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「雪さまは昔、大怪我をしたんです」
そう言うと、凛は話し始めた
雪は、生まれた時から異様だった。霊力が強く、抑えられないほどの力を放っていたそうだ。そんなだったからか、本家、麗仙家は雪を妬み、忌み嫌っていたそうな。だが、加ノ峰家は雪を蝶よ花よと可愛がり、徹底した教育を施した。そうして生まれたのが、麗仙の白巫女、悪妖を次々と払い除け、周りから言われる様になった異名のことらしい。
雪は気も強く、誰にでも物を言う子供だったからか、本家の子からは嫌われていたそうだ。
雪が大怪我をしたのは、9歳の時。母親と二人で、雑木林で栗拾いをしにきた時だ。かなり力の強い悪妖に出くわしたらしい。母親は巫女ではないため、雪が戦った。元々、大人が束になっても敵わないぐらい強いやつだったので、雪は破れた。母は雪を逃すため妖怪の生贄となり、そのままどこかへ消えてしまったらしい。
雪は重傷を負い、命が危ない状態だったが、一命を取り止め、大手術の末、今も健康でいられるらしい。だが、手術のせいで当時の力の半分を失った。厳密に言えば、使えなくなったが正しいのかもしれない。
「そんなことがあったから、雪さまはあんなことを、、、」
そう言いかけた時、襖に爪を立てる音が。
「凛。」
静かで、冷たい声。
「雪さま、、、」
襖から覗かせる顔を見て、凛は口を抑え青くなる
「何かと思ったら昔のことをベラベラと、、、終わったことだと言ったでしょ」
「雪さま!すみません!そんな、、、」
雪は聞く耳を持たないと言う様子で吐き捨てた。
「昔のことは嫌い。それを馬鹿にしてくる奴もね」
雪はいつになく苛立った様子で消えていった。