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一方、皇宮の城門前。
着の身着のままのヨハンセンをケイリクスに言われるがまま連行してきたグウェンダルは、地面に蹲ってめそめそと泣いている彼の肩にマントをかけてやった。
それから手を強引に引き寄せて革の袋を持たせる。ずっしりと重いそれには、平民が一年は暮らしていけるだけの金貨が入っていた。
「あなたは愚かな選択をした。けれどまだやり直せるはずです」
「どうやり直せって言うんだよぉ……俺に平民のように働けって言うのか? 汗水たらしてしょうもない小銭を稼げって? 言うのは簡単だよな。同情していい気になりたいだけだろ? お前も内心では俺のこと嘲笑ってんだろぉ!」
「あなたがしょうもないと言った額を稼ぐのに平民たちがどれだけ苦労をしているのか、よく知るいい機会になるでしょう。あなたは帝国を導いていくお立場であったにもかかわらず彼らを軽んじておられます。彼らが納めた税金で我々貴族や皇族が暮らしているのですよ」
「わかってんだよぉそんなことは! ぐちぐち説教垂れやがってぇこのやろう偉そうに!」
グウェンダルに怒り散らしながらも、ヨハンセンは革袋を胸に抱き締めて離さなかった。
「それにこれは同情ではありません。私はメリーティアのしたことは間違いだったと思っております。だからあなたにこれを渡すのです」
「なんでお前がメリーティアの代わりに俺に金を払うんだよ! まだ婚約者気取りなのか? メリーティアはっ、メリーティアは俺の……っ、うわぁあん!」
泣きじゃくるヨハンセンを置いて、グウェンダルはその場から立ち去る。
メリーティアは変わってしまった。幼い頃は天真爛漫で明るい性格で心根の優しい女の子だったのに、今では人を貶めて笑っている。まるで毒花のようだ。
ネビルやヨハンセンだけでは飽き足らず、次は皇帝ケイリクスを狙っているようだった。
メリーティアが人を傷つけて快楽を得るような人間だと思いたくない。
何が彼女をそうさせるのか。何が彼女をそこまで変えてしまったのか。
思い返してみれば、あの日抱かれにきたときからおかしかった。
絶対に何か理由があるはずだ。
どれだけメリーティアが悪女のように振る舞おうと、他人を陥れようと、いつかその手で人を殺めたとしても、自分は彼女を嫌いになれない。忘れることもできない。
一度愛した相手だ。今も愛している。
メリーティアが誤った道に進もうとしているなら、正してあげなければならないだろう。
彼女がわざと道を外れようとしているなら、共に歩んで支えてあげたい。
どれだけ拒絶されようと、グウェンダルはメリーティアを諦めるつもりはなかった。
ケイリクスを見つめていたメリーティアのまなざしを思い出すと、胸に言い知れぬ不安がこみ上げる。言葉とは裏腹に、そこには愛も情も感じられなかったのだ。
反対にケイリクスの瞳はどろどろと底なし沼のように愛欲に満ちていた。
もしメリーティアが本当にケイリクスのもとに行くつもりなら、全力で止めなければならない。グウェンダルの本能が警鐘を鳴らしている。
ケイリクスは底知れぬ、危険な香りのする男だ。
そうでなくとも、このままではいつの日か彼女の心が壊れてしまう。グウェンダルはそれが恐ろしくてたまらなかった。