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「挑戦ってさ、なんであんなに怖いんだろうな」
蓮司は椅子の背に片腕を掛け、薄く笑った。
「俺だってビビるよ。新しいことやるたびに『やっぱ無理かも』って頭の中で何回も鳴る」
相談に来た大学二年の女性は、指先をそわそわ動かしながらうなずいた。
「わかります。やる前から、失敗したらどうしようって……」
「でもさ」
蓮司はテーブルに指でリズムを刻む。
「怖いって、意外と“動き出す準備ができてる”サインでもある。
本当にやる気なかったら、怖いとも思わない。
ただの他人事なら、心臓なんて跳ねないだろ?」
女性は目を見開いた。
「……そういう考え方、したことなかったです」
「俺なんかさ、中学んときバンド始めるって言ったら、
『お前にできるわけない』って友達に笑われた。
でも結局、笑ったやつらは何も始めなかった」
蓮司は肩をすくめた。
「挑戦して転んでも、少なくとも一歩は動いた証拠だ。
動かなきゃ、笑うやつにすらなれない」
沈黙が一瞬、部屋を包む。
女性は小さく息を吸った。
「怖いままで、やってみてもいい……のかも」
「いいんだよ。怖いままやるやつの方が、かっこいい」
蓮司はにやりと笑った。
「その怖さ、ポケットに突っ込んで持ってけ。
案外、挑戦の切符みたいなもんだから」
相談室の窓から、淡い午後の光が差し込む。
女性の表情に、かすかな決意の色が宿った。