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先生、大好きだよ♡

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先生、大好きだよ♡

1 - 先生、大好きだよ♡ 第1話 -先生、大好きだよ♡-

♥

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2022年01月27日

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「殺してやる!」




そんな脅し文句に、ふと足を止める。




放課後の『1年B組』を覗くと、女生徒が揉めていた。




まさか、いじめが!?




まだこのクラスの担任になって、数日だ。




いじめがあったとしても、おかしくはない。




あれは確か…神崎愛子?




「愛子の彼氏に色目使ったでしょ!?」



「し、知らない!」



「あんたのその目、くり抜いてやるから!」




神崎が手にしていたハサミを振り上げる。




おい、うそだろ!?




とっさに教室に飛び込み、神崎を突き飛ばした。




「邪魔しないで!」




それでも向かってくるので、俺は思わず──。




パシっ。




頬を叩いてしまった。




ハサミがその手からこぼれ落ちる。




「あっ…だ、大丈夫か?先生、つい…」




頬を押さえて倒れ込んだ神崎が、目を見開いている。




体を震わせ、その目から大粒の涙が──。




「すまない、生徒に手を上げるなんて…」



「許さないから!」




そう大声で叫び、走り去っていった。




『教師が生徒に体罰!』なんて記事が頭に浮かぶ。




新任早々、まずいことになったな…。




*****




神崎愛子に謝らないと。




いくらいじめを止めるためだったとはいえ、許されることじゃない。




保護者が今にも乗り込んでくる恐れがある。




俺は次の日、神崎に謝罪をしようと──。




「せーんせっ!」




いきなり、柱のかげから神崎が顔を出す。




「か、神崎。昨日のことなんだが──」



「愛子を殴るなんてひどい!」



「本当にすまなかった!」




俺は、深々と頭を下げた。




「愛子、生まれて初めて殴られたんだから!」




自分のことを『愛子』と呼ぶくらいだ。




きっと両親にも可愛がられて育ったのだろう。




「本当に申し訳ない…」




謝ったくらいじゃ、許してもらえないかもしれない。




やっぱり、教職を辞めるしか──。




「先生、もういいよ」



「えっ…?」



「許して、あ・げ・るっ」



「本当に許してくれるのか?」



「うん、だって愛子のためを思って叱ってくれたんだよね?」



「あっ、あぁ。暴力で解決するのは良くない」



「そんなに愛子のことを考えてくれるの、先生だけだよ」



「そんなことは…」



「ううん、そうなの!」




まだあどけない顔をした神崎は突然、俺の手を掴んだ。




じっとりしていたが、手を引っ込めるのを我慢した。




そして上目遣いに俺を見ながら──。




「だって先生は、愛子の運命の人だから!」




*****




「良かったじゃない」




妻の君枝が、ホッとしたように言った。




女生徒を弾みで叩いてしまったことを、君枝には話していたからだ。




「でもなぁ…」



「なによ?慕われてる証拠じゃない」



「それはそうなんだけどさ」




俺は深いため息をついた。




あれから神崎愛子に、つきまとわれているからだ。




毎日のように手作り弁当を持ってきては、俺が食べるまで動かない。




一緒に帰ろうといい、いつも待ち伏せしている。




「どうせ今だけよ。彼氏でもできたら、あなたなんて相手にされないわ」



「だといいんだけどな」



「パパっ!」




飛びついてきた美久は、まだ5歳だ。




愛らしい娘と、いつも励ましてくれる妻がいる。




俺にはそれだけで、他に何もいらなかった──。




*****




「せーんせい!はいっ!」




今日も手作り弁当を持って現れた神崎を、俺は職員室から連れ出す。




「神崎、気持ちは有り難いが──」



「愛子!愛子って呼んでって、何回も言ってるでしょ?」



「いや、だから困るんだ」



「えっ、どーして?」




本当に分からないといった風に、首を傾げる。




「こういうのは困る。弁当も持ってきてるし」



「そっか。分かった」




思ったよりアッサリと引き下がったので安心したが…。




「じゃ、リンゴなら食べられる?」と、いきなり果物ナイフでリンゴの皮を剥きだした。




「いや、そういうことじゃなくて」



「愛子、こう見えても器用なんだ。ちゃんとうさぎの形にしてあげる」



「だからそうじゃなくて!」




話が通じない相手に、わずかにイラっとする。




「あっ、リンゴ嫌いだった?」



「いいか、俺と神崎は教師と生徒だ。ちゃんとした距離感で接するべきだ」



「ちゃんとした距離?」



「そうだ。弁当もいらない。帰りに待たれても一緒には帰れない。こうやって2人きりになるべきじゃないんだ」



「そんな…」




神崎の目に、見る見る涙がたまる。




「それが健全な教師と生徒の関係だ」



「そんなの…そんなの嫌!」




そう言って、神崎が手首にナイフを押し当てる。




「な、なにをしてる?」



「先生と仲良くなれないなら、愛子は死ぬよ?」



「そんな脅しはきかない。死ぬ度胸もないくせに」



「先生」




涙を流しながら笑うと──。




「大好きだよ」




神崎は微笑みながら、手首を切った。




全く、ためらうことなく…。

先生、大好きだよ♡

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