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「お部屋をご用意いただきまして、ありがとうございます。それに着替えまで……き、着替えまで……」
やっぱり恥ずかしすぎて顔を覆い座り込んでしまいました。
「うむ。やはりそれを選んだか。着慣れたものが良いというのもそうだが、それが一番しっくりくるな」
あああーっ! もう立ち上がれないです。今の私の顔を見られたらもう、こんなはしたない子なんて……。分かりましたわ、ここはやはり天国なのです、極楽浄土なのです!
「座り込んで体調でも崩したか?」
ダリル様が心配してくださってます。でもだめ、まだ顔が真っ赤で……でも元気なので、そんなことはないと首だけでも振っておきましょう。
「本当に大丈夫か? なんだか首まで赤いぞ?」
あああぁーっ! 耳までどころではなかったのです。これではこれではっ。取り敢えずちゃんと声に出して否定しておきましょうっ!
「いえ、ほ、ほんとうに大丈夫です。ちょっと緊張しているだけで」
なんとかそれらしく出来たっ! 声がうわずったけども、私ナイスっ! 顔は隠したまま何とか立ち上がり、そのままで顔は少し逸らしてしまう。指の間から心配するダリル様の顔が見えて、もう、それがまた……。
「ふむ、緊張か。それも仕方ない、見知らぬところでいきなり生活しろと言われてもな。天気もいい、俺と出かけるか」
「えっ?」
一瞬のこと。私の手を取ったダリル様はそのまま握って歩き出しました。カランカランとなる扉から店を出て
「街の案内がてら散歩でもすれば良いだろう。ちょうど昨日散歩した所だから同じルートでいいだろうか」
力強くそれでいて気遣うような優しい手の温もりに抵抗することも出来ず、けれども突然のことに足がもつれて、ダリル様に寄りかかってしまいました。
「本当に大丈夫なのか? 顔も真っ赤だが……ふぅ、こうしてやるから、それなら安心か?」
そうしてダリル様は手を握り直して……はわわっ、これって雑誌なんかで見た恋人繋ぎじゃないですか! 巫女として修行中の身にありながら憧れて、でも諦めてたあの伝説のっ!
そしてそのまま引き寄せられて歩くこれは──あの雑誌なんかで見たデートってアレですか⁉︎
もう心臓が壊れそうなほどドキドキしてるんですけど……ここは天国だから死にませんね、きっと。