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青い絵

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青い絵

2 - 第2話

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22

2025年11月16日

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プロローグ 蒼い影

夜の図工室には、ひんやりとした空気が溜まっていた。

藤本はるとは、ほとんど無意識のうちに足を踏み入れていた。

机の上には誰かが描き残した一枚の絵――淡い青に染められた少女の横顔。

その瞳はどこか懐かしく、けれど胸を刺すほどの寂しさを帯びている。

カサッ、と背後で音がした。

「はると……? やっぱりここにいた」

結城るながドアの隙間から顔を覗かせ、続いて金沢かりんが顔を出した。

「ここ、夜は入っちゃいけないんだよ? また“青い子”に呪われるって――」

かりんが半分冗談めかして言ったその言葉に、はるとの胸がわずかに痛む。

“青い子”。

校内で囁かれる噂。

夜の図工室に残された青い落書きは、見る者の夢に現れて泣き声を響かせるという。

はるとは、机の上の絵にそっと指を伸ばした。

指先に冷たい感触――そして、耳元でかすかな囁きが聞こえた気がした。

――どうして、忘れたの。

はるとは思わず息を呑む。

この声を、自分は知っている。

でも、それはありえないはずだった。

死んだはずの姉の声に、どこか似ていたから――。




第一話 青い落書きの夜

翌日の放課後。

藤本はるとは図工室の青い絵のことを頭から離せずにいた。

結城るなと金沢かりんも同じ気持ちだったらしく、三人は誰に誘われるでもなく再びあの部屋へと足を向けた。

窓から差し込む夕陽に照らされた図工室は、昼間でさえ薄暗く、机に残された“青い子”の横顔がどこか生き物めいて見える。

「やっぱり、あの絵だけ雰囲気が違うよね」

かりんが眉をひそめる。

「昨日、はるとが言ってた声……本当に聞こえたの?」

るなが問いかける。

はるとは小さく頷いた。

「……姉さんの声に、似てた」

その一言に、二人の表情が強ばる。

姉――藤本みな。はるとの二つ上の姉は、一年前に病気で亡くなった。

青い落書きと姉の声。

偶然で済ませるには、あまりにも胸がざわつく。

「放っておけないよ」

るなが机に手を置き、青い絵を見つめる。

「この絵、誰が描いたか調べてみよう」

はるとは無言で頷いた。

青い子の噂の裏に、姉が残した何かが隠されている――

そんな確信が、静かに心の奥で膨らんでいった。












第二話 囁くスケッチブック

三人は図工室の奥にある資料棚を探し始めた。

ほこりをかぶった画材の中から、るなが一冊のスケッチブックを見つける。

表紙には、見覚えのある文字――“みな”とサインが残されていた。

ページをめくると、そこには青を基調にした人物画が並んでいる。

そのどれもが、悲しげに目を伏せた少女ばかり。

「これ……姉さんの、だ」

はるとの声が震える。

最後のページには、例の横顔の少女が描かれ、薄く“忘れないで”と走り書きが残されていた。

「呪いじゃない……呼んでるんだ」

かりんが呟く。

その瞬間、部屋の奥で窓が勝手に開き、風がスケッチブックをめくった。

――どうして。

あの夜と同じ囁きが、三人の耳をかすめた。




第三話 夜に浮かぶ声

日を追うごとに、はるとの夢には青い子が現れるようになった。

夢の中の少女は顔を隠しながら、ただ一言だけを繰り返す。

――思い出して。

はるとは徐々に、その声が確かに姉のみなのものだと確信する。

一方、るなとかりんも異変を感じていた。

青い絵を見た夜は必ず、姉にまつわる記憶が頭に浮かぶのだ。

幼い頃、三人で遊んだ放課後。

まだ元気だった頃のみなが、青い絵の具で空を塗っていた記憶。

「姉さんが残したメッセージ……私たちに何を伝えたいんだろう」

はるとは拳を握る。

三人は、みなが最期を過ごした病室を訪れる決意を固めた。











第四話 病室の青

病院を訪れた三人は、看護師からみなの遺品を受け取る。

それは小さな色鉛筆の箱だった。

中には、ほとんど使われた形跡のない“青”だけが削り減っていた。

箱の底には、小さなメモが一枚。

――わたしは消えても、青い空はみんなの中にある。

涙が頬をつたう。

みなが最後まで描こうとしたもの。

それは呪いなどではなく、彼女自身の“願い”だった。





第五話 記憶の扉

学校に戻った三人は、図工室で改めて青い子の絵を見つめた。

すると、絵の中の少女がほんの少し笑ったように見えた。

「ありがとう、見つけてくれて」

はるとの耳に、たしかに姉の声が届く。

青い子の正体は、姉みなが最後に描いた“未来の自分”。

それは弟に生きてほしいという祈りと、忘れないでという願いが形になったものだった。











最終話 青い空へ

卒業式の日。

はるとはるな、かりんの三人は校庭に立ち、澄み渡る青空を見上げていた。

あの日の青い絵の少女はもう、図工室から消えていた。

スケッチブックには、みなのサインだけが静かに残されている。

「姉さん、見てるかな」

はるとの言葉に、るなとかりんが微笑む。

「もちろん。私たちの中に、ずっと」

青い子の呪いは――願いへと変わった。

空を染める春の青は、もう恐ろしい色ではなく、未来へと続く希望の色だった。







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