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第4話 百七
百七は、失敗しない。
時代整理局で、そう言われていた。
新人の間では、ほとんど決まり文句になっている。
難しい案件が出る。
百七ならできる。
回収不能に見える品が見つかる。
百七なら拾える。
目撃者が多すぎる。
百七なら道を作る。
誰が最初に言い出したのか、三百二十は知らない。
ただ、局の通路を歩いていると、何度もその声を聞いた。
百七は失敗しない。
三百二十も、そう思っていた。
未来市場で小銭袋を見守った時。
百七の動きは静かだった。
慌てず、近づきすぎず、でも見失わない。
まるで、落ちる前から落ちる場所を知っていたみたいだった。
だから今日、三百二十は百七の隣に立つだけで、少し背筋が伸びた。
時代整理局の訓練室。
床には細い線が引かれている。
時代の流れを再現した線。
市場の人混み。
橋の下。
港の倉庫。
古い町角。
訓練用の映像が床の上に立ち上がり、足音も匂いもない町ができていた。
百七はその中央に立っていた。
深い茶色の上着。
灰色の手袋。
腰の記録筒。
何もしていないように見えるのに、どこにも隙がない。
三百二十は訓練用の回収鞄を肩にかけていた。
中には模擬品が入っている。
軽いはずなのに、やけに重い。
十八が壁際に立っていた。
「今日の訓練は百七が見る」
「はい」
三百二十はうなずいた。
「内容は」
百七が言った。
「拾わない訓練」
「拾わない」
「回収員は、拾うだけではない」
百七は床の線を見た。
「拾う前に、見る。見る前に、待つ。待つ前に、判断する」
三百二十は指先をそろえた。
「はい」
「返事は一度でいい」
十八が横から言った。
三百二十は口を閉じた。
訓練が始まった。
映像の町に人が流れる。
昭和の商店街に似た道。
店先には野菜が並び、子どもが走り、犬が寝ている。
その中に、ひとつだけ違う物があった。
小さな未来部品。
手のひらに乗るほどの丸い部品。
店の台の下で、淡く光っている。
三百二十はすぐに見つけた。
一歩出る。
百七の声が落ちる。
「止まれ」
三百二十は止まった。
「なぜ止めたかわかるか」
「人が見ています」
「ほかには」
三百二十は周囲を見た。
映像の中の人々。
通りの流れ。
店の主人。
子ども。
犬。
荷車。
「子どもが近づいています」
「ほかには」
「荷車が来ます」
「ほかには」
三百二十は息を詰めた。
ほか。
ほか。
見えているはずなのに、言葉にならない。
百七が静かに言った。
「部品の光が、店の台の下に反射している。拾う時に手を入れれば、店主が気づく。子どもが先に気づけば触る。荷車が通れば奥へ押し込まれる。犬が動けば、部品が見えなくなる」
三百二十は床を見た。
「全部、見ていたんですか」
「見る」
「すごいです」
「すごくない」
百七は表情を変えなかった。
「失敗すると、見るようになる」
その言葉だけ、訓練室に残った。
十八が百七を見た。
百七は何も言わない。
訓練の映像が消える。
商店街がほどけ、床の線だけになる。
三百二十は百七の横顔を見た。
今の言葉が気になった。
失敗すると、見るようになる。
百七は失敗しない。
そう言われている。
だが、百七は今、失敗すると言った。
訓練が終わった後、三百二十は報告室で記録を書いた。
拾わない訓練。
観察不足。
介入判断、早すぎ。
視線誘導未確認。
筆が止まる。
百七の言葉が戻ってくる。
失敗すると、見るようになる。
「気になるか」
十八の声がした。
三百二十は顔を上げた。
十八は茶色の外套を揺らして、机の横に立っていた。
「何がですか」
「百七のことだ」
三百二十は少し迷った。
それからうなずいた。
「はい」
「聞きたいなら聞けばいい」
「聞いてもいいんですか」
「本人が答えるかは別だ」
十八は記録筒を机に置いた。
「ただ、百七は伝説ではない」
「でも、みんなが」
