テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
[3918年5月12日11時32分/512号]
「嘘だ嘘だ嘘だ…!!そんなの嘘…!!そんなのない…絶対違う…違う違う違う…!!」
フェノールが頭を抱えている。ここは確かヴェルタという場所だった気がする。どうしてこんなに叫んでいるのだろうか、そんな疑問が頭に過ぎる。
2号と3号の戦線撤退、その後、蝕性雨が俺たちを襲って、その後に異星人の反撃で大爆発が各地で起こってそれで、僕たちは洞窟に隠れて。
「畤院!!どうしよう、こんな所に閉じ込められたんだよ…?!しかもこんな奴らと!!」
「おい、落ち着けってお前。こいつらは朔や俺に何かしたか?こんな未熟な子供にその所業はないぜ。」
最初から期待してない。なのにこの男は心配そうにしている。俺たちはあんた達のために戦ってるわけでもないし、気を使われるのはかえってストレス。
この朔という男の言い分は間違っちゃいない。こいつらが殺したいくらいに憎くてたまらない。この朔という男は俺の感情に気づいているのだろう。
こいつらは、俺たちを虐げて人権を無くしてきた奴らを見ないフリをしてきた。そんな奴らを見たくもないし、一秒でも同じ空間に居たくない。
「フェノール、落ち着いて。ちゃんと、息を吸って。」
フェノールの背中をさすって落ち着かせようとした。未だに呼吸は浅く速い。フェノールは朔の顔を見てまた頭を抱え悶え始める。
「不自由は嫌だ…、不自由はっ…嫌だ嫌だ嫌だ…。」
「大丈夫か?」
「あんたらに気を使われる筋合いなんてないっ!!お前らが妬ましくてうざったくてしたかないんだよこっちはっ…!!黙ってるか、さっさと死ね!!!」
畤院という男は気を使ってくれたのに、それが俺の神経を逆撫でした。隠しきれないほどの苛立ちが声を張り上げ露わになってしまう。
こんなに不安で自由は嫌だなんて呟きながら呼吸もままならないフェノールをみて大丈夫だと思うのか?お前らみたいなやつが近くにいるだけだ反吐が出る。
こんな閉鎖空間、出入りもできない不自由な空間にいなければ早々に離れられていたというのに、未だに出れずに忌々しい奴らと空気を共にするなんて。
「…そうだ、いっそお前らなんか殺してしまえばいいんだ…。死ねば忌々しい奴らとこのクソみたいな空気を共にすることなんてない…。」
リベルは背中に背負っていた大きな剣を抜刀し、畤院たちを睨みつける。朔は銃を構えているけれど、畤院は構えず両手を上げた。
「何のつもりだ?」
「畤院!!こんなやつさっさと殺した方がいいよっ…!!じゃなきゃ僕たちが危ないじゃないか!」
「お前は黙っておけ!!そんな銃で殺せると思ってるお前の頭の中がどうかしてる!!お前に聞いてる!!こんな真似して何のつもりだ!!」
「なんのつもりもねぇよ。手を挙げてるんだ、命乞いとでも言えばいいか?」
朔みたいに銃構えて反撃する体制になっとけばいいだろ。なのに、なぜしない。なぜ、こいつは朔のような合理的判断をくださないのだろう。
むしろ、俺が殺さないと思って合理的な判断をしているのだろうか。
「殺す気にならないんだろ?どうか、そのまま矛を収めてくれるとありがたいのだが。」
「……わかった、……ごめん。」
なんでそんなに優しくするんだ…。なんでそんなに敵意を向けない?気持ちが悪い。身寄りのない子供を虐げてきた大人たちが大嫌いだ。
大人は汚くて、醜い。こいつらも、汚くて醜くてどうしようもない奴らで、自身より立場の弱いものを家畜以下だと思っているくせに。
心の余裕を見せつけてるのか?こいつらのやることだ、どうせ自身は心の余裕があるんだと嫌味を言ってる可能性だって全然ある。
どうせ、心の内はもっとどす黒い。誰だってそう、心の中で嘲笑って、心の中でバカにして、心の中であいつは下だって優越感に浸ってる。
#恋愛
