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車はレインボーブリッジを走っている。
遠くに見える変わったデザインの建物は、某テレビ局だと知った。
海には何艘もの小型船が浮かび、橋の下を往来している。
「奈美もテレビで見た事あるだろ? 夜になると、レインボーブリッジもライトアップされるの」
「あるよ。パールのネックレスみたいで綺麗だよね」
豪と出会ってから半年以上。
ようやく奈美は、彼と普通に話せるようになってきた。
まだ恥ずかしくて、砕けた言葉も素っ気ない感じではあるけど……。
「そうだな……。なら帰りは、ライトアップされているレインボーブリッジを渡るか」
「本当? 楽しみ!」
白のSUVは、いつの間にか高速を下り、お台場周辺の一般道を走っていた。
遠くに、ゆりかもめが走っているのが見える。
駐車場は満車ばかりだけど、海浜公園の近くの駐車場が空車表示になっていたので、そこに車を止めた。
お台場に到着したのは、午後三時を回っていた。
車から降りると、仄かに潮の香りが漂い、海の近くに来たんだ、と実感する。
「奈美。腹減ってないか?」
「まだ大丈夫だけど豪さんは?」
「小腹が空いたな。けど、何か食うにしても中途半端な時間だし、公園に向かってみるか」
彼は奈美の手を取り、海浜公園へと向かった。
西の空に太陽が傾き始め、海は黄金色に染まりつつ陽光に反射し、キラキラと輝きを放っている。
人口の砂浜を、豪と奈美は手を繋ぎながら、ゆっくりと歩く。
レインボーブリッジは、まだライトアップされていないけど、周りにはカップルが多い。
このまま暗くなるまで待っているのだろう。
乾いた潮風が二人を包み、吹き撫でていく。
「景色を見ながら話すだけの時間って、すげぇいいよな。これは奈美と過ごすようになってから思うようになった」
彼がレインボーブリッジを見やった後、奈美は眼差しを向けられる。
「私と過ごしてからって、いつから?」
「まだ口淫だけの関係だった頃、ドライブで海に行っただろ? 砂浜を手を繋ぎながら歩いて、時々海を眺めながら会話して。こういう何気ない時間って、すげぇいいなって思ったんだよな。そう思うのは、相手が奈美だからだ」
豪が奈美の肩を抱き寄せ、髪に唇を落とすと、彼は何かを思いついたように、そうだ、と呟いた。