「みんなは勝手に伝説にする」
十八は窓のない壁を見た。
「本人は、そう呼ばれるのが好きではない」
三百二十は報告書を見下ろした。
その日の夕方。
夕方といっても、局の中では灯りの色が少し落ちるだけだった。
三百二十は保管庫へ記録札を届けに行った。
保管庫は静かだった。
棚が奥まで続き、時代違いの品が眠っている。
古い湯札。
未来の食器。
名前の消えた鍵。
どこから来たかわからない布切れ。
それぞれが札をつけられ、透明な箱に収まっている。
通路の奥に、百七がいた。
箱の前で立っている。
深い茶色の背中。
灰色の手袋。
いつものようにまっすぐな姿勢。
ただ、その前にある箱だけ、少し古かった。
三百二十は足を止めた。
声をかけるべきか迷う。
その迷いに気づいたように、百七が言った。
「何だ」
「記録札を届けに」
「二十三は奥だ」
「はい」
三百二十は通り過ぎようとした。
けれど、目が箱に吸い寄せられた。
中には、小さな木の玩具が入っていた。
車のようにも見える。
船のようにも見える。
子どもが手で転がして遊ぶ物だ。
その横に、小さな札がついている。
回収不能関連品。
旧記録。
担当、百七。
三百二十は息を止めた。
百七がゆっくり振り向いた。
「見たか」
「すみません」
「謝ることではない」
百七は箱へ視線を戻した。
「古い任務だ」
三百二十は記録札を握った。
聞きたい。
でも、踏み込みすぎかもしれない。
百七が先に言った。
「伝説と呼ばれる前の話だ」
三百二十は何も言えなかった。
保管庫の奥で、換気の音だけが静かに続いていた。
百七は箱の前に立ったまま、低く話し始めた。
「新人だったころ、教育係は七十九だった」
三百二十は少しだけ近づいた。
百七は止めなかった。
「七十九は、よく待つ人だった。回収対象が見えていても、すぐに拾わない。人の流れが変わるまで待つ。風が止まるまで待つ。子どもが飽きるまで待つ」
「百七も、そう教わったんですか」
「教わった」
百七は箱の中の木の玩具を見た。
「だが、わかっていなかった」
時代は、大正の終わりに近いころだった。
小さな町。
川沿いの道。
夕方の市。
七十九と若い百七は、露店の並ぶ通りにいた。
そのころの百七は、まだ今より動きが速かった。
早く見つける。
早く拾う。
早く終わらせる。
それが正しいと思っていた。
回収対象は、小さな未来部品だった。
玩具に組み込まれるはずのない動力片。
それが、木の玩具の中に入っていた。
持ち主は少年。
茶色の着物。
短い髪。
裸足で通りを走っていた。
手には、車のような木の玩具。
それは、押すと勝手に走った。
少しだけ。
ほんの数歩分。
けれど、その時代にはありえない動きだった。
周りの子どもが集まる。
大人も見る。
少年は得意そうに笑う。
「すごいだろ」
木の玩具が、ことことと走る。
止まる。
また走る。
若い百七は焦った。
見られている。
広がる。
分解される。
真似される。
その考えだけが頭にあった。
七十九は言った。
「待て」
若い百七は止まった。
だが、心は止まらなかった。
少年が玩具を持って走り出した。
人混みを抜ける。
川沿いへ向かう。
若い百七は、その背中を追った。
「百七」
七十九の声がした。
それでも百七は進んだ。
少年は川の近くで立ち止まった。
木の玩具を地面に置く。
走らせる。
玩具はことこと進む。
川の方へ向かう。
若い百七は飛び出した。
玩具を拾った。
少年が振り向く。
目が大きくなる。
「返して」
少年が言った。
若い百七は何も言えなかった。
返せるはずがない。
それは時代異物だった。
回収しなければならない。
「これは危ない」
若い百七はそう言った。
言い方が硬かった。
冷たかった。
少年には、ただ奪われたようにしか聞こえなかった。
少年は若い百七の腕にしがみついた。
「返して」
周りに人が集まり始めた。
七十九が近づく。
遅かった。
少年が泣き出した。
