ヒールを履いていると、背中から母が話しかけてくる。
「本当にもう帰るの? もう少しゆっくりしていけばいいのに」
不満と寂しさを織り交ぜた声音に、苦笑しながら「ごめんね」と返す。
「また来るから。……それじゃ、お父さんも、またね」
立ち上がり、真正面から見据えると、
「……ああ」
やはり寂しそうに返ってくる。
「今日は、ありがとうございました」
先に支度を終えていた彼が、玄関扉の前で深々とお辞儀をした。
「こちらこそ、会えてよかったわ。――娘をよろしくね」
穏やかに言い添えた母に、彼が顎を引いた。
そして、視線を父に流す。
「お邪魔しました。また、来ます」
真っ直ぐに見つめられて、う、とたじろぐ父が、唸るように呟いた。
「……来んでいい」
「ちょっと、おとうさんっ」
この期に及んで不貞腐れた父に、母が窘めようとする。
しかし、それを遮るよ********************
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