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佐久間と喧嘩して1ヶ月と数日が過ぎた頃。
向井はあのサンゴ礁に帰れないでいた。
きっと佐久間には佐久間の事情がある。そう分かっていても、彼の考えには共感できないところが多い。
🧡(……でも言いすぎたかな…謝らな)
そう思って岩陰で縮こまっていたらキュッと声が聞こえた。
🧡「ん?…おわっ」
顔をあげるとそこには2匹の可愛いイルカがいた。
向井の頬を口吻でスリスリと撫でたあと、何かを伝えようとしてくる。
🧡「どっどしたん!?あれ?君らさっくんの友達とちゃうかった?」
見た事のある2匹。
佐久間が紹介して何度か一緒に泳いだことのあるイルカたちだ。
🧡「さっくんは?」
2匹は向井の体を起こし1匹は道案内をするように先頭を泳ぎ、もう1匹が向井の背中をグイグイ押してくる。
こっちだよ。
おいで。
そう言われているようだった。
🧡「……さっくんが呼んどるん?」
言葉が分かるわけではないが、ただそんな感じがした。
向井はようやくイルカを追いかけるように自分の尾鰭で泳ぎ出す。
しばらく泳ぐと見た事のある光景が見えてくる。
そこには久々にみる姿もあった。
🩷「おっ見つけてくれたんだ!ありがとう〜!!」
佐久間️️だ。イルカと向井へブンブンと大きく手を振る。イルカは褒めてと言わんばかりに佐久間へ擦り寄る。
🩷「うひゃひゃひゃ!くすぐったい笑 よしよし偉い偉い!!やっぱ君らはお利口さんだね〜♡ 」
🩷「わかったわかった!今度いっっぱい遊んだげる!君らのいつもの場所におやつ置いてるから食べな!」
佐久間と戯れたイルカは2匹とも泳ぎ去っていった。
その後佐久間は一呼吸おき、向井の方へ向き直す。
🩷「ごめんね、急に呼び出しちゃって。まだ怒
ってる?」
🧡「…ううん。俺こそさっくんのことなんも知らんのに…ごめん」
🩷「俺は色々あったからね〜。思い出したくもないようなことがね」
🩷「俺の話いいんだよ別に笑 こーじに見てほしいものがあるの」
🧡「俺に?」
佐久間はサンゴ礁の上に乗っている物を指さした。
漁で使うようなアンカーに縛り付けられた瓶。
その中には手紙と見慣れたものが入っていた。
🧡「…えっ!!?」
向井は思わず瓶に飛びついた。
中に入っていたのは目黒がずっと使っていた腕時計だったからだ。
そして入っていた手紙を読む。
『 康二へ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今、世界中で人魚を狙う人達が増えてる。捕まれば命も危ないかもしれない。康二の大学の先輩たちに協力してもらって康二を保護してもらうよう協力してもらってる。この手紙を読んだら、次の満月の夜0時に俺たちが別れた浜辺に来て欲しい。
もう一度話がしたい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ M 』
🧡「…M…めめ…」
🩷「やっぱりそう?」
🧡「これ…めめのや…めめの時計や!手紙の字やって絶対めめの!」
🩷「何日か前に見つけたんだよ」
🧡「大学の友達…まさか、ふっかさん…?」
ポツリポツリと独り言を零しながら手紙を読む。
そして目に留まる一文
『もう一度話がしたい。』
🧡「話…」
🩷「罠かもしんないよ?」
🧡「そんなこと…!」
🩷「手紙にも書いてるじゃん。俺の言った通りっしょ?地上では人魚は金儲けするのに格好の的なんだよ」
🩷「安全なフリしてあえて誘い込もうとしてるかも」
🧡「めめはそんなことせぇへん!」
🩷「じゃあ行くの?」
🧡「それは…」
🩷「昨日の月の様子だと、満月は多分あと3、4日くらいかな」
🧡「………」
🩷「こーじ言ってたじゃん。許されるなら会いたいって」
向井は迷っていた。
人魚が狙われていると分かった上で目黒に会えば、危険なことに目黒を巻き込むことになるのは目に見えている。
そして自分はあれだけ目黒に迷惑をかけ、目黒に最低な選択をさせ、海に来た。
🧡「俺は…めめから離れた方がええ。そう思って海に来てん」