大人たちが見る。
あの旅人が子どもの物を取った。
そんな目が集まる。
若い百七は動けなくなった。
玩具を握った手だけが強くなった。
七十九が少年の後ろ側に立った。
記憶具を出す。
最小限の処理。
目撃者への処理。
周囲への誘導。
そのすべてが、静かに進んだ。
七十九は上手かった。
町の人々は少しずつ散った。
少年も泣き止んだ。
玩具のことは、遠い夢になった。
任務は、記録上は成功だった。
だが、若い百七は見ていた。
処理が終わった後、少年が自分の手を見つめていた。
何かを持っていたはずなのに、何を持っていたのかわからない。
そんな顔をしていた。
少年は木の玩具を忘れた。
でも、失った感じだけは残った。
胸の中に小さな穴を抱えたように、しばらく立っていた。
七十九は若い百七に言った。
「拾うのが早すぎた」
若い百七は何も返せなかった。
「回収は成功した」
七十九は続けた。
「でも、あの子の中に、形のない落とし物を残した」
その夜。
回収した木の玩具は保管庫に入った。
未来部品は外され、封印された。
玩具本体は、少年の持ち物だった。
本来なら返却できる。
けれど、少年はそれを覚えていない。
返す理由が作れなかった。
戻せば、処理した記憶が揺れる。
だから、玩具だけが残った。
保管庫の箱の中で。
百七は話し終えると、しばらく黙った。
三百二十は箱の中の木の玩具を見た。
小さい。
ただの子どもの玩具に見える。
だが、それは百七の過去をずっと持っている。
「それが、失敗ですか」
三百二十が小さく聞いた。
百七はうなずいた。
「記録では成功だ」
「でも」
「俺の中では失敗だ」
百七の声は低かった。
「回収員は、物を拾う。だが、拾った後に何が残るかまで見なければならない」
三百二十は指先をそろえた。
「だから、待つんですね」
「そうだ」
「見るんですね」
「そうだ」
百七は箱の札に触れた。
手袋越しに、そっと。
「百七は失敗しない、と言われている」
三百二十は言った。
言ってから、少し怖くなった。
でも百七は怒らなかった。
「失敗したから、失敗しないようにしている」
百七は答えた。
「それだけだ」
保管庫の奥で、遠くの扉が開く音がした。
誰かが回収品を運んでいる。
誰かが記録を書いている。
誰かが、今日も拾っている。
百七は箱の前から離れた。
「三百二十」
「はい」
「明日、任務に出る」
「僕もですか」
「そうだ」
「どこへ」
「昭和の町工場」
百七は歩き出した。
「回収対象は、未来工具。子どもが拾った可能性がある」
三百二十は息をのんだ。
木の玩具の話を聞いた直後だった。
百七は振り向かない。
「見る訓練だ」
「はい」
三百二十は今度、返事を一度だけにした。
翌日。
昭和の町工場は、鉄の匂いと油の匂いがした。
工場の屋根は低く、外には古い自転車が並んでいる。
作業音が細かく響き、地面には小さな部品が落ちていた。
百七と三百二十は、作業員の服に近い格好で町を歩いた。
百七の深い茶色の上着は、この時代では少し古びた作業上着に見える。
三百二十の灰色の上着も、目立たない。
「対象は」
三百二十が小声で聞いた。
「未来工具。手のひら大。物を切らずに分ける道具」
「危険ですね」
「危険だ」
「発見者は」
「不明。子どもが見たという報告がある」
三百二十は周囲を見た。
町工場の横に、小さな空き地があった。
子どもたちが古い缶を蹴って遊んでいる。
その中の一人が、地面にしゃがみこんだ。
何かを持っている。
丸みのある道具。
灰色の小さな筒。
三百二十の体が固まった。
「対象確認」
百七が言った。
「動くな」
三百二十はうなずいた。
子どもは工具を石に向けた。
まだ使い方を知らない。
指をかける。
三百二十の背中に汗がにじんだ。
危ない。
止めなければ。
今すぐ。
でも、百七は動かない。
百七の目は、子どもだけではなく、周囲を見ていた。
近くの犬。
工場の入口。
通りかかる自転車。
