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「…… あれ?」
瞼を開けると、見慣れたベッドの天蓋が視界いっぱいに広がった。いつの間にか僕は眠っていた様だ。 どの辺りから寝てしまっていたんだろう?さっきまでとても幸せな思いをしていた気もするのに、頭がぼぉっとして上手く思い出せない。
——イレイラがバスタオルで髪を拭きながら浴室から出て来た事まではハッキリ覚えている。僕が髪を手入れして、彼女の体から誘う様な甘い香りがしてウットリしていた事も。
「…… そうだ。確か、あの時イレイラの年齢を聞いて——」
その辺りからお酒でも飲んだ時みたいに頭の中がふわふわしてきて、そのままの勢いで彼女をベッドに運んだ気がする。
白いシーツに横たわり、黒くて美しい髪を散らす姿に神々しさを感じた辺りから、記憶がひどく曖昧だ。今まで何度も何度も…… 毎夜夢見ていた行為に手を染めた気がするけど、現実味がない。何処までが現実で、何処からが夢なのか判断がつかないまま、体を横に向ける。
「…… イ、イレイラ?」
すぐ隣でスヤスヤと眠るイレイラがそこに居た。
イレイラが傍に居る。って事は、僕は未遂で我慢出来たのか。
そうであると知り、僕は安堵の息をついた。あんな事を現実で実行していたら、絶対に一ヶ月は口を利いてはもらえない。そんな事になったら辛過ぎて死んでしまう、今度こそ本当に。
僕からしたらイレイラはよく知った『伴侶』だが、前世の記憶が戻っていない今の彼女からしたら所詮僕は『赤の他人』だ。触れさせてはくれるから嫌われてはいない事が推測出来るが、残念ながらそれ以上の存在では無いだろう。
昨日の今日で、僕を好きになれという方が無理な話だという事くらい、流石にわかる。
だけど、さっきは少し、その考えが飛んでいた。見た目から『まだ子供だ』と思っていたイレイラが、此処の基準ではもう成人しているって知って、『あ、大人なら抱けるや』と正直思った。そう思ってしまうくらい、色々と溜まっていたし、悶々としていたから。現在進行形だが、今は何とか堪えられる。——と、思う。
「寝顔、やっぱり可愛いなぁ…… 」
夢見心地に呟く。寝顔の可愛い頰を撫で、しっとりと柔らかな肌をウットリと見つめていると、視界の隅に…… 胸の谷間が見えた気がした。
直視していないのに、ゴクッと喉が鳴る。ゆっくり視線を下げ、それを直視した瞬間、天国の情景を見た気分になった。
「うわぁ…… 」
低い身長に似合わぬ大きな胸が、体を横向きにして眠っているせいでガッツリ綺麗な谷間を作って、少し大きな夜着から見えてしまっている。寝る為に下着を着けていないのか、胸の先が少しだけ布を押し上げていて色っぽい。
「鼻血出そう…… 」
興奮し、今にも手が伸びそうになるのをグッと堪え、うつ伏せになって頭を抱える。
(何て拷問だ、コレは)
猫の姿だった時の彼女も『最高だ』と思っていたが、この姿も自分の好み過ぎて辛い。前はただただ癒しに溢れた存在だったのが、生まれ変わった途端にやらしさに溢れるとかもう、嬉し過ぎて勘弁して欲しい。
「よく耐えた、自分…… 」
さっきの自分と、今の自分を手放しで褒めた。こんな魅力的な体を惜しみなく僕の横に晒しているのに、手を出さないでいるなんて褒めたくらいじゃ足りないと思う。
「——もう一度寝よう、うん。もう無理だ、色々と」
そう決心し、僕は自分の瞼に掌を当て、直ぐに眠るべく安眠の魔法をかけた。きっと今夜も、イレイラにしたい事を沢山してしまう夢を見そうだなと思いながら。