深澤と食堂で別れたあと、俺は肩を落としながら校舎の廊下を歩いていた。
💙「……なんか、今日は散々だったな」
目立たないように過ごすつもりだったの に、思わぬかたちで注目されてしまった。
周りからの視線は痛かったし、囁かれる声も耳に残って離れない。
気疲れが一気に押し寄せて、息をつく。
💙(このまま教室に戻るのもしんどいな…)
少しでも静かに、一人になれる場所に行き
たくて、俺はふと思い出す。
図書館……あそこなら、誰にも邪魔されずに
落ち着けるかも。
俺は図書館へ足を運んだ。
──
重厚な木製の扉を開けると、ふわっとした
静寂と、微かな紙とインクの匂いが鼻をく
すぐる。
まるで美術館のような天井の高さと、磨か
れた床。
書棚のひとつひとつも、見たことのないよ
うな金属と木の装飾が施されていた。
💙(……やば。ここ、異世界かよ)
照明は柔らかく、空調も完壁。
誰もいない静かな空間、俺は深く息を吐く。
💙 (ここ、いいな。人少ないし)
図書館の隅の隅、静かで、日当たりがよい席に座り 、勉強道具を広げた。
少しでも遅れないようにと、授業の復習に
取り組む。
数分くらい集中して取り組んでいると──
??「それ、 違うよ」
不意に背後から落ちた声に、ビクリ と体を跳ねさせた。
振り向くと、 そこにいたのは──阿部亮平。
SnowManの一人だ。
落ち着いた眼差しと知的な空気を纏った少年。
淡い光に縁取られた姿が、どこか絵のように綺麗だった。
─阿部亮平─
高等部1年。
SnowManイチのインテリ。
阿部医療財団グループの跡取り としても知られ、幼少期からあらゆる英才教育を受けてきた。
天才と称される頭脳を持ちつつ、どこか 飘々としていて掴みどころがない。
💙「え……?」
💚「急にごめんね。ちょっとノート見せてもらっていい?」
💙「……はい」
💚「この公式、使い方ちょっと違うよ。ほ
ら、こうしてみて?」
阿部は翔太のノートを覗きこみ、さらさら
と式を直す。
解説の声は驚くほどわかりやすく、頭にす
っと入ってきた。
💙「……なるほど。そういう考え方もあるんですね」
驚いたように咳くと、阿部はふっと笑た。
💚「うん、渡辺くん頭いいね。ちゃんと理解
できてるし、飲み込み早いじゃん」
💙「……ありがとうございます」
ほっと胸をなでおろすと同時に、俺の中 にふとした疑問が浮かんだ。
💙「あの、なんで俺の名前を……?」
💚「あー、ふっかから少し聞いてるよ『最近面白い子がいる』ってね。」
💙「……ふっか?」
💚「深澤辰哉のあだ名ね。今日、食堂で一緒に食べてたとこ見たよ。さっき廊下ですれ違ったときに、『庶民くんの名前、渡辺っていうんだ』って楽しそうに話してたよ」
💙「そ、そうだったんですね…」
苦笑いを見せた。
💙 (名前、教えなかったらよかった…)
💚「ふっかが俺ら以外の誰かと一緒に食堂行くの、珍しいんだよね。しかも上の階じゃなくて、わざわざ下の階まで降りてるって」
また距離を詰められたような気がして、俺は自然と少し警戒の色を帯びた表情になる。
💚「そういえばさ、この席——」
阿部さんがふと周りを見回しながら言う。
💚「ここ、俺のお気に入りなんだよね。静かで、ちょうど光も入るし、いいでしょ」
💙「……えっ、すみません。なんか、取っちゃったみたいで」
俺が慌てて席を立とうとすると、阿部さんは手を振って笑う。
💚「ううん、全然。むしろラッキーだったかも。一緒に勉強する相手がいるの、久しぶりだから」
そう言って席に座ると、自分のノートを広げながら翔太の手元をのぞく。
💚「ね、ここはこうした方が理解しやすいと思う。こうやって図にするとさ……」
阿部さんの教え方は本当に丁寧で、分かりやすくて、どこか楽しそうだった。
俺も自然とその空気に引き込まれて、少しずつ緊張が解けていく。
💙(なんか……思ってたのと違うかも。阿部亮平って……)
まだ、SnowManに対する警戒心は完全には解けない。
けど、不思議とこの人との勉強時間は、心地よかった。
💚「また、いつでも教えるからさ。困ったらおいでよ?」
そう笑う阿部さんに、俺は一瞬戸惑いながらも、苦笑いで頷いた。
💙「……じゃあ、また困ったときに」
阿部さんは思っていたよりも、柔らかくて、優しい人だった。
でも本音は──あまり関わりすぎたくはない。
まだSnowManには近づきたくないという思いもある。
💙(でも……この図書館、いいかも。阿部さんがいない時に、また来よう)
静かで落ち着く空間と、どこか少しだけ心が緩むような空気。
俺の中で、図書館という場所が「お気に入り」になりつつあった──。
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♡とコメント待ってます!
私事ですが、テスト期間に入ってしまい、更新が遅れます🙏
コメント
2件
あべちゃんはやっぱり優しいんだ✨💚