テラーノベル
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3人を乗せた車は都心をぬけ少しずつ車通りの少ない海沿いの道へと出る。
窓を少し開けると潮の香りがした。向井を海へ連れていった記憶が鮮明に蘇る。
💚「よしっ、ついたよ。」
💚「23:36か1時くらいまでは待ってよう」
💜「OK〜めめいける?」
🖤「もちろん」
浜辺で3人揃って座り込み、あとはひたすら待つのみ。特に会話もせず、波の音を聞きながら水平線をながめる。
だが、その日は向井は現れなかった。
💚「1時だ。今日はもう引き上げよう。また明日だ」
💜「実際満月は明日だからね」
🖤「…もうすこし…待たない?」
💚「元々0時で康二に伝えてる。1時間待って来ないとなるとさすがに今日はないと思うな」
🖤「そっか…」
💜「落ち込むなって!あと2日ある」
💚「ただ…明日はちょっと…」
💜「なに?」
────────
次の日、2日目。
目黒はテレビ局の窓から外を眺めていた。
🖤「……」
外は土砂降りの雨だった。
阿部曰く明日の朝まで続くとの事だ。
本命の満月の日が大雨だなんて。これでは向井が月すら見られない。望みを捨ててはいなかったが、その日の目黒は心ここに在らずだった。
インタビューへの返答も上手くできず、告知動画撮影も何度もリテイクを出してしまい、周りに心配までされてしまった。
もちろんマネージャーも黙ってるはずがなかった。
マ「目黒さん…大丈夫ですか?最近更に顔色が悪い気が…」
🖤「大丈夫です。ちょっと寝れてないだけで」
マ「ちょっと仕事量調整したほうが良さそうですね…明後日の仕事リスケ出来ないか聞いてみますね」
🖤「迷惑かけてしまってすみません」
マ「全然!後釜決まるまでは全力でサポートさせてもらいますよ」
🖤「ありがとうございます、お疲れ様です」
そのままマネージャーとは別れ、阿部がテレビ局まで迎えに来てくれた。
💚「めめ昨日もしかして寝てないんじゃない?メイクで隠しても隈が透けて見えるよ」
🖤「なんか…落ち着かなくて…」
💜「倒れたら元も子もないよ。時間が来るまで寝てな。なんなら睡眠薬でも口にねじ込んであげようか?」
🖤「大丈夫 笑。今日が約束の日だから…」
💚「無理はしないようにね」
🖤「ありがとう」
土砂降りの中で来た浜辺は雨を含んで足場がいつも以上に悪くなっていた。
3人で傘をさして向井を待つ。雨雲のせいで月明かりもなく辺りは真っ暗。阿部が持ってきた小さな証明で照らされた 海には、雨の波紋がとめどなく広がる。
昨日よりも何故だが時間が長く感じた。
🖤「もし、今日康二がこなかったら。もう無理なのかな」
💜「諦めるには早いよ。明日も来る予定なんだから」
🖤「そうだけど…満月は今日だった」
💚「俺らは全力を尽くした。その上で康二が来なければ…そういう運命なのかもしれない」
🖤「俺…もう康二と会わない方がいいのかもしれない…」
💜「おい何弱気になってんだ!諦めるにはまだ早いっつってんだろ?」
目黒が珍しく弱音を吐いた。
メンタルは強いほうだが最近の疲労と不安感、極めつけの雨。弱音が出るのも無理もない。
この浜辺の海を見ると向井と別れた最後の日を思い出してしまう。
学生時代に何回か遊びにきた楽しい思い出の場所でもあるはずなのに。
悲しそうに笑う向井の表情で全てかき消されてしまったようだ。
💚「……時間だ。あとは明日にかけるしかない。明日は晴れる予定だから」
💜「めめ落ち込むなって。まだあと1日ある」
🖤「うん…ありがとう」
💚「家まで送る。車乗って」
期待も虚しく、約束の日に向井は現れなかった。
最終日。
この日の仕事は2本。ラジオの収録と新しいCM撮影の打ち合わせ。
幸いにも表に顔を出す仕事がなかった。限界まで疲れきった顔がメディアに残る心配はないだろう。
さらに目黒にとっては ありがたい話が来た 。
マ「目黒さん昨日話してたやつですけど。明日の仕事リスケできましたんで明日は1日オフになってます!」
🖤「ホントですか、すみませんありがとうございます」
マ「いえいえ!最近ちょっと仕事入れすぎちゃいましたね…久しぶりにゆっくりしてください」
今日の夜、向井と再会できたら泥のように眠るだろう。できなければ…まだ眠れない日が続くのかもしれない。
夜、約束の時間になると目黒の自宅の前にまた阿部の車が迎えに来た。これも今日で最後だ。
💚「めめお疲れ様!少しは寝れた?」
🖤「今日は2時間くらいは寝た気がする」
💜「明日仕事は?」
🖤「リスケしてもらって1日オフになった」
💜「おっいいじゃん! 」
💚「あとは康二と会えれば完璧だね」
────────
今日は昨日の雨と打って変わって美しい夜空が広がっていた。
海面を照らす月明かりは優しい光だった。
💚「23:46。今日も1時までね。泣いても笑っても今月はこれで終わり。無理だったら来月になる」
🖤「わかった」
また3人で浜辺に座り海を眺める時間が始まった。
💜「ところでさ、めめは康二に会ったら何話すか決めた?」
🖤「それが何も思い浮かばなくて」
💜「告白すんの?笑」
🖤「男子中学生みたいな話題辞めて笑」
💜「いいじゃん笑 俺ら国民的俳優のガチ告白シーンの目撃者になれるのかと思うとなんかソワソワするもん」
🖤「そんな大層なもんじゃないよ」
💚「大丈夫俺らは離れた所で黙って見てるから笑」
💚「じゃあ…康二がもし、人間に戻れたら何がしたい?」
🖤「戻れたら?」
💜「俺ね、康二とゲームしたい」
💚「俺は写真撮る康二がまた見たいな」
🖤「俺は…花火見に行きたいかな」
💚「花火?」
🖤「地元のお祭りの花火。学生の時は毎年行ってた」
💜「まさか花火を見るに君に見とれちゃって〜とかいうやつ?笑」
🖤「違うけど笑、ちょっと近いかも」
💜「えっ冗談で言ったつもりだったのに!?」
🖤「俺が康二のこと好きになったのはその祭りがきっかけだったんだよね」
💜「そうだったんだぁ…詳しく聞かせてよ笑」
🖤「それはまた今度ね笑」
その時だった。
パシャッ
💚「……っ!静かに!」
🖤「今…」
遠くの方で水が跳ねる音がした。
思わず3人とも立ち上がり沖の方を見つめた。
💜「なんか音したよね、あべちゃん時間は?」
💚「…0:07」
時間通りの範疇だろう。
まさかと思い目黒は思わず波打ち際まで歩みを進める。
少し鼓動が速くなる。見逃すまいと音のした方をずっと凝視する。
🖤「…康二……?」
望みをかけて名前を呟いた。波にかき消されるような小さな声で。
パシャッ
するとまた跳ねる音がした。それと同時に、明らかに魚ではない影が海面から現れた。
それだけで目黒は確信した。
もう一度名前を叫び濡れることなど気にせずに海へと走り出した。
🖤「康二!!」
コメント
4件

続き気になりすぎる…!!
うおおおおおおぉぉ…! 思わず手に汗握りながら読みいってしまいました!続き…楽しみに待ってます!
めかぶぷりん
1,978
#あべさく
うめぼし
4,479