子どもの仲間。
風で転がる紙。
すべてを、ひとつの流れとして見ている。
子どもが工具を振った。
何も起きない。
首をかしげる。
仲間が笑う。
「変な筒だな」
「鉄くず屋に売れるかな」
「兄ちゃんに見せよう」
子どもが立ち上がる。
工場の方へ向かおうとする。
百七が動いた。
速くない。
急いでもいない。
ただ、ちょうどよい時に、ちょうどよい場所へ歩いた。
「それ、拾ったのか」
子どもが振り向いた。
「うん」
「この工場の物かもしれない」
「ほんと?」
「見せてくれ」
子どもは少し迷った。
百七は手を出さなかった。
待った。
三百二十は息を止めて見ていた。
子どもは工具を百七に渡しかけた。
その時、別の子が言った。
「だめだよ、売れるかもしれない」
手が止まる。
百七は表情を変えない。
「売るなら、持ち主に聞いてからだ」
「持ち主?」
「落とした人が困っている」
子どもは工具を見た。
「困ってるかな」
「たぶん」
「じゃあ、返した方がいいか」
子どもは百七に渡した。
百七は受け取った。
その手つきは、奪うのではなく、預かる手つきだった。
「えらいな」
子どもは少し照れた。
「別に」
百七は近くの工場へ入り、作業員に声をかけた。
この工場の物ではない。
だが、持ち主を探すふりをして、自然に回収する。
子どもたちはすぐに缶蹴りへ戻った。
三百二十は百七の横へ歩いた。
「記憶処理は」
「不要」
「なぜですか」
「使い方を知らない。異物として認識していない。工場の落とし物だと思わせた」
「なるほど」
「処理は最後の手段だ」
百七は封印袋に工具を入れた。
「記憶を触らずに済むなら、それがいい」
三百二十はうなずいた。
任務は短く終わった。
けれど、三百二十には長く感じた。
局へ戻る扉へ向かう途中、百七は空き地を見た。
子どもたちはまだ遊んでいる。
缶が転がる。
笑い声が跳ねる。
誰も、未来工具のことを気にしていない。
三百二十は言った。
「今回は、形のない落とし物は残りませんでしたね」
百七は少しだけ目を閉じた。
「たぶん」
「たぶん、ですか」
「人の中は見えない」
百七は静かに言った。
「だから、できるだけ丁寧にする」
三百二十はその言葉を胸にしまった。
時代整理局に戻ると、報告室はいつも通りだった。
机。
記録札。
誰かの足音。
遠くの扉の音。
百七は報告書を書いた。
短い文字。
無駄のない行。
任務内容。
対象回収。
目撃者処理不要。
三百二十も隣で報告を書いた。
昭和、町工場付近。
未来工具一件。
子どもが所持。
百七が接触。
所有意識、弱。
工場の落とし物として誘導。
対象回収。
記憶処理なし。
そこまで書いて、三百二十は手を止めた。
百七の失敗の話を思い出す。
木の玩具。
少年の手。
失った感じ。
三百二十は最後に一行足した。
回収後、子どもたちは遊びに戻る。
違和感、目視では確認できず。
百七がそれを見た。
「いい」
短い一言だった。
三百二十は少しだけ肩の力を抜いた。
その後、百七は保管庫へ向かった。
三百二十も少し遅れてついていった。
百七は何も言わなかった。
止めもしなかった。
例の箱の前。
木の玩具が入った箱。
百七は新しい記録札を、その隣の棚へ収めた。
三百二十は箱を見た。
「返せないんですか」
「返せない」
百七は答えた。
「でも、忘れないことはできる」
三百二十は百七を見た。
「だから、ここに来るんですか」
百七はしばらく黙った。
それから、小さくうなずいた。
「忘れたら、また早く拾う」
その声は、いつもの百七より少しだけ低かった。
「早く拾えば、また誰かの中に何かを残す」
三百二十は箱の中の玩具を見つめた。
伝説の回収員。
失敗知らず。
そう呼ばれる人は、失敗を忘れない人だった。
三百二十は、百七が少し違って見えた。
遠い人ではなくなった。
でも、近い人にもなりすぎない。
長い道を先に歩いている人。
何度も立ち止まりながら、今も歩いている人。
