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純と恵菜、彼女の両親と食卓を囲んだ後、恵菜の母が温かいお茶と和菓子を用意してくれた。
「改めまして、谷岡純と申します」
彼は、目の前にいる彼女の両親に、深々とお辞儀をすると、恵菜の両親も純に一礼した。
「不躾な質問で申し訳ないが……恵菜とはどういう関係で……?」
「恵菜さんの高校時代の親友、高村奈美さんの職場の上司です。奈美さんを通じて、恵菜さんと知り合いました」
「あら! 奈美ちゃんの上司の方なのね!」
恵菜の母がパンッと手を叩くと、笑顔を輝かせる。
「ああ、高村さんの職場関係の方でしたか。高校時代、高村さんは、よくうちに遊びに来てたな」
純が、恵菜と想いを通わせた事を伝えようか迷っていると、彼女がゆっくりと口を開いた。
「前に、職場近くで勇人が待ち伏せしてて、話し合いをしたんだけど、勇人が怒って手を上げられそうになった所を、純さんが助けてくれたの。家の前で勇人が張ってた時、私、お父さんにメッセージを入れたでしょ?」
「ああ、あの時か」
「その時も純さんが、お父さんにメッセージを入れた方がいいってアドバイスしてくれて……」
「あのメッセージに書いてあった『友人』というのは、谷岡くんの事だったんだな……」
恵菜は、無言で辿々しく頷いた。
恵菜の職場近くで、元ダンナが張っていた事を知らなかったのか、彼女の両親が困惑したような、驚いているような、複雑な表情を浮かべている。
「谷岡くん、恵菜を助けてくれて、本当にありがとうございます。ならば、恵菜が過去に結婚していた事も、知っているんですよね?」
彼女の父が、微苦笑しながら純に問い掛けた。
「はい。彼女から全て聞いております」
純の言葉を聞き、恵菜の父が前髪を掻き上げた後、腕を組み、鋭利な眼差しで彼を見据えた。
「谷岡くんは……恵菜を…………どう思っているのかな? いや、初対面の方に、こんな事を質問するのも失礼だというのは、重々承知しているのだが……」
純は答えを詰まらせていた。
恵菜の父は、娘が一度結婚に失敗している事もあり、離婚後に連れてきた男、純の人柄を見定めようとしているらしい。
厳格な表情を覗かせている彼女の父を、横目で見た母は、固唾を飲んで純と恵菜を見守っている。
だが、彼が彼女に一目惚れし、人生を掛けて守りたい、癒したいと思える女性は恵菜だけだ。
「…………長くなりますが、お話をさせて頂いても、よろしいでしょうか?」
純は、一度顔を俯かせた後、勢い良く顔を上げ、恵菜の父と視線をかち合わせた。