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「と言うことです」
八代の説明に、金原も龍も、成る程と、頷く。
「さすがと言っちゃ、さすが、ってとこですかねぇ、山根の親分も……」
龍は、詳細がわかったからか、少し安堵している。
「……で、八代?うちの仕切りは、どこまで入り込める?」
「はい、人足達のまとめは、変わらず、龍が。屋敷の方は……、ひとまず押さえておきたいだけのようで、まだ、はっきりとは、親分も……。具体的には仰ってはおりませんでした」
そうか、と、金原は八代へ言うと考え込んだ。
金原の屋敷を山根の親分が買い取った。神宮が、完成すれば、一体は門前町として、参拝の人々でごった返すはず。
そこに目をつけた親分は、商売様に土地を探していたようだった。
表だって動くと、誰かに先を越されると、原宿村一帯で、良さそうな土地はないだろうか、ハリソンに声をかけていたようだ。
そして、白羽の矢が当たったのが、金原の屋敷。
ハリソン曰く、宿屋にするにしても、飯屋にするにしても、融通が効く手頃な物件らしい。
挙げ句、当てが外れたら、誰かに貸せば良いと、ハリソンの実に安直な口車に親分は乗せられたようだった。
「まあ、うちが損してないのなら、別に構いませんがねぇ、なんで、社長差し置いて、ハリソンが話し付けてんですよ!ああ!それで、あいつ、原宿駅近辺嗅ぎ回ってたのかよ!」
龍は、いきなり現場に訪ねて来て、屋敷を売ったと言われては、たまげるどころの話しかと、ハリソン憎しとばかりに、ぶつぶつ言っている。
「まあ、そうだがな、ハリソンも、いなけりゃ、困るときもある。堪えてやんな。その代わり、ひとまず、人足達の住みかとして、まかない付きで使わせろと、親分に言っている」
使い道が決まるまで、空き家にしておくのも物騒。神宮完成まで、まだ数年はかかる。ならば、独り身、通いの人足達の住みかにして、金原商店に仕切らせると、八代は親分に話をつけたと言った。
「おお!なるほど!さすがは、八代の兄貴!」
「だから、龍、お前は、あちらへ今まで通り住み込んで、人足達をまとめあげろ」
へい、と、龍は、返事をするが、金原が慌てている。
「ふ、二人とも声が大きい!!」
「へ?社長?」
「龍、だから、お前、声がでかいんだよ!」
「社長、櫻子さんですね?」
すべてお察しとばかりに、八代がニンマリした。
う、うん、と、金原は、小さく返事をし、ばつの悪そうな顔をする。
「兄貴?」
「わかんねえーか?龍?櫻子さんのことだ、私が、賄いさんになります。なんて、言い出すに決まっているだろう?」
「ああ!!あり得る、あり得る!櫻子ちゃんの事だ!皆さんの、お食事の用意をします。なんて、言うわっ!いや、いけねぇーよっ!!荒くれ達の中に、櫻子ちゃん、放り込んだらっ!!!」
「だから!龍!声がでかい!あいつに聞こえてみろっ!行くと言い出すだろうがっ!」
1,983
#宵待ち亭
#夢
龍は、口元に手を当てて、金原へ向かって、こくこく頷いた。
「まっ、近所の婆さん連中雇えばいいでしょう」
仮に、原宿村一帯が、後々、栄えるとするなら、余計、地元と何かしら縁を残して置いた方が金原商店としても都合が良かろうと、八代は皮算用をしている。
「ああ、その辺のことは、八代、龍、任せた」
「はい、社長、櫻子さんには、分からないように、こちらも動きます」
八代も龍も、あざとい笑顔を作って、金原へ返事した。
そして……。紅茶で和んでいるはずの女達は──。
「ち、ちょっと!ヤスさん!それ本当かい!!」
お浜が、驚きの声をあげていた。
「だと、思ったよ!やっぱり、勝代のやりそうなことだ!!」
「いや、お浜さん、これは、あくまでも、あたしらの想像で……」
「だけど、勝代の産み月が合わないのは、事実なんだろっ!!」
身を乗り出してくるお浜に、ヤスヨとキクは、たじろいだ。
「……それに……勝代は、柳原の出入りの医者を使わず、わざわざ置屋が手配した産婆を使ったんだ」
「なんだい、そりゃ!!置屋ぐるみかいっ!!ヤスさんも、キクさんも、勝代と一緒に、柳原の家へ来たんだろ?だったら、置屋での勝代の動きも知ってるはすだ。勝代に男がいたかどうか、言っちまいな!珠子は、出ていったんだ、もう、隠すことはないんだよ、楽におなりよ!」
興味津々で、迫ってくるお浜の勢いに押されたヤスヨとキクは、つい、口を滑らせてしまたっと、うなだれた。