テラーノベル
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[3918年6月4日??時??分/3号]
「2…号…?」
目の前で2号が倒れた。あれ、おかしいな…。なんで、倒れてるんだろう…?あれ…、おかしい…。
「何故お前がいる。3号…。」
トコイだよね…?倒れてるのが、2号で…、殺したのは…トコイ…?二人が似すぎてついに僕…見間違えしちゃったとか…?
3号の中で、言い訳を何度も捻り出す。頭の中がぐちゃぐちゃになった。明らか、分かっているはずのことを知らないフリをした。
顔や声は同じだ。だが、格好や立ち振る舞いが違うこと、立っているのが2号ではないことくらい3号には分かっている。分かっているが理解しなかった。
けれど、出血し続ける2号を見て、殺されたんだと確信した瞬間、3号は笑い始めた。泣くのを誤魔化そうとした乾いた笑い。
バカだ、なんて罵倒したいくらいだ。弱いと怒ってやりたいくらいだ。見ものだな、と嘲笑したいくらいだ。嘘だと、言ってくれ、なんて口に出せない。
喜ぶべきだ。トコイに恨みつらみを押し付けられるんだ。喜ぶべきだ。これが望まれた結果だ。喜ぶべきだ。これが…、僕にとって一番いい。
3号の頭の中は縷々弁解の巣窟だった。望まれた自分を保つための、ほんのお呪い程度の精神安定薬。
「…なんで、……2号を殺した…!!!」
「お前ら…人間が……憎い…からだ…。私は違う。…異星人でも、人間でもない。バケモノだ!!!」
あまりにも抽象的で理解し難い言葉の意図。それに、ただ首を傾げるだけだった。だが、考える事を諦め、3号はトコイに尋常でない殺意を向けた。
3号は走り、剣を横に振るう。鎌で防がれたが、剣を放したとほぼ同時に、小さなナイフでトコイの左目を刺した。仮面が割れ地面に落ちる音がした。
だが、3号の殺意はおさまることを知らないかのようだった。剣を拾った途端、トコイを蹴り飛ばした。地面に倒れたトコイの上に乗り、剣で心臓部を刺そうとしたが、剣の刃を持たれてしまった。
ここまでくればただの力勝負だった。トコイの手から血はどんどん流れ出し、止まらない。死なずに抗い続けるトコイを見て、3号は目を見開いた。
やがて、少しずつ力を失う3号からぽたぽたと流れる涙を見て、トコイは黙って手を離した。トコイの心臓部に突き刺さった剣。
「…私は…、2号を裏切ったんだ…。」
「なんで…、その事を…僕に…。」
「…泣かないでよ。…やっぱ、私の事覚えてないでしょ。…嫌なことばっかに目ぇ向けてないで、ちったぁ私の事もちゃんと…思い出してくれよ…。」
「ごめん……、昔のことは……、よく……覚えてないや……。」
深いため息をついたあとトコイはだろうなと呟いた。何を考えてるか分からない。一体、君は何がしたくて、君は一体何者なのか、分からない。
君は…、何が苦しくて、そんなに悲しそうな目をしているのか。…君は、……何が辛くてそんな…、そんな事をしているのか、わからなくなった。
「…すまなかった。…私は、お前を…救えない…。」
「なんだよ…救うって…!!なんなんだよお前!!」
「……そうだね。………本当に…すまなかっ…た…。」
トコイはそう言うとゆっくりと息を引き取った。何故か、トコイに刺さっていた剣を抜いた。そんなことより、2号の状態を確認しないとなのに。
何故か、怒りなんて無くなっていた。結局、殺したって虚しさは残るんだ。そう思いながら、僕は血で染まった剣を鞘に入れた。
「なんだよ…あっさり…死にやがって……。」
3号はそうボヤきながら2号の元に行くと、全ての力が抜けたかのように地面に座った。2号の肩を掴み揺すると瞼がぴくぴく動いた。
「2号?!!2号?!!」
3号は倒れる2号の肩を持ち何度も揺する。すると、2号は薄く目を開き口からゲホゲホと血を吐いた。
「3…号。」
咳き込みながら、痰が絡まったような枯れた声で3号と呼ぶ。2号も、自分の死を実感しているような顔をし、せめてものお詫びのように微笑んだ。
「最後に言っておきたい事が…ある…。」
「最後なんて言うな…!!まだ…生きてる…頑張って……死なないで…!…嫌だ……。」
