「もしかして……アカネちゃん?」
目の前に立つ獣人は、長い赤髪がふわりと風になびき、その色は私と同じ夕日のように鮮やかな赤色。
その髪の間からは、私と同じ特徴的な大きな耳がぴょこんと飛び出しており、彼女の顔は、どこか幼さが残る柔らかな印象。
まんまるのほっぺたは少しふっくらしていて、大きな赤い瞳だ。
それに私の名前を呼んだ!間違いない、ひめちゃんだ!
「なんだぁ?このねーちゃんの友達か?」
「お、かわいーじゃん」
それはそれとして、あまり、かんばしくない状況ですね。
「こんな真っ昼間っからナンパですか?暇なんですね」
「あ?」
相手を睨みつけながら煽る。
昔の私なら絶対にしていない事だ。
だけど、私は身も心も強くならなければダメなんです!
それがお姉ちゃんだから!
「お相手しますよ」
「いい度胸してんじゃねぇか!言っとくが女相手だからって俺らは容赦しねーぞ?」
「そうそう!俺達はあの泣く子も黙る【熊さん組】の一員なんだからよ!」
「聞いたことありませんね、どこの組か解りませんがアナタ達のような獣人を置いてる所ならよほど能力の低いボスなのでしょう」
「てめぇ!言わせておけば!」
そういって顔を真っ赤にした一人が、殴りかかってくる。
……………
「な!?」
「あくびが出ますね」
遅過ぎますね、こんなひ弱なパンチ……相手は冒険者でもなさそうです。
「な!?」
「覚えておいてください」
「__っ!?」
私は殴りかかって来た獣人の1人の服を強引に掴み後ろで援護をしようとしていた2人組の所へ投げ飛ばし当てる。
「その程度の攻撃では小型の魔物ですら倒せませんよ」
「く、くそ!おぼえてろ!」
あら、もう帰るんですか……張り合いがないですね。
「さようなら〜」
手を振っていると私の旧友。
ひめちゃんが驚いている。
「す、すごい」
「フフッ、朝飯前ですよ……それよりも、久しぶり!ひめちゃん!」
「アカネちゃんも!」
2人で手を取り合う!嬉しい!
こんな奇跡あるんだ!
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場所を変え、私たちは近くにあった《にゃんにゃん珈琲》と書かれた小さな喫茶店に来ていた。
お昼ご飯の時間は過ぎているのでお客も少ない。
「改めて!さっきはありがとう!あの人たちしつこくて……と言うか!アカネちゃんいつの間にそんなに強くなったの!?」
「私はそんなお礼を言われる様な事してませんよ、少々……色々ありましてね」
「そ、そっか」
おっといけない!久しぶりに会ったのに暗い雰囲気になりそうです。
「それよりビックリしました!今日この国に来たんですけど、まさか、初日でひめちゃんに会えるなんて!」
「そう!私もアカネちゃんに会うとは思わなかった!しかも友達と喫茶店なんて初めて!」
「あれ?初めてなんですか?」
「う、うん、その……色々あって」
「フフッ、私と同じセリフですね」
「あ、ホントだ」
2人で笑い合う。
ひめちゃんは私が奴隷になる前に家畜のお世話をしていた頃、牧場に迷い込んで来たことがあって、歳も近いしお互いに感覚が似てるので直ぐに仲良くなった。
「本当に……良かった……」
「ひ、ひめちゃん?」
ひめちゃんが泣き始める。
「私、牧場に行ったけど居なくて……それで家にも行ったけど……」
「……」
そうか……奴隷になったのは突然でしたから……
色々と探したり、調べてくれたのでしょう……
「……ひめちゃん」
「ごめんね、変な雰囲気にさせちゃって」
「ううん、それより__」
私は唯一の友達に今までの事を“全て”話した。