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それからは孤児院の敷地内でエレメントと追いかけっこの日々っす。もちろんここだけじゃなくって宿でも道端でも隙を見つけたら襲い掛かるっすけど、捕まえられないし私は首ねっこ掴まえられるし。
そして今日は黄色い小鳥もいるっす。赤と黄。どっちもそんなには離れずに私の前を飛び回るっす。
追いかけて追いかけて、子供たちは「お姉ちゃんなんで走り回ってんの?」とか聞いて来るし。見えない人からしたら奇行でしか無いっすねこれ。
ダリルさんはいつも大きな木の下で足を伸ばして座って読書っす。
今日はとうとう青い小鳥も追加っす。
赤、青、黄。
なんで指先1つかすりもしないっすかー!
「エイミアちゃん頑張れーっ!」
今日はダリルさんの膝の上にミーナちゃんがいるっす。
ダリルさんの持つ本は絵本になっていてそれをミーナちゃんが見てるっす。
「ミーナちゃん! 教えて欲しいっす。どうしたら捕まえられるっすかー⁉︎」
超常な彼女なら答えを知っているはずっす。
「うーん。なんでエイミアちゃんは魔術士になりたいのっ?」
「え?」
今更な質問っすけど何でってのは確かに聞かれていないっすね。
「ラビ種には魔術士がいないっす。みんな運動の方が得意っすから。でも私は魔術士に憧れてるんすよ」
「何で魔術士がいないの?」
ミーナちゃんはかわいい目をぱちぱちさせて聞いてくる。
「何で? みんな魔術が苦手で運動が得意だからっすね」
「何で苦手なのっ?」
困ったっす。子供特有のなぜなぜどうしてがここにきてやって来たっす。
「何でも何も……そういうものっすよ。ラビ種ってのは」
そうっす。みんなそうして受け入れているっす。
「でも魔道具を使えばちょっとくらいは使えるよっ」
そうっす。全くダメなんてないっす。
「ラビ種はね、ステータスがピーキーなんだよっ!」
……ピーキー?
「もともと少なめのステータスの総量を素早さに極振りして、他にも生命力や防御なんかに振った結果、魔術特性が極端に低いんだよっ。つまり、相性最悪ってことっ」
ステータス? 極振り? いや、何となく分かる気がするっすけど──それじゃあ。
「無駄な努力お疲れ様ってとこかな?」
「魔術士に、なれる、なれない、なれる、なれない、なれる、なれ……な、い」
花びらは6枚だったっす。
もういじけるしかないっす。
ミーナちゃんが言うならもうそういうことっすよ。
あの子は普通の子どもじゃないっす。私たちの知らない事も知っていて、導けるような存在っす。別次元。強いとか弱いとかじゃなくて同じ舞台にはいない、ようなそんな。
そんなミーナちゃんが言うならっす。
ここまできて、私は結局は諦めるしか無いっすか。