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願いの叶う……西の方。ギルドで見かけたその依頼について情報を持っている者はいなさそうだった。それどころか話に取り合ってもらえず、風呂に入れと言われる始末だ。確かに汚れは酷いな。




僕は宿に泊まるにも何するにも一文なしだ。仕方なくこの小さな街のそばを流れる小川で水浴びをする。


川の水は赤茶色に染まり、何回もすすいでやっと色がつかなくなった。思えばここまで何回の自殺を試みたか分からない。


直近でも飛び降りて爆散したり、野犬に食い散らかされたりしたのだ。それがどういう仕組みか繋がって立ち上がっていたとしても汚れは相当なものだろう。鼻をつままれても仕方ない。


水面に映る顔は村にいた頃と変わらない。


ただ死ねない何かになったことだけ。いや、それまで死んだこともないのだ、元からと言うこともありうる。


だが、あの行商人たちの会話を思い出せば奴らが関わっていることは間違いない。


だとすると、あの肉ということになるだろう。しかし……いや、僕だけというのはあの1/162という言葉と実験の成功ということから、皆がみなこういう結果になるわけではない、むしろレア。


なぜ僕なのか。いや、なぜ僕の住んでた村がそんな目に遭わなければならなかったのか。


憤りを感じつつ、それでも案外冷静な自分に腹が立つ。




「きゃっ」


そんな可愛らしい声がして振り向くと、川に洗濯にでもきたのであろう20歳過ぎくらいの女性がいた。


「ああ、済まない。ここは君たちの洗濯の場だったか。もう終えたからすぐに服を着るよ」


そう言ってそそくさと服を着る。


立ち去ろうとする僕を女性は引き止めて、僕のボロボロの服を指差して「旦那のお古で良ければ」と家に誘ってくれた。




「ありがとう、サイズもちょうどいい」

「いえ、なにか訳アリなんですか? とても苦労をなさっているようですが」


その優しい言葉に僕は答えに詰まる。


何を話せば良いのか分からないからだ。


「何か深刻な事情でもあるのですね……良かったら夜までこの家で待っててくれたら、旦那も帰ってきます。その時に相談してはいかがですか?」

「旦那さんに? いえ、そんなご迷惑をおかけするわけには──」


好意は素直に嬉しい。だが誰かにどうかできるとも思えない。


「いいえ、それに困っている人には手を差し伸べるのが旦那の信条でして。うちの旦那は末端ですけど国の聖騎士でこの街の守護の任に就いているのですよ」




聖騎士。それはこの国において魔獣を討伐しうる実力と加護を備えた者達のうち、国に仕えてその称号を与えられたもののことだ。とりわけ邪悪を討ち滅ぼすという。


そんな凄いのなら、なぜ村の危機に駆けつけてくれなかったのか。


それが無茶な話なのはわかっている。聖騎士の数はそれほど多くはない。ある程度の規模の街には常駐させたりしても、僕のいた村のような小さなところまでは手が回らないのだ。

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