「無理…だよ…。ごめん…、私さ……、いつも……いらないって…言われてた…から……そんなふうに……泣いてくれるの……嬉しいんだ…ありがとう…ね……。」
少しずつ目を閉じる2号を何度も揺する。行かないでくれ、お願いだからひとりにしないで…。お願いだから…死なないでくれ…。
死なないでやめてと連呼する3号。けれど、残酷と言うべきか、2号は意識がどんどん無くなっているのだろう。ついに、ガクッと力が抜け、腕に重いものがのしかかった。
「2号…!!2号……っ!!」
「あ……あと…1号に……背中押してくれてありがとうって…言って……おいて……。」
目を閉じたまま2号が後付けのようにそう言った。わかったと3号は返事をし、また2号は身体の力を抜く。3号の腕にまた重いものがのしかかる。
「2号…。」
「あ、あとついでに133号に────」
「あの2号さん?!」
2号が平気な顔してひょこっと起き上がり3号はつい大きな声が出た。こんなタイミングでボケをかましてくるバカさに3号は思わず涙が引っ込んだ。
「あの、…めっちゃ平気そうなのは…なんで…。」
「…あはは…、これ…死んだなー…と思ったんですけど…位置がズレてて…、死んでませんでした…。…でも、引っ込みがつかなくなったというか…。」
なんだよそれ…。勘違いした僕がめちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか!!ふざけんなマジで!!あぁ!!恥ずかし!!最悪!!も最悪!!!
何なのこの人!!なんで!!?ていうか生きてたなら参戦して?!めっちゃ頑張ったのにそこで死んだフリしてサボってたんじゃん!!
もっと早く言ってくれたら僕恥じかかずに済んだじゃん!!!あぁもう恥ずかし!!!はっず!!!
3号は恥ずかしさから顔を真っ赤にした。その姿を見て2号は堪えていた笑いが込み上げ、声を出して笑い始めた。
「ふふっ…顔…赤っ……ふふふっ……。」
「うっさ!!てか早く管理室行くよ!!さっさと任務終わらせんの!!」
[3918年6月4日11時??分/2号]
「2号、USB挿すところありそう?」
「この辺かな〜、あった。」
2号にUSBを渡した。機械にUSBを挿したあと、しばらくデータダウンロード時間があった。その間沈黙が続いた。いくら私が生きていたとは言え、他への損失が酷いと感じた2号。
2号は視界端に表示されたログに気づいた。さっきまで余裕がなくて見ることができなかったから今見られるのは助かると思いつつ視界端に目を向けた。
[RCU-016 死亡]
[HAU-008 死亡]
[REU-037 死亡]
[HAU-086 死亡]
[RCU-120 死亡]
[NRU-055死亡]
[RCU-111 死亡]
そこには、今まで目を向けなかった現実が映っていた。ログを見返してみた。あの精鋭が集まっている2班の生存者は一人もいないみたいだ。
[通信電波受信]
[承諾]
『こちら5号。屋上にヘリを用意しました。何とか撃ち落とされずに済みましたんで、任務が終わり次第屋上に来てください。』
「了解。そろそろ終わる。」
『了解。』
[通信終了]
ちょうどUSBのダウンロードも終わったところだった。多分データは全て入ったと思う。USBを持ち、管理室を出た。
2号と3号は屋上へ行くために走った。その時、2号はチラリとトコイの死体を見た。だが、足を止めずに走り、階段を駆け上がった。
とにかく走った。屋上の扉は何故か空いていた。そのためヘリに乗り込み一息ついた。
「ふぃー…疲れたぁ…って…血生臭っ!!!」
「ほんとだ…くっさ!!」
「ひど〜!!そっちに敵来なかったのわたしのおかげなんですけど!!」
1号だ。血まみれの1号だった。ログには死んだと表示されてないし、生きていたんだ。良かったと安堵しつつ、血生臭さで2号は鼻を塞いだ。
「ありがとね。」
「分かればいいのよー。お礼は二人のパンツでいいけどどうかな?」
「…パンツ…。」
「さぁ!!今!!ここで!!パンツを脱げ!!」
1号が立とうとしたがヘリが動き出してしまい、不意なことに1号はうっかり天井に頭をぶつけぐったりと椅子に座る。
だらしない座り方で股を開きながらおっさんみたいに座っていた。スカートからパンツが見えるなー。私は女だから見ててもセクハラとは言われない。