🧡「めめの将来を潰しそうで。足を引っ張りそうで」
🧡「でもめめは優しいから。突き放しもせんでそばにおってくれて。俺なんかのために泣いてくれて。その優しさに甘える自分が許せんくて」
🧡「もう二度と会わんつもりで…おったのに…」
こんな手紙をみたら会いたくなってしまう。
佐久間の言う通り罠かもしれないのに。
🩷「………俺は人間が大っ嫌いになった」
🩷「金のために、名声のために、自分のために、生き物の命を蔑ろにする。そんな奴らしかいないと思ってる」
🩷「俺らみたいな人魚を『怪物』って呼ぶ。だからこの手のものは絶対に罠だって思っちゃう」
🩷「でも…こんな海のど真ん中に使ってた腕時計沈めてまでして探そうとしてるっていうのがホントなら…その人はこーじの事が大事なんだと思う」
🧡「さっくん…」
🩷「俺は愛なんて知らない。でも、愛がないと誰かのために泣けやしないと思う。その証拠に両親は俺のために泣いてくれたことなんて1回もない」
🩷「こーじは『自分を許せない』んじゃなくて、『自分を受け入れられない』んじゃない?今こんな姿になってる自分をさ」
🧡「……っ!」
🩷「多分そのめめって人はこーじの今の姿も受け入れてくれてるし、その上で向き合おうとしてるよ」
脳裏に目黒の顔が鮮明に現れる。
忘れようとしても忘れられない顔が。だんだん目頭が熱くなる。
海に沈めたはずの鱗をまとった恋心が叫んでいる。
🩷「泣いてんの?海ん中だから分かんない笑」
🧡「さっくん…ごめん…ありがと。ちょっと…考える」
🩷「じゃ俺はそこら辺ぶらついてこようかな〜」
🩷「あっ、そういえば。こーじってそういう字なんだね」
佐久間はそう言ってどこかへ泳いで行った。
向井はそこから動けなくなった。
ただひたすら、瓶の中の手紙と腕時計をじっと眺めていた。何時間も何日もずっと。
────────────
目黒から預かった瓶を海に沈めて1週間が経った頃。阿部の研究所に深澤が暇つぶしに来ていた。
その時深澤がふと思い出したように話し出した。
💜「あべちゃんちょっといい〜?」
💚「どしたの?」
💜「阿部ちゃんと調べた海難事故あったっしょ?」
💚「あったね」
💜「科学研究所が持ってる船のヤツ。俺潜入操作した時ちょっと気になるデータ見たんだよね」
💚「気になるデータ…?」
💜「どうやらアイツら、一番最初に見つけた人魚をずっと探してるっぽいんだよね」
💚「逃がしたってこと?」
💜「う〜ん…搬送中に事故って逃げられたっぽい」
💚「事故か…」
💜「山道で事故って発見が遅くなって研究員みんな死亡。1人は離れた森ん中で見つかって。何かに噛まれたような跡があった」
💚「……人魚の歯は尖ってる。めめが言ってたやつ」
💜「そ。相当お転婆な人魚だよね〜。ただその人魚ね、とある大企業の息子だったって話」
💚「えっ?ヤバくない?買い取った?」
💜「………1億」
💚「マジか…そりゃ逃げ出したとなると探すわな」
💜「名前なんだったかな…えっと…サ…サクマ…だったかな」
💚「1億でしょ?それでいて大企業の息子となると買い取った事も逃げ出した事も世間にバレたら大騒ぎだ。なんとしてでも見つけ出そうとするはず」
💜「普通に1億は大損害だもんね」
💚「ほんとに利益と世間体しか気にしてないようなヤツらだからね」
💚「アイツらがどんな研究をして、どんな風に人魚を扱ってるか嫌でも浮かんで見えてくる。食事はテキトー。水質管理も杜撰。そのくせ利益や成果を上げるために無茶な研究をする。血液や体液を調べるために命に関わる量を取る」
💚「ほんとに虫酸が入る」
💜「さっすがあべちゃん」
💜「……元研究員なだけあるね」
💚「嬉しくないな」
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#あべさく
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
6,771
愛月☆
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