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「やあ雪、久しいね」
前から歩いてきた男二人は、笑みを浮かべ雪に話しかけた。
「、、、」
雪は顔を見た途端に硬直し、冷や汗を垂れ流す。
「つ、月典兄様、月影、、、」
つきのりとつきかげと呼ばれた二人はずんずんと近づいてくる。
「なんだよ。その目」
月典と思われる男が笑顔のまま言う。
「聞いたぞ、姉さん。刻紀を殺したらしいな」
「え、、、?」
凛が驚きの声をあげる。それは俺も同じだが。
「、、、なんのこと?」
睨みつつも言い返す。
「お前はあの部屋に入れられた時、飯を置いていた時紀のことを妖精だかなんだがいってたな」
「、、、」
雪は口を少し動かし、俯く。
その時。
「雪様!」
凛が巨大な犬となり走り出し、俺と雪を背中に乗せ逃げ出す。
「は?」
俺の呟きを無視し、森を駆けて止まらない。
「り゛ん、、、」
雪が凛の毛を強く掴み、止まらせる。止まった凛から半ば無理やり降りる。
「なんだなんだ?あれはだれだよ」
聞こうと雪の方を向くと、木陰の木の幹に手を突き、
「お゛ええ、、、」
嘔吐していた。
「おい、大丈夫か?」
気にする様子もなく口を拭い、離れて行ってしまった雪に、何も言えなかった。
「、、、雪様、月兄弟はなぜここに?」
「、、、知らないわよ」
森の奥へ入っていく雪を追いかけようとする凛を引き止める
「そっとしとけよ。それより、あいつらは誰だ?」
「あの人は月兄弟、、、。夜宮神社の跡継ぎ、雪様の義兄、夜宮月典と、雪様の義弟、夜宮月影です。」
「複雑すぎてわからん、、、家系図が見たいわ」
「同感ですね、、、」
まあ、いつか本人の口から聞かせてくれることがあるだろう。
「まあいい、それより、あいつは何処にいったんだ?」
一方その頃、雪は拗ねて行方をくらましたわけではなかった。あの月兄弟を探しにいっていたのだ。
「あー、全然いないじゃ無い。足の速さは一丁前だったのにさ。」
鬱陶しいほどの森を歩き回り、周りを見渡す。そこに、かすかな声が聞こえてきた。
「?」
声の方へ静かに、気配を消して歩いて行く。
「!?」
少し開けた場所で、月兄弟が何やら話していた。
木の影に身を隠し、気づかれないよう、聞き耳を立てる。
「いや、姉さんは一体何をしていたのでしょうか。」
「さあな。まあいい。俺たちの邪魔をしなければな。」
(俺たちの邪魔?。何を企んでいるのかしら)
不穏なワードに眉を顰めつつ、次の言葉を待つ。
「さて、山の頂まであと10日ほどでしょうか。雲竜を潰して、夜宮神社の土地にするのが楽しみですよ」
「はっ、気が早いな。まあ、そう遠く無い未来だがな」
その言葉を聞き終わる前にその場を離れる。
(嘘でしょ、、、?雲竜様を潰す、、、?)
いつのまにか走り出していた体は蔦や枝をかき分ける。
やっとのことで凛たちを境に捉え、一心不乱に駆け寄る。
「はぁ、はぁ、、、」
「おおっ。どうしたんだよ」
困惑と驚きの表情を浮かべ、顔を覗き込んでくる。
「大変よ!雲竜様がやられてしまう!あのクソ野郎が、ここを乗っ取ろうとしているのよ!」