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𝓡𝒖𝓷𝐚🎧🌀
#バトル
「ここが公爵家の書庫か」
大きな扉を開くと、大量の本が収納された空間に出る。
書庫の中は図書館と呼ぶには広すぎた。
『月は魔法と踊る』の世界では本は貴重品らしい。
本1冊でもここで暮らしている平民1か月分の生活費に相当する。
その貴重な本を大量に所持をしている……すなわち、それだけの財力があるということを証明している。
「あ、あの……イヴィル様。こちらには如何様で……?」
長くピンクがかった髪をした眼鏡をかけた女性が恐る恐る俺に話しかける。
「お前は……」
俺はイヴィルの記憶を探る……ダメだ。出てこない。
「司書のカメリアと申します」
司書だと? そんな重要な人物の名前が出てこないとは……やはり、イヴィルは自分以外に興味が無さすぎる。
そんな憤りを隠して、俺はカメリアに応える。
「カメリアか。少し本を読みたくてな」
「えっ……!?」
カメリアは驚いた顔をする。
「どうかしたか??」
そこまで驚かれることか? と思いつつ俺はカメリアに尋ねると、
「し、失礼致しました!!」
カメリアは頭を大きく下げた。
「すまない。何故謝っているのだ?」
俺が困惑しながらもカメリアの訳を聞くと、カメリアは頭を下げたまま答える。
まるで先ほどは肩を震わせる。
「ご、ご無礼を働いたかもしれないので……」
「無礼?」
「そうです、悪いのは私一人なのです……! ですが、この本たちに罪はありません! ですので罰するのは私だけにしてください! どうか……!」
必死さが伝わった。
自分の保身よりも本が大事だということも。
それだけ本が好きなのだろう。
「とりあえず、頭を上げてくれないか」
「は、はい……」
カメリアは恐る恐るといった様子で頭をあげる。
まずは誤解を解かないとな。
「カメリアは勘違いをしている。無礼なんてとんでもない。むしろ俺の方がカメリアの仕事を邪魔しているのだ。そういう意味では俺の方が無礼なのだよ」
「そんなことは――」
――ないとカメリアが否定をする前に俺は続ける。
「カメリアの仕事の邪魔はしないと約束しよう。不安であるならば、イヴィル・ヴィルサレムの名に誓う」
「そ、そこまで……! イヴィル様! むしろ手伝えることがあれば手伝わせて下さい! 私はヴィルサレム家の司書なのです! 本に興味があるというのであれば、私をお使い下さい!」
カメリアは鼻息荒く前のめりで俺に言う。
この『月と魔法は踊る』の世界では、自分の名前に誓うことは一種の契約に近い強制力を持たせることができる。
特に貴族が自分の名前に誓うというのは、かなり重たいことを意味する。
「そうか……そこまで言うのなら一つ頼みごとをしてもいいかな?」
「なんなりとお申し付け下さい!」
そこまで言われたら、むしろ頼まない方が失礼だろうからな。
俺ははっきりと目的の書物の名前を言う。
「ありがとう。それでは『白紙の書』という本を探して頂けないだろうか」
「白紙の書ですか……? たしかに白紙の書はありますが……本当になにもない白紙の書物ですよ?」
カメリアは困惑をしながら、俺に尋ねる。
「構わない。あと白紙の書は優先して持ってきてほしいが、白紙の書以外にこの国の歴史書と魔法に関する書物をいくつか持ってきてくれ」
「しょ、承知致しました」
カメリアはそういって、本を取りに向かった。
「イヴィル様……なんてお優しい……。アンナは、アンナは信じておりましたよ!」
メイドのアンナは大きな目をキラキラさせていた。
「今、優しい要素あったか……? 仕事を頼むのだ。礼を尽くすのは普通だろ。そうしなければ最大限のマンパワーは出せないからな。もちろんアンナにだって感謝をしているさ」
「そ、そんな……アンナにはもったいないお言葉です!! 私もイヴィル様のために精一杯頑張ります!」
アンナはそう言いながら涙を流す。
いや、泣くほどか??
それに俺はやるべきことをやるだけ、目的達成のためなら何でもするのは当たり前だ。
そもそも礼を言うのは本当に大したことではない。
「お待たせしました……。こちらが『白紙の書』です」
黒い革に金の蛇の絵柄が入った本。
間違いない。月と魔法は踊るの中で見た『白紙の書』だ。
「ありがとう。助かるよ」
「ですが、本当にこの本で合ってますか? 何も書いてありませんが………」
カメリアは『白紙の書』をペラペラとめくる。
「ありがとう。この本で間違いない。俺が探していたものだよ」
『白紙の書』は一見すると白紙だ。
特質しすべきはこの書物に文字を書いても消されてしまう。
結果として、『白紙のように見える』のだ。
「残りの本に関しては後日に取りに行くから、それまでに用意していてくれると嬉しい。一旦は自分の部屋に帰らせてもらう。仕事の邪魔をして悪かった」
「とんでもありません! このカメリアにお任せ下さい!」
「あぁ。頼りにしているぞ」
俺はカメリアにそう語りかけて部屋に戻るのであった。
* * *
「アンナ。今から何人たりとも部屋に入らせるな。そしてなにがあっても部屋に入ってこないでくれ。事が終わり次第、俺の方から外に出る。いいな」
「しょ、承知致しました……それでは、一度失礼致します」
アンナは少しだけオドオドしながらペコリと頭を下げて部屋を出る。
「ククク……いざやるとなるとワクワクするじゃないか」
俺はベッドの上で『白紙の書』を広げて笑みを浮かべる。
ベッドの上で『白紙の書』を広げて、俺は闇属性の魔力を注ぐ。
すると、本来白紙のはずの本から限りなく黒に近い紫色の文字が浮き出る。
この『白紙の書』は白紙のように見えるだけで、実際には文字が記されている。
その文字は特定の魔力を注ぐことでチート級のスキルを手に入れられることができる。
『月は魔法と踊る』では隠し要素の内の一つだが……この『白紙の書』自体がエンドコンテンツなのだ。
「さて始めようではないか」
こうして俺の前にゲームのウィンドウ画面が現れる。
『隠しクエストを始めます』
俺はニヤリと大きな笑みを浮かべるのであった。
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