ばたっちゅ
4,526
215
#BL
NGS_ヘビーなしっぽ
204
「案外素直だな。」
「は?喧嘩売ってんの?」
「いいや、全然。ごめん、とかわざわざ言うところ良い奴が滲み出てるというか。、」
「あっそ。」
少しは仲良くなれたのだろうか、と思った時だった。畤院と朔の首が吹っ飛んだ。なにか起きたか分からず呆然としていると、気配を感じた。
気配を感じたところを避けると、大きな鎌の斬撃が振られていた。避けたが首を一部、浅くだが切ってしまった。
鎌を持った女性、黒髪長髪で特徴的な仮面をつけており高身長。情報と合致来ている人物、トコイという人物だと思った。
「誰だ…、お前はなぜ2号とおんなじ容姿をしている…。」
「理由などない。」
「何故俺たちを殺そうとするんだ…。」
「…それ以外の希望が見えないから。」
希望?何を言っているのだ。こいつを見る限り、たしかに普通の人間ではないのは分かるけれど、異星人と表示されない。
リベルは剣を構え相手の動きを窺う。トコイも慎重なのか攻撃の機会を窺っているようだった。フェノールまで守りきれるか怪しい。
やはりと言うべきか、トコイが鎌を向けた相手は、戦闘が不能なフェノールに向かって思いっきり鎌を振り下ろしたのだ。
咄嗟にフェノールを掴み引き寄せて何とか一命は取り留めたが、肘から下の腕が切れた。熱い液体が傷口から溢れて気づけば声を上げていた。
痛みからただ地面に倒れ狂叫とするだけだった。傍らには、地面に倒れ込んで怯え、涙を垂れ流すフェノール。
「頼むから、もう抵抗せず早く死んでくれ…。大人しくしたら…これ以上苦しまない…。」
「…なんでだろ…、死ぬのが…怖いから…、死にたくないから…今こうして苦しんでるんだ…。」
そいつは仮面越しでよく感情は読み取れない。けれど、鎌の取っ手を持つ手があまりにも震えている。ここで死ぬのも、悪くないかもしれない。
そう思った途端、フェノールが目の前で殺された。けれど、どうせ死ぬのだから大した恐怖はもう無かった。その時、自分の死を悟った。
「最後に、少し話をしてもいいか…。」
「勝手にしろ。」
「あぁ…。」
あの日のことを思い出す。フェノールは大泣きして何度も死体に謝って叫んでもがいて。吐き気を催すその臭いの中、休みもせず泣き続けていたあの日。
あの日、あの日から俺たちは…、友人を”裏切った”。大事な友人を、ただ切り捨て続けた。
「俺も、フェノールも…、仲間を”殺した”んだ。」
あぁ…、やっとこの一言が言えた。分かり合えることなんて無かったから。教えることなんて出来なかったから。
俺たちは、退役前の兵士や危険任務に幸いにも生き残った兵士を殺す。機関に必要がない廃棄物を処理する為の執行人である。
「ずっと、殺して殺して…、裏切り者だと罵倒され、仲間だったのにと涙され、それでも裏切った…。」
「どうしてお前は執行人に選ばれた…?」
「数値で決まる…、ファーストに目をつけられた…。お前はヨハンだ…と。」
「悪趣味な。大昔の処刑人ヨハン・ライヒーハットの名か。お前は彼のようになる必要はない。」
なんだ…、案外優しいやつじゃないか…。敵である俺に、まぁこんなに気を使っちゃって。早く殺せば楽になるのに、わざわざ話を最後まで聞いてさ…。
「最後に聞かせてくれ…、どうして…こんなことしてるんだ…?」
「……私はただ…、ファーストを殺したいだけだ…。」
「そうか…、頑張れよ…。」
目を閉じる。もう時間稼ぎはいい、死の恐怖なんて、さほどなかった。覚悟する時間を与えてくれてありがとう、なんてプライドが邪魔で言えないが。
「おやすみ」
[3918年5月13日23時11分/2号]
「2号さん、3号さん。次の任務は九日後ですが、報告があります。」
相変わらず92号は愛嬌が良すぎて可愛い好き。けれど、今日はなんだか笑顔が曇っている。覇気がないとでも言うべきだろうが。
