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もうくっついちゃえよ(*´▽`*)
朝の庭は静かで、風が竹を揺らす音だけが響いていた。
澪は屋敷の庭を歩いていた。
(庭もきれいだなぁ⋯でも、人間の住む家の庭とは少し違う感じがする⋯⋯)
そんな風に思っていた、その時。
ふわり、と。
空気がひんやりと揺れた。
「⋯⋯え?」
耳の奥で、かすかな囁きがした。
──だれ⋯⋯?
澪は思わず振り返る。
そこには、小さな影が立っていた。
人の形をしているようで、していない。
けれど、悪意は弱い、澪はそう感じた。
ただ、好奇心だけが、こちらを覗いているような──
「⋯⋯ひ、人⋯⋯?」
影は澪の足元に近づき、まるで匂いを嗅ぐように澪の袖に触れた。
「っ⋯⋯!」
その瞬間。
「澪さん!」
朧の声が響いた。
朧は風のような速さで澪の前に立ち、人の形をしているような者を、鋭く睨みつけた。
影はびくりと震え、すぐに霧のように消えていった。
澪は胸に手を当て、息を整える。
「お、朧さん⋯⋯すみません⋯⋯
私、勝手に庭に出てしまって⋯⋯」
「本当です⋯⋯
あなたに何かがあったら私は⋯⋯」
「?」
「いえ、澪さんのせいではありません。あの妖が勝手に近づいただけです。」
朧は、澪の肩にそっと手を置いた。
「⋯⋯怖かった、ですか⋯⋯?」
「⋯⋯少しだけ」
「大丈夫です。私がいます」
その声は、いつもより低くて、どこか焦りが混じっていた。
その時。
「⋯⋯っ」
突然、空気がまた揺れた。
さっきの影が、ほんの一瞬だけ戻ってきたのだ。
朧が振り返るより早く──
澪は朧の袖を掴み、思わず前に出ていた。
「だ、だめです⋯⋯!朧さんに⋯⋯触れさせません⋯⋯!」
影は澪の気迫に驚いたように、完全に霧散した。
静けさが戻る。
朧は、驚いたように澪を見つめていた。
「⋯⋯澪さん」
「すみません⋯!私、勝手に⋯」
「違います」
朧は澪の手をそっと包んだ。
「あなたが⋯⋯私を庇ったのですか」
「⋯⋯はい。朧さんに⋯何かあったら⋯嫌ですから⋯」
朧の金色の瞳が、ほんの少し揺れた。
「胸が⋯⋯熱いです」
「⋯⋯え?」
「あなたに守られたのは⋯⋯初めてです」
(私だって⋯⋯。)
「澪さん」
朧は澪の手を離さず、静かに言った。
「あなたが⋯⋯私を守りたい、と思ってくれたこと
とても嬉しいです」
「朧さん⋯⋯」
「ですが⋯⋯
私は、あなたを⋯守りたい。そのために存在しています」
澪の胸が、じんわりと温かくなる。
二人の距離は、またひとつ、近づいた。