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海での出来事から何日かしてダリルにいちゃんがきた。俺もこれから昼の作業を始めるところだ。
「ダリルにいちゃん、作業は順調だよ。本当にこのツルハシはすごいやっ」
手に輝くツルハシは陽の光を反射して輝いている。
「いずれは自分でそれをみて分かるようになって欲しいが、そのツルハシにはふたつのエンチャントがされている」
「うん? ダリルにいちゃんと人魚ねえちゃんのエンチャントのことだろ? 水属性と人魚の加護だっけ?」
このツルハシにかけられてるっていう水属性はそれだけで強力な武器みたいな物だ。人魚の加護は……なんだろ? 分かんない。
「人魚の加護は、癒しだ。その力は人を守り癒す。具体的には、お前がこうやって削り出した坑道の壁は崩落を防ぎ、癒しを目的に振るえば、その水はケガを治す力をもつ。まあ、俺のクスリのようにとはいかんが、効果ははっきりと出るはずだ。これでお前の役に立ちたいと言った願いは暫定的ではあるが叶ったことだろう」
父ちゃんの役に立つ。守