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第十三章 繋がる願い
第七話 月を包む灯り
「……よし、とりあえず傷の手当てさせろ」
ツヨシはそう言って、乱暴に椅子を引き寄せた。
ジントは小さく頷き、大人しく座り直す。
その様子が妙に素直で、ツヨシは逆に調子が狂った。
もっと警戒するとか、拒絶するとか、そういう反応をすると思っていた。
だが目の前の青年は、限界まで気を張り続けて、もう抵抗する力すら残っていないように見えた。
ツヨシは小さく舌打ちする。
「……ったく」
コウが持ってきた傷薬と布を受け取り、ジントの手首へ視線を落とす。
赤く擦れた皮膚。
縄の跡。
思っていた以上に痛々しい痕が残っている。
ツヨシは眉を顰める。
「痛ぇぞ」
一応声を掛ける。
するとジントは、
「……はい」
と、小さく返しただけだった。
ツヨシは傷薬を塗りながら、ちらりとジントの顔を見る。
顔色が悪い。
唇も白い。
目が虚ろだ。
呼吸も浅い。
それでも、大丈夫なふりをしている。
そのことが妙に引っ掛かった。
「お前さ」
ツヨシはぼそりと呟く。
「昔っから、無茶して平気な顔するタイプだろ」
ジントの肩が僅かに揺れる。
図星だったらしい。
ツヨシは小さく息を吐いた。
「……やっぱりな」
その時だった。
ふっ、とジントの身体から力が抜ける。
「……え?」
次の瞬間、ぐらりと身体が傾いた。
「お、おい!」
ツヨシは慌てて支える。
ジントの瞳は閉じられていた。
意識を失っている。
「は!? ちょ、待て待て!」
ツヨシの声が裏返る。
コウも慌てて駆け寄った。
「えっ!? 大丈夫!?」
「たぶん大丈夫だから!落ち着け!」
そう言いながらも、ツヨシ自身が一番焦っていた。
額へ触れる。
熱い。
呼吸も不安定だ。
「……マジかよ」
ツヨシは舌打ちすると、ジントの身体を抱え上げる。
その瞬間。
「……軽っ」
思わず声が漏れた。
細いとは思っていたが、想像以上だ。
必要なものまで削るように、ぎりぎりで生きてきた身体。
そんな印象だった。
ツヨシは顔を顰める。
こんな状態で、あの教会の連中から逃げていたのか。
ベッドへ寝かせると、ジントは苦しそうに眉を寄せた。
浅い呼吸。
汗に濡れた黒髪。
白い肌。
今にも消えてしまいそうなほど静かな姿。
ツヨシは無意識に、その顔を見つめていた。
不思議な奴だ。
見た目だけなら、ただの綺麗な青年だ。
なのに教会は、この青年を必死になって追っている。
“月蝕の子”。
その言葉が頭をよぎる。
だが今、目の前にいるのは恐ろしい存在なんかじゃない。
ただ、傷ついて疲れ切った一人の人間だった。
ツヨシの手が自然と伸び、ジントの額に張り付いた髪を、そっと払う。
その時、ジントの瞼が微かに震えた。
「……だい、ち……」
掠れた寝言。
ツヨシは目を瞬かせる。
ジントの目尻から、一筋の涙が零れ落ちた。
まるで、帰る場所を求めるように。
ツヨシの胸の奥が、妙にざわつく。
何なんだ……この感覚。
放っておけない。
見ていると、守らなきゃいけない気がする。
ツヨシは乱暴に頭を掻いた。
「……面倒な奴」
そう呟きながらも、その声はどこか優しかった。
コメント
5件
お願いだから惚れられる前に、💙は早く迎えに行ってもらえませんか😭😭!?ほんとに💦
うわ〜今回も素敵なお話でした!! これからの展開もめっちゃ気になるんですけど、自分的には💙💛を応援したい気持ちと、つよじんがこれからどうなるのかが気になります!!! あと、フォローしてくださり、ありがとうございます!めっちゃ嬉しかったです☺️
え〜〜〜!!第55話、もう胸がぎゅうってなったんだけど!!😭💕 ツヨシの「面倒な奴」って言いながら傷薬塗ってるところ、完全に優しさ溢れてるじゃん!?不器用すぎて尊い…!そしてジントが「だいち…」って寝言で呼ぶシーン、なにこれ切なさ爆発…涙が止まらないんだけど…🥺💦 「軽っ」って思わず言っちゃうツヨシの驚きと、それでジントの過酷さを察する流れ、地味にエモすぎる!!この2人の距離、じわじわ縮まってる感じがたまらん…!!comiさん!続きが待ちきれないよ〜!🙏✨