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恋愛小説家の恋

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恋愛小説家の恋

第48話 - 第48話

222

2024年07月28日

#恋愛

#大人の恋愛

#イケメン

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

瑠璃マリコ

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222

瑠璃マリコ

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それから一時間ほどして理紗子が目を覚ました。

理紗子は起きた瞬間、今自分がいる場所がどこなのかがわかっていない様子だったが、急にハッとするとガバッとソファーから起き上がった。

「私寝ちゃってた！」

「おはよう」

理紗子が声の方を見ると、健吾がパソコンに向かっていた。

「ぐっすり眠っていたから起こさなかったよ」

「ごめんなさい、うっかり寝ちゃってた。そう言えば、あの女性はどうだった？」

「うん、思った通り話しかけて来たよ。驚いたのは、俺の友人の名前を話題に出してきてびっくりだよ」

「ええっ？　そのお友達は彼女とお知り合いなの？」

「直接知り合いではないみたいだな。彼女の知人がたまたま俺の友人と顔見知りってだけの事みたいだ」

「ふうん、そんな事もあるんだ。意外と狭い世界なのね」

「だな。そう言えば、航空券のキャンセルはした？」

「あっ、忘れてた！　今するっ！」

理紗子は慌ててスマホを取り出すとキャンセルをする。

「出来た！　で、今夜は何時に出発するの？」

理紗子が時計を見ると、時間は午後五時を回った所だった。

「六時半頃かな。先にシャワーを浴びておいで。俺はまだちょっと仕事があるから」

「うん、わかった」

理紗子は寝室に置いてある着替えを取りに行った。

そして寝室から出て来ると、

「お先に！」

と言ってバスルームへ向かった。

洗面所は以前も入った事があるので特に驚かなかったが、バスルームの造りがとても豪華で理紗子は驚く。

スイートルームなんて今まで生きてきた中で一度も泊まった事がない

小説にスイートルームの描写を書く時も、ネットで調べて書いていた。

だからまさか自分が実際にその部屋を体験できるとは夢にも思っていなかった。

一度経験してしまえば、今後は嘘偽りなく書けるからありがたい。

ただし自分がスイートルームに泊まれるのも、これが最初で最後だろう。

そんな事を考えながら、理紗子は汗でベタベタだった身体を念入りに洗った。

潮風に当たった髪の毛も心なしかゴワゴワしていたので丁寧にシャンプーをした。

石垣島での旅もいよいよ明日で終わりだと思うとなんだか寂しくなる。

初日は色々やらかしたが、健吾と合流してからの日々はいつも楽しく充実していた。

そういう意味では健吾には感謝してもしきれない。

東京に戻ったら頑張って新作に取り組まなければ。

（よしっ！　頑張るぞっ！）

理紗子は心の中で気合を入れると、帰るまでの残りの時間を精一杯楽しもうと思った。

バスルームを出た理紗子は念入りに髪を乾かした後、肌の手入れをしてからリビングルームへ戻った。

「お先にありがとうございました」

まだパソコンに向かっている健吾に声をかけると、健吾は顔を上げてうんと頷いた。

スッピンの顔を健吾に晒しても、もう全く動じない自分が怖過ぎる。

その時、健吾が言った。

「冷蔵庫にパインジュースが入っているよ。あとチョコレートも」

「本当？　わーい、いただきまーす」

理紗子は満面の笑みで冷蔵庫へ向かうと、パインジュースとチョコレートを手にして健吾の隣に座った。

そしてパインジュースを見て言った。

「うわっ！　このパインジュース、石垣島産のパイナップルを使っているんですって！」

理紗子は目をキラキラとさせている。

理紗子が予想通りの反応を見せたので、健吾は思わず頬を緩めた。

そんな健吾の鼻に、隣に座る理紗子のシャンプーの香りが漂って来た。

シャンプーはこの部屋に備え付けの物だが、なぜか理紗子が使うととびっきり良い香りに感じるから不思議だ。

今までも女達のシャワー後の良い香りを嗅いだ経験は山ほどある。

それなのになぜか理紗子から漂ってくるシャンプーの香りは、健吾に深い癒しを与えていた。

（不思議だな）

健吾は心の中でそう呟くと、仕事を終えてノートパソコンを閉じた。

「じゃあ俺も入って来るわ」

それから健吾はバスルームへ向かった。

リビングに一人残された理紗子は、テレビをつけて夕方のニュースを見る。

パインジュースを飲みながら、健吾が買って来てくれたマカダミアナッツのチョコレートを2、3粒摘まむ。

チョコレートは大好きだったがもうすぐ夕食なのでそこでやめ、残りのチョコレートは冷蔵庫へしまった。

そして理紗子はそろそろ出かける準備をしようと寝室へ向かった。