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そして次の週の金曜日がやってきた。


花純はいつものジーンズ姿ではなく、

グレーのストレッチパンツに白のブラウスを着て出勤した。

本社時代によく着ていた組み合わせだ。


それを見た優香が言う。


「あら花純ちゃん、今日はなんか大人っぽく見えるー」

「今日は上での仕事がありますから」

「あっ、そうか。いよいよ今日からね、しっかりね」

「はいっ」


花純は元気よく返事をすると、すぐに朝の業務に取り掛かった。


九時になると、いつものように山本がニコニコしながら生花を運び込む。


「おはようさーん、どっこらしょっと。今日はちょっと量が多いぞ」

「あっ、山本さーんおはよう、今日もよろしくねぇ」

「おはようございます」


優香と花純が笑顔で挨拶をする。

山本は台車から花を下ろしながら言った。


「花純ちゃんはアレだって? このビルの庭園の改良に取り組むんだってな」


花純は山本がなんで知っているのだろうびっくりした。


「ごめん花純ちゃん、山本さんに言っちゃった」

「ああそれで…」


花純は納得したようだ。


「実は今日が初日なんです。ちゃんとお役に立てるかどうか心配で」

「なぁに、心配なんぞいらないさ。だってよぉ、花純ちゃんは植物の女神なんだから」

「女神?」


花純は不思議そうな顔をして聞き返す。


「ああ女神だ。女神ってぇのはな、周りの人間を幸せにするんだ。つまり花純ちゃんは植物の女神だから植物達を幸せにするって訳さ。花純ちゃんが植物の世話をするとどれも生き生きと蘇るだろう? ほら、あそこにあるおっきなハイビスカス、あれはなぁ花純ちゃんがここへ来るまでは元気がなかったんだ。でもよぉ、花純ちゃんが世話するようになってからは生き生きとしてる」


そこで優香が言った。


「どうせ私の世話の仕方が悪かったですよーだ」


優香は怒ったようにほっぺたを膨らませていたが本気で怒っているわけではなさそうだ。


「ハハッ、まあつまりそういう事だ。花純ちゃんの植物を愛する心が、仕事にもいい影響を与えるってぇこった。だから心配しないで胸を張って頑張れ」


山本の言葉に花純の瞳が潤む。


(なんて素敵な言葉を投げかけてくれるんだろう……)


花純は左遷されてから一度も泣いていなかったが、山本のあたたかい言葉に急に涙腺が緩んでしまった。

そしてとうとう泣き出した。


「おいおい泣くな泣くな…おりゃあ褒めてんだぞ? 褒められて泣く奴があるか…」


山本はオロオロしながらポケットに手を入れてシワシワの汚いハンカチを花純に差し出した。

すると優香が慌ててティッシュの箱を手に取り花純に差し出す。


「山本のおっちゃんの汚いハンカチで目なんか拭いたら結膜炎になるわぁ。そんな事になったらうちの大事な戦力一人欠けるんですけどー?」


優香は山本を睨みながら言う。

すると山本がおどけた顔で言った。


「相変わらず優香ちゃんはきっついねぇー。そんなんだから超美人でも嫁の貰い手がないんだよ、ワッハッハッ」

「ほっといて! 私は結婚出来ないんじゃなくて、あえてしないんだからっ」


優香はまた頬を膨らませて山本に応戦する。


そんな二人を見た花純は、鼻の頭を赤くしたままクスクスと笑い始めた。

オープン前のフローリストには、三人の楽し気な笑い声が響き渡っていた。



その日フローリストでの仕事を終えた花純は、優香と共にロッカーへ行き荷物を取り出した。

二人は店にいるパートの洋子とアルバイトの杉下に挨拶をして店を出た。


「私は次郎ちゃんの所でコーヒーを飲んでから帰るわ。じゃあ花純ちゃん頑張ってね」

「はい、行ってきます」


花純は優香に見送られながら、エレベーターへ向かった。


先日専務の優斗が臨時の社員証を持って来てくれたので、今日は直接最上階まで行ける。

花純は少し緊張した面持ちでエレベーターに乗ると、49階のボタンを押して最上階へ向かった。


ガラス張りのエレベーターからは夕暮れ時の街並みが見える。

高い位置から街並みを眺めていると本社で働いていた時を思い出す。

物思いに耽っていると、エレベーターはすぐに最上階へ到着した。


エレベーターを出た花純は廊下を進んで副社長室へ向かった。

副社長室の前に着くと一度深呼吸をしてからドアをノックした。


前回はドアの向こうから女性秘書の声が聞こえたが、今回はいきなりドアが開いた。

そこに立ってたのは副社長の壮馬だった。


「やあ、来たね。どうぞ」


いきなり副社長に出迎えられるとは思っていなかった花純は、慌てて言った。


「本日からよろしくお願いいたします」

「うん。こちらこそよろしく」


壮馬はそう言いながら花純を奥へ案内する。

副社長室へ入るとまだ誰も来ていなかった。


「あの…秘書の方は?」

「うちの終業時刻は17時なんだよ。だからさっき帰った」


それを聞いて花純は納得する。


「そこに座って楽にして下さい」

「失礼します」


花純は広い会議テーブルの一番端に腰を下ろした。

クールな御曹司はフラワーショップ店員を溺愛したい

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コメント

4

ユーザー

山本のおっちゃん良い事言う✴️‼️✴️‼️ 花純ん応援団📣良いね(≧∇≦)b

ユーザー

山本のおっちゃん、ええこと言うなぁ〜花純ちゃんの植物🪴への愛は半端なもんじゃないからね‼️ 臨時社員証で直接役員フロアへ…女豹麗子は17時で終わり…ちょっとホッとした。

ユーザー

いよいよ庭園プロジェクトがスタートしますね....ワクワク🌳🎄🎶

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