私の話を聞いて、ひめちゃんは複雑な表情をする。
「その……なんて言ったら良いのか解らないけど……大変だったんだね……アカネちゃん」
「大丈夫ですよ、そんなに暗くならないでください、今は大切な人も出来て幸せです」
「その大切な人って特別な力を持ったリュウトさんって人だよね?」
もちろん、勇者の事を話も話している。
友達に隠し事をする方がいけないことですよね。
「はい!素晴らしい人です、今は子供みたいな立ち位置の“家族”ですけど、いずれは__」
「もうっ、説明する時に何度も聞いたけどゾッコンしすぎ!嫉妬しちゃう!」
「あらら、これは失礼」
「フフフ」
「えへへ」
2人で笑いあう。
私は昔より性格も見た目も変わってるはずなのにすぐに受け入れてくれた。
友達って……いいな。
「それと、敬語じゃなくていいよ?私たち友達なんだし!」
「う……うん、わかり、……わかった!」
「うん!よろしい!」
敬語は奴隷時代の時に小さい頃から叩き込まれたのでこの切り替えは難しそうですね。
妹ちゃんの前なら自然に出来るのに……
「そうだ!リュウトさん手続きが終わるまでこの国を案内するよ!」
「ほんと?ありがとう!」
元々リュウトさん達が来るまでいろいろな情報収集をしようとしてたので本当に助かる。
「でも、ごめんね?ちょっと今日はこの後用事があるんだよね」
「大丈夫ですよ、それならまた明日の朝、ここに集合でどうですか?」
「うん、そうしよ!ちなみにここの宿がオススメだよ、じゃぁまた明日ね!」
「はーい!」
そう言って私はヒメちゃんから地図の魔皮紙をもらい、手を振って見送りをした。
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森の入り口から少し離れた場所に、暗い森が静かに広がっていた。
木々は高く、冷たい影が地面を覆い尽くす。
風に揺れる葉音だけが響き、奥へ進むごとに闇は一層濃くなっていく。
不気味な静寂が広がる中、獣人の女性は呟くように声を出す。
「見つかっちゃったか」
その声と共に闇の中から黒いコウモリの獣人が3人出てくる。
「「「「…………」」」
そのまま3人は“姫”の前で膝をついた。
「“愛染の姫”様、困ります、この様に勝手に城を出られては__」
「黙りなさい、この事をお母様は?」
「…………ご存知かと」
「……まぁいいわ、今回は出てきた甲斐があって特ダネ情報が手に入ったからそれを手土産にしますかね」
「情報?御言葉ですが私どもはその線のエキスパートです、どこの馬の骨から聞いたか解りませんが、ここ最近その様な大きな情報は__」
「あ?」
その瞬間、姫から放たれた魔法は一匹のコウモリの獣人の頭を吹き飛ばした。
「!?、姫様!何を!?」
「私の“大切な家族”を卑下に扱った結果だ、私の機嫌が良くて命拾いしたなお前達……次は種族ごと消す」
「し、失礼しました」
動物とは簡単だ。
強いものが上に立ち、弱いものは従う、そして《愛染の姫》は圧倒的な前者であった。
「よろしい、ではお前達に早急にして欲しい事がある」
「な、何でしょうか?」
「“リュウト”という人間の入国を阻止しろ」