3号も見てたりして、と思ったけど下を向いていた。無理もないだろう。今回の作戦で、このメンバーでヘリが動いたということは、他のメンバーを乗せる必要が無いって事だ。
つまり、他のメンバーは死んだって事になる。ログを確認してるかは知らないけど、何となく察したんだろうなー。
86号も、37号も、…8号も16号も、6号も…。死んでしまったんだ。あとのメンバーとは…、あまり接点がない。けれど、あの子達なりの人生を歩んでいたんだと思う。こんな所で死にたくなかったろうに。
「ていうかなんで3号いんの?」
「それは思った。」
「……三班のヘリに乗り込んだ。」
「は?」
思わずは?と言ってしまった。1号も同じようには?と言い、3号に目をやる。この後どんな罰が下っても私は何も出来ないよ3号…。
でも、今回3号がいなかったら私は本当に死んでいたと思う。それに、1号は思った以上にしんどいと思う。いつもより表情が暗い。
思い返してみれば、…私や1号や3号以外皆死んじゃったんだ。大半は死ぬ任務だ。むしろ、異星人の弱体化でかなりあの基地も弱まっていたはずなのに。
「…あのさ、僕の班の子達さ…。皆、…86号以外…18歳もいってない子だったんだ…。皆、年齢がばらばらで…、それで───」
「それって!!……55号や……120号も…?」
急に1号が食いついた。3号は少し驚いた表情をしていた。1号はこの子達と知り合いなのだろうか。にしても、この子がこんなに食いつくなんて珍しい。
いつも食いつくと言うより噛み付いてたし。危険任務で精神状態が安定してない感じがひしひしと伝わってくる。前はあんなに強く見えたのに、今は、簡単に壊れてしまいそうな程脆かった。
「…そうだよ…。あの二人は…、優しかった…。55号はナルシストだけど、頼りになるいい子で…、120号は、仲間の為に頑張れる…優しい子だった……。」
「……そう…。その子に…、私は悪いことを…したの…。私のせいで……死んだ…。55号も…、私のせいで死んだの…!!」
「……し…しんみりした雰囲気になっちゃうから…この話やめにしよう…。それに、1号のせいじゃないよ。3号も、あまり気を落とさないで。」
1号もなんだかんだ仲間思いというか…。それに、自分のせいにしないでほしい。1号が二人を殺したって言うのなら話は別だけれど、そうじゃないなら、全然君のせいじゃない。
2号は喋ろうとしてやめた。今は、落ち着く時間が必要だと感じ、疲労感や眠気が瞼を重くした。そうして、2号はそっと目を閉じた。
[3918年6月5日8時04分]
『嬉しいニュースです!!3918年6月4日、異星人の大規模軍事基地が核爆弾により破壊されました!異星人は完全降伏したとの事です。』
『これから異星人の全身柄を拘束し、処刑台へ送るそうです!』
『これから進むスフェルナの発展に、是非ご期待を!』
こうしして、ここ数年に渡る異星人との戦いは終わった。あの任務以降、異星人の残党の排除を余儀なくされた私たち。
あと少しで戦いが終わる。そう思いながら、武器庫から剣をとる。これから、捜査任務だ。廊下を歩き3号と合流する。
「2号、これから任務だけど、…準備できた?」
「うん、じゃあ行こうか。」
そう言いながら私は3号と廊下を歩いた。
#恋愛
ばたっちゅ
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#BL
NGS_ヘビーなしっぽ
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コメント
1件
うわっ…もう心臓がバクバクしてるよ…。 2号が死んだと思ったら生きてたの、めっちゃ騙されたし、3号が恥ずかしそうにしてるところも可愛かった🥀 でも、それ以上に…他の班の子たちがみんな死んじゃったって知って、1号が55号と120号の話してる場面がすごく胸に刺さった。 「自分のせいで死んだ」って言う1号を見てると、戦いの代償って本当に重いんだなって思わされる。 それでも、みんなで生還したこと、最後の「君という光の中で」っていうタイトルが、すごく切なくて温かかった。 天脳音月さん、ありがとうございます。この苦しい物語をちゃんと読めてよかったです。