3号は92号が苦手なのか、ムッとした顔をしている。そんなに態度に出さなくてもいいのに。
「3号、あからさまに嫌そうな顔するな。」
「…だって、1号とまた喧嘩したらまた僕が仲裁しないといけないんだもん…。」
3号は子供じみたことを言う。確かに、仲裁役なんて地獄の極みだが、どうして92号はこんなに元気がないのだろうか、喧嘩しただけでこんな落ち込むなんて思えない。
「92号いつもより元気ないのはどうして…?」
「…あのですね、ヴェルタ作戦の話でして。2号さんや3号さんは途中で離脱してるので状況が把握できていませんでしたね。報告書のデータ送信しておきます。」
しばらくすると左の視界端から大量の文字が出てくる。報告書だろう。
[今回のヴェルタ軍事境界線防衛作戦では、異星人の猛攻を最小限防ぐことはできたものの、資源の代わりに損失したものも大きい。数少ない軍人の中から452名の死亡により損失が大きい。その上、特殊核運用機関の保管していた核体兵器、核固定体兵器の損失も大きくある。損失した兵士は、RCU-030,RCU-082,RCU-113,RCU-122,HAU-721,HAU-801,REU-723,RGU-100,RGU-166,RGU-512.以上、核体兵器八名、核固定体兵器二名の死亡を確認。防衛戦は守られ、相手に多大な損害を負わせたことで何とか落ち着いたが、いまだ土地の確保には至っていない。現在調査中である。]
「…732号と512号って、フェノールと、…リベルだよね…?」
「…はい。そう、ですね。…2号さん、大丈夫…ですか?」
大丈夫と返事はした。けれど、正直大丈夫じゃない。フェノールの絵を待っていたのに、どうしてこのタイミングで死んでしまったのか。
誰に殺されたのか、わからない。リベルは良い奴だったし、フェノールだって、良い奴…かは分からないけどなんだかんだ良い奴だったと思う。
「…3号。フェノール達は…」
「2号、今更フェノールの事を考えたって仕方ないじゃないか。」
「3号?」
「…考えるな。そんな事したって仕方ない。さっさと忘れた方がいい。」
3号の表情は、読み取れないような複雑な表情。けれど、92号が怒ったのか、はー?!と怒鳴り声をあげる。びっくりして思わずわっ!と叫んでしまう。
「忘れた方がいいとか言っちゃうんですか?!3号さんって人の心とかあります?!2号さんにとっては忘れたくない人かもしれないじゃないですか!!」
「……そんなことしても仕方ない。」
「3号さんっていっつもそうですよね!!!88号さんが死んだ時だってそうだったんですか?!」
「はっ?!88号は今関係ないだろ!!!」
二人はがむしゃらに怒鳴る。二人の声が司令室に響き他の人たちがチラチラとこちらを見つめる。5号も気になったのか私の顔を見つめる。
5号に目配せを送るが、顔にはてなを浮かべている。様子を窺っている。助けてくれと顔で表現しようとしたけど伝わらなかった。
「いつもあなたはそうやって自分の気持ちから逃げてばっかりで!!そうやっていっつも薬に頼って大切だった人も忘れようとして…!!!」
「覚えててなんになるんだよ!!覚えていたら死人が帰って来るのか?!死人が動くのか?そんなわけないだろ!!!」
「二人ともお願いだから言い合いはやめ───」
「はっ!!愚かなことをするな。いがみ合いなんどなんと愚か!!愚行なことこの上ない。」
誰?!と言いたくなる。身体中カットバンだらけの女の子が92号の机の上に乗り冷笑していた。自身の机の上に乗られている驚きから92号は呆然とした。
「だれ…。」
「某の名は、アイリール・ウォーノス!!愚かな罪人である。」
私の独り言にわざわざ反応してくれた。この人核体兵器だよね?何番なの?まじ何番なのよ。なぜあの子は名前があるのだろう。てか某ってなに?
いや、自分を罪人なんて言い張る人いたっけ。なんの罪を犯したの…?
