もしかして、ここって)


「ここ、私の勤め先なんです。最上階のレストランから見える夜景がとても素敵で、予約でいつも満席なんですけどね、同僚がキャンセル席を空けておいてくれたんですよ。あ、これ秘密にしておいて下さいね?本当はマズイ事かもしれないんで」

ちょっと悪戯っ子の様な顔をして教えてくれた。

「私、これでも受付けとかの仕事させてもらってるんです」

「…… 顔覚えるのが苦手なのにか?」

ついポロッと言ってしまった。どうやら俺は、忘れられている事をまだ割り切れていないらしい。

「それは飲み屋だけの話ですよ。失礼かもだけど、酔った方の顔なんていちいち覚える気になれなくって…… って、あれ?何で知ってるです?」


(『かも』じゃない。失礼『だ』と思うぞ)


顔を覚えるのが苦手ってのは酔っ払い限定だったのか。器用な脳みそだなと純粋に感心してしまった。


(——って、俺は初日以外は全く酔ってなかったぞ⁈…… まぁそれを今ここで抗議しても、意味はないか)


「…… えっと、前にそう聞いたから」

睨んでばかりのお前の後輩からだが。

「そっかぁ…… ヤダ、私すっかり話した事忘れてますね、ごめんなさい」


(いやいや、言ったのお前じゃないし)


「さぁ、気を取り直してっと。今日は私のおごりです!夜景だけじゃなく、料理の味も最高なんで期待してくれていいですよ」

満面の笑みを浮かべ、唯が俺の手を引いてホテルへと入って行った。

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