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「…… ?」
乱れる息のまま、状況がわからず体がフリーズする。何が起きたのか理解出来ない。今のはなんだったのだろうか?
ベッドの上で倒れるカイルの様子をそっと伺うと、どうやら彼は気絶しているみたいだった。
「何…… が、起きたの?」
乱された夜着を整えながら状況を振り返って考える。手から発せられた眩しい光と不思議な音。そして倒れるカイルの体。
「もしかして、魔法ってやつ?今のも」
自分の髪を束で掴み、それを見る。
「私の髪と目って、黒だよね」
生まれてからずっとそうだ。でも、当然の事を改めて再確認した。
残留思念で見た記憶の中で、濃い色は魔力の高い証だとカイルが言っていた。お猫様だって、魔法を使ってはいなかったが、潜在能力は高いと言われていた。という事は、私もやろうと思えば、魔法を使えるって事なのかもしれない。
「あれが、魔法か。——ははっ、すごい…… の、かな?」
実感があまり無かったが、貞操の危機が回避出来た事は確かだ。あまりの快楽にすっかり流されかねない状況だったから、本当に助かった。これで会ったばかりじゃ無かったら、こんなに好きだとアピールしてくる相手を拒否など出来ずに、最後までいたしていたと思う。
本当に…… 助かった。
ショーツが濡れて気持ち悪かったので履き替えたかったのだが、新しい物が何処にあるのか探してもわからない。思い当たる場所は一箇所だけあったのだが、その部屋は鍵がかかっていて開かない。魔法を操って開ける事が出来れば良かったのだが、ダメ元で試してみても、残念ながら開ける事が出来なかった。
さっきは必死で運良く使えたというだけで、まだ自在に何かを出来る程、私では魔法を使えないみたいだ。もしかすると、スポーツを徐々に習得するみたいに、魔法というものは練習が必要なのかもしれない。
諦めて、ショーツだけ脱ぎ、バスタオルに包んで置いておく。夜着の中には何も穿いていないのがひどく心許なかったが、私は諦めて休む事にした。
さて、残りの問題は何処で寝るか、だ。
ソファーで寝ては休めそうにないが、ベッドにはさっきまで野獣と化していたカイルが倒れている。
普段の自分だったら迷わずソファーを選ぶのだが、今は色々あったせいで酷く疲れていた。そうなると、やはりベッドで体を伸ばして休みたいという気持ちが捨てきれない。
「…… 起きない、よね?」
そっとカイルに近づき、肩をつつく。思い切って彼の大きな体をベッドの上で横にコロンと転がしてみても、カイルは目を覚まさなかった。
その事に安堵した私は、カイルの体に布団をかけた。そして空いているスペースに潜り込む。出来るだけ端っこに寄り、彼から距離を取った。
ベッドへ横になると、さっき起きた事を思い出してしまいドキドキしてきた。——が、疲れていた体はいとも簡単に私の意識を眠りの海へと引き込んでいったのだった。