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来店した客は、美花、奏と怜を見た瞬間、バツの悪そうな顔を映し出した。
「おっ……おにーさん……いらっしゃいませっ」
美花が、顔を赤らめながらも、数時間ほど前に会った葉山圭に、辿々しく挨拶をする。
「圭、お疲れ」
兄の姿を確認した弟の怜が、眉根を寄せ、睨むような眼差しを向けた。
「…………ああ。お疲れ」
「そういえば今日、DTM事業部に来客があったんだろ? うまくいきそうなのか?」
「…………ああ。まぁ……それなりに」
和やかだった雰囲気が一変し、双子の兄弟に流れる微妙な空気を、美花は察してしまう。
奏の恋人、怜は、DTM事業部に来社したのが、美花である事を知らないらしい。
圭は、弟を避けるように、指定席と化しているカウンターの一番隅に腰を下ろして、メニューを広げた。
「ホラ美花。せっかく奏ちゃんと彼氏さんが来てるんだから、一緒に座ったら?」
「うん。そうする。色々話も聞きたいし」
母の雪が、機転を利かせて、美花にテーブル席に行くように促してくれた。
(いやぁ…………かなチーと、おにーさんの弟さん…………お似合いのカップルだなぁ……)
美花は仲睦まじく寄り添い合う奏と怜を、三日月のような瞳で見入ってしまう。
「っていうか美花。さっきからニヤニヤしてて、何か怖いんだけどっ」
「ん? そうかなぁ? お似合いの二人だなぁって思って見てただけだよぉ。かなチーと葉山さんって、なみプーの結婚式で知り合ったんでしょぉ?」
「げっ…………美花には、出会ったきっかけとか報告してないのに、何で知ってるかなぁ!?」
「だって、私となみプーは同じ職場だよ? 昼休みに、なみプーが教えてくれてさぁ。まさか、あの結婚式で、そんなドラマが生まれていたとはねぇ……」
美花はテーブルに肘を突いて手を組み、遠くに眼差しを向けながら、口元を緩ませる。
「しまった! 奈美と美花って、会社が一緒だったんだっけ! サイアク……やられた……」
美花と奏の話を聞いていた怜が、ププッと笑いを堪えている。
「美花さんは面白い呼び方をするんだなぁ。奏はかなチーで、奈美ちゃんがなみプーかぁ……」
「そう! 小学校の頃から、ずっと呼び方が同じなんだよ? 名前に変な語尾を付けちゃって……」
「じゃあ、美花さんだったら、俺の事を何て呼んでくれるんだろう?」
怜が楽しそうに、ニヤリと口角を片側だけ吊り上げると、美花は、顎(おとがい)に手を添えながら、視線を上に伝わせて考えた。
「う〜ん…………れいチェル?」