テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「お! 俺のは、カッコいい海外の俳優みたいだなぁ」
怜が、ハハハッとおおらかな笑顔を湛えると、母の雪が大皿に盛られた料理を、三人の前に運んできた。
炊き込みご飯と、大根と水菜のサラダ、だし巻き卵、お刺身の盛り合わせ、鶏肉の唐揚げなど、所狭しと並べられていく。
「何てったって、めでたい日だからね。奏ちゃん、葉山さん、おめでとうございます。いっぱい食べてね。今日は、おばさんからの奢りだよっ」
三人の目の前に、それぞれ生ビールが置かれた。
「美花ママ、ありがとうございますっ!」
「女将さん、ありがとうございます」
「奏ちゃんに、変わらず『美花ママ』って呼ばれると嬉しいねぇ」
「お母さん、ありがとう。ゴチになりますっ」
「あんたも、奏ちゃんカップルみたいに、いつか恋人を連れてきてほしいモンだわ……」
雪が、微苦笑しながらスイングドアを通り抜ける。
ビールジョッキを手にして、乾杯をした後、三人は手を合わせて、いただきます、と小さく言うと、細やかなお祝いがスタートした。
食事をしていても、美花は、カウンターの隅で、黙々とご飯を食べているおにーさんが気になってしまう。
彼女は、チラッと圭を見やると、彼は敢えてなのか、こちらを避けるように背を向けて、親子丼を食べていた。
やがて、食事が終わったのか、おにーさんは、お会計お願いします、と言いながら立ち上がる。
さっきまでカウンターの内側にいた母が、どうやら厨房に引っ込んでいるらしい。
おにーさんこと葉山圭は、出入り口の手前にあるレジへ向かっている。
「美花ごめん! 食事中に悪いんだけどさ、ちょっと手が離せないからレジ打ってくれるかな?」
母が、厨房から大きな声を張り上げる。
「え? あ……了解……」
美花は慌てて立ち上がり、レジの操作を始めた。
値段を打ち込み、おにーさんから千円札を貰うと、お釣りの二十円を手渡す。
「ありがとうございますっ」
「ごちそうさまでした」
圭が無表情のまま、美花に眼差しを向けながら軽く会釈をすると、格子戸を引き開け、外に出ていく。
「あっ……」
美花の足が無意識に動き出し、圭を追い掛けていた。