コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「なぁ、俺ってオダガワショーに似てるのか?」
「うん、似てると思うよ」
母に気付かれないように、ヒソヒソと会話を交わした。
居間に入ると、奈美は母と一緒に仏壇に線香をあげる。
「お父さん、奈美が初めて男の人を連れてきたわよ。お父さんの若い頃に負けないほどのイケメンよ!」
母は手を合わせながら遺影の父に語りかけている。
(語り掛けるのはいいんだけど、豪さんの前でそんな事を言うのは恥ずかしいよ、お母さん……)
「豪さんも、父に線香をあげてくれませんか? きっと喜ぶと思うから……」
奈美が促すと、彼は仏壇の前に向かい、線香をあげてしばらくの間、手を合わせてくれた。
母に、豪からプロポーズされた事と同棲したい事を伝えると、あっさりと許可してくれた。
「全然いいわよ。結婚前に同棲する事はいい事よ。結婚生活の予行練習はね、とぉぉ〜〜っても大事よ? それにしても豪さん、あなたモテるでしょ〜?」
母はニヤっとしながら、豪にツッコミを入れる。
「あ…………いや、僕は全然……」
彼は引きつりながらも笑顔を貼り付け、母に対応している。
「またまたぁ! 謙遜しちゃって〜!」
母の脱線暴走トークが始まろうとしていた。
奈美は『お母さん、暴走しないでよね!』と慌てて釘を刺すと、彼は困ったように苦笑する。
「真面目な話に戻るけど、私は奈美が愛する人と幸せになってくれれば、それでいいのよ。お父さんも生きていたら、同じ事を言うと思う。二人で一緒に幸せになってね」
母が奈美と豪に穏やかな口調で話すと、彼が姿勢を正し、深々と一礼した。
「僕が奈美さんを必ず幸せにします。今後とも、よろしくお願い致します」
「お母さん、私をここまで育ててくれて、本当にありがとう。豪さんと二人で幸せになるね」
自分の人生を振り返ったら、瞳の奥がジワジワと熱くなり、涙が零れそうになってしまう。
それを隠すように、奈美は思わず母を抱きしめていた。
「もう! 奈美ったらどうしたの? まだまだお子ちゃまねぇ……」
母は、奈美の頭を撫でてくれるけど、母も鼻を啜りながら泣いている事に、彼女は気付いた。