百七は箱から離れた。
「三百二十」
「はい」
「失敗を怖がるな」
三百二十は驚いた。
百七は続けた。
「怖がるだけでは動けなくなる」
「はい」
「だが、忘れるな」
「はい」
「忘れなければ、次は見える」
三百二十は指先をそろえた。
返事は一度でいい。
そう思って、うなずいた。
保管庫を出ると、通路の向こうに十八がいた。
茶色の外套。
細い記録筒。
いつもの落ち着いた顔。
「話したのか」
十八が言った。
百七は答えた。
「少し」
「珍しい」
「必要だった」
十八は三百二十を見た。
「どうだった」
三百二十は少し考えた。
言葉を選ぶ。
伝説ではなかった。
失敗した人だった。
だからこそ、今も見ている人だった。
「百七は、失敗しない人ではありませんでした」
十八の眉が少し上がった。
三百二十は続けた。
「失敗を置き去りにしない人でした」
通路に静けさが落ちた。
百七は何も言わない。
十八も何も言わない。
やがて、十八が記録筒で自分の肩を軽く叩いた。
「悪くない」
それだけだった。
その日の終わり。
三百二十は報告室で、自分の記録を整理した。
第1話の任務。
江戸の橋下。
未来端末。
磁馬の筆。
本人回収確認。
第2話の任務。
明治の港町。
気象端末。
少女の記憶。
残すものと遠ざけるもの。
第3話の巡回。
未来市場。
小銭袋。
見守る仕事。
そして今日。
百七。
木の玩具。
形のない落とし物。
三百二十は筆を置いた。
回収員の仕事は、思っていたより広い。
ただ拾うだけではない。
ただ忘れさせるだけではない。
ただ守るだけでもない。
時代に残してはいけない物を拾う。
けれど、人の中に残してしまうものも見る。
それは難しい。
とても難しい。
でも、たぶんそこから逃げたら、回収員ではいられない。
扉の向こうで、どこかの時代が鳴った。
新しい任務かもしれない。
誰かの帰還かもしれない。
また磁馬が何かを落としたのかもしれない。
三百二十は少し笑った。
それから報告書を閉じた。
通路の先では、百七が歩いていた。
背筋はまっすぐ。
歩き方に無駄はない。
深い茶色の上着が、灯りの中を静かに進む。
その背中は、やはり遠かった。
けれど今は、ただ遠いだけではなかった。
失敗を抱えたまま歩く背中。
忘れないために、今日も保管庫へ行く背中。
誰かの中に形のない落とし物を残さないために、待ち続ける背中。
三百二十は、その背中に向かって軽く頭を下げた。
百七は振り向かなかった。
でも、足を止めずに片手だけを上げた。
それだけで十分だった。
時代整理局では、明日も誰かが言うだろう。
百七は失敗しない。
三百二十は、その言葉を聞いたら、少しだけ違うことを思うはずだ。
百七は失敗を忘れない。
だから、百七は今日も回収員でいる。
誰かの手から離れた物を拾うために。
誰かの中に残る痛みを、これ以上増やさないために。
そして、あの日の小さな木の玩具を、ひとりにしないために。
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読了したよ〜第4話「百七」!😭✨ 「百七は失敗しない」って言われる人ほど、過去の失敗を抱えて"見るようになった"ってのが胸に刺さりすぎた…。木の玩具が保管庫に残り続ける切なさ、そして今回の任務で子どもに"失った感じ"を残さず回収できたのが、あの日の伏線回収みたいでじーんときたよ。 三人称なのに百七の背中に泣きそうになるって何なんだろうね…! 次は昭和の工場任務、しっかり見届けるよ〜!📝💕
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ruruha
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羽海汐遠
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