「あの、106…いえ、アイリールさん…、机どいてくれませんか…。」
「某は物申したい。92号!!こいつ……えっとー…」
「僕…?…3号だけど…。」
「そう3号!!3号の、人の行雲流水を乱すことは万死に値する。そして3号も!!包帯やらカットバンだらけで某とキャラが被るだろ!!」
論点が意味がわからない。確かにどっちも怪我しまくりだけど、3号の頬にあるのカットバンじゃなくてガーゼなんだよなんて言えねぇぇぇぇ。
けどこのアイリール?とやらのお陰でわりと二人の怒りが収まっているっぽい…。すごく助かる。
「ふっ、あと3号も、死者を忘却の彼方に葬ることは殺す行為に匹敵する。すなわち…!愚案であるということも肝に免じておけ。」
「は…はい。」
ほぼ何言ってるのかわかんなかった。忘却の彼方に葬るってなに、めっちゃかっこいい表現するじゃん。もうちょっと分かりやすい表現して…。
「つまりアイリールさんの言いたいこととは…なんですか…?」
「ふふっ、つまりアイリールの言いたいことは、3号の自然の生き方を変えるのはやめなさいって92号に言いたいだと思う。3号にも、亡くなった人を忘れようとする行為は二度殺す行為となる、だからその案は愚かである、その事を心に刻んどけって言っているんだと思うわ。」
「86号か、フッ…某中々いいことを言っただろう?」
「この間の文学作品の台詞使いたかったのね…ふふ。」
「その話はやめろ!人の荒を他人に打ち明けるなんてなんて残虐非道な行為だ!!!」
二人は仲良さげに話している。雰囲気は一気に崩れ、ギスギスとした空気は変わったが、3号も92号
もなんだか満足はいっていないようだ。
3号の気持ちも最もで、92号は私のことを気にかけてくれている。3号だって気にかけてくれている。
3号のいいことに賛同はしたくない、けれど間違ってもいない。3号は逃げることを選べといっているのだろう。
「それで?3号は…、いや、シャルル少年。」
「なんでわざわざあだ名なの」
「その名があなたにふさわしいわ。あなたは、優しいのが傷ね。けど、2号の気持ちを考えれないシャルル少年は愚人ね。」
「は」
「アイリールは、3号の優しさが仇になって2号の気持ちを考えれなくなっている。その行為に対して3号は愚かだって言ってるんだと思うわ。」
3号に対して少しキツイ言葉だけど、あくまで中立だろうけど、アイリールは優しさか。…ていうかシャルルってなに…。
でも、どうしようか。二人の関係が悪くなるのは任務に支障が出るし、二人が仲悪いところなんて見たくない。どうしよう…。
「あら、2号何が言いたげね。」
「え…?!」
「なに、2号。」
「2号さん、さっきから黙ってばっかりでさっきからずっとそんな調子ですよ。」
92号もいらだちからか私に対しても少し手厳しいというか。でも、どうしてもいやだ。3号と92号、二人の肩をガッと掴んでどっちもヘッドロックする。
二人は混乱して何?!と叫び声をあげ、見事にハモっていた。雰囲気を崩さないために私は昔みたいな笑顔を浮かべるが、二人はその笑顔の意図が分からないみたいで、困惑していた。
「えーっと…、ほら…。わ…、わわわわわー!!私のために争わないでー!…なんちゃって。」
場の空気が凍った。あれ、今言うべき台詞ではなかった?それともこの台詞が古すぎて二人ともドン引きしちゃった…とか…。
「2号さんちょっとはなして…。」
「うん、僕も離して欲しい。」
「あ…、ごめん。」
二人の反応にウケが悪くてどうしていいのかわからない。恥ずかしい、なんかもう逃げたい。3号は私の顔をじっと見てるしどういう感情なの?!
「ぷぷっ…ふふふっ……に…2号っ…ふふ…。」
3号が遅れて笑い92号も堪えた笑いがやってきた。思わず私も笑いそうになってしまう。
「…わ、…笑っ…た?え、笑ったよね?」
「笑いましたね。」
「笑ったわね!」
「ふっ…シャルル少年って変な笑い方ね!!」
3号が口元を抑える。2号も笑ってると言い返された。ただ3号が笑った顔だけでどうしてこんなにも笑ってしまうのだろう。
コメント
1件
うわ〜〜〜っ第30話、重すぎて胸がギュッてなったよ…!!😭💔 リベルとフェノールの過去、まさか“執行人”だったなんて…。ずっと“裏切り”って言葉に苦しんでたんだね。最後にトコイに「頑張れよ」って言えたリベル、すごく強かったと思う。敵にさえ優しさを返せるって、心の底から救われてほしいよ…。 でも後半の3号と92号の喧嘩&アイリール登場で空気変わったのめっちゃ好き!「私のために争わないでー」からの2号のフォロー、笑いもあって温かかった!! このバランス、天才すぎるよ天脳音月さん…✨ 次が待ち遠しいです!!