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ちゃ
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第4話▶︎見間違うわけない横顔/side勇斗
翌年、 俺は大学生になった。
今日は大学生活初めてのオープンキャンパスの日。
俺は仁人と、来校者でいつもより賑わう構内を、たわいもない話しをしながら歩いていた。
いつも以上に人が多い構内。
なのに、俺はすぐにあいつに気付いた。
高校に、全て置いてきたはずの恋に。
けれど、声はかけなかった。
いや、かけられなかった。
人混みの中で、周りより頭ひとつ飛び出た長身の、不安気に歩く母校の制服を着たあいつ。白い肌、ベルトを巻いた細い腰、王子様かよって感じの顔立ち。そして、あの頃より少し大人びた横顔。
ずっと忘れられなかった顔。
ーーーーー山中柔太郎だった。
「……やめとくか」
小さく呟いて、何もなかったふりをしよう。
また同じことを繰り返す気はサラサラない。
なのに、
「…仁人わり、ちょい抜けるわ」
「おー、どこにいくん?」
「ちょっと…」
語尾を濁す俺に
「早く行けよ」
何かを察した仁人は、さっさとしろと言わんばかりに、顎でしゃくった。
気がついたら俺は柔太郎めがけて駆け出していた。
「……久しぶり、柔太郎。」
突然かけられた声に、柔太郎は少しだけ驚いた後、俺の顔を見ると安心した様な顔を、一瞬した。
その柔らかな表情を見て、俺は確信する。
——やっぱり、好きだ。
でも、もう遅い。
今さら掘り返しても、困らせるだけだ。
だから、ちょうどいい距離を保つことにした。
話せたら、それで良かったから。
「先輩、彼女いるんですか」
急に、真に迫るような話題を振られた。
その言葉の意図がわからなくて 、俺は思わず怯む。
「……いないよ」
なんでそんな事を聞くのか、動揺がバレないように口元を手で隠しながら、なるべくフツーに言った。
「そういえば、よく覚えてましたね、俺のことなんて」
続けて放たれたその言葉に、俺は一瞬、言葉を失う。
「……は?」
「え、だって。あの、いや、嬉しいですけど」
——そんなの、覚えているに決まってる
「あたりまえだろ。」
思いがけずいつもより、低い声になる。
「ずっと、覚えてた」
やっと、言えた本音だった。
「へ?」
そんな俺の言葉に柔太郎は明らかな戸惑いをみせた。その表情に少し傷ついた自分がいる。
「俺が、お前を…忘れたりするわけないだろ。」
こんなことしか言えないけれど、俺は会話をまだ続けたかった。途切れたらまた、柔太郎がいなくなる。ただただ、それが怖かった。
そしたら、今度こそ、本当に手が届かなくなる。
——あのときと同じだ。
「ずっと探してた」
お前を忘れたりするわけないだろ。
そんな気持ちを声に出せば、 柔太郎の瞳に戸惑いが見えた。
次の瞬間。
「俺、先輩のこと、ずっと好きでした」
気付いていたはずの気持ちだったのに、俺は素直に驚いた
「それ…それ、俺のセリフだろ!」
一歩、距離を詰める。
「俺だって、ずっと好きだった」
伝えたい、伝わってほしい
「あのときも、今も…」
初めての感情に体がついていかず、髪の毛を何度も両手で触ってしまう。
「なのに…また同じこと繰り返そうとしてる」
逃がさないみたいに語気が荒くなる。
柔太郎の目に、俺はまだ映っているんだろうか。
「俺、でも、どうしたらいいかわかんないです」
沈黙していた柔太郎から、やっと聞けた言葉。
迷子の子どもみたいな目を、抱きしめたくなる。
柔太郎は、正直すぎるくらい、正直だった。
俺は少しだけ目を細めて、それから、ゆっくりと息を吐いた。
「じゃあさ」
できるだけ優しく伝えた。
想いを口にしてくれる柔太郎がただただ愛おしかったから。
「終わる前提で、始めるか、それでもいいなら」
柔太郎の前に手を差し出す。
卑怯な言い回しだと思った。
だけど、柔太郎と一緒にいられるなら、もうなんでも良かった、この手を取ってくれるなら。
「今度は、ちゃんと選べ」
少しだけ、声が弱くなる俺の手を柔太郎が見つめる。そして、震える指で、ゆっくりと触れてくれた。
俺はその手を今度こそ離さない。
「ずるいです」
柔太郎が小さく呟く。
「これでいいんですか」
「…よくはないだろ。遠回りしすぎ」
そう言いながら、俺は少しだけ握る手に力をこめる。
「でもまあ、今だから、いいのかもな」
俺が小さく笑うと
「はい。今だから、いいんです」
と、柔太郎がつられて笑った。
俺たちはやっと、同じ方を向けたんだ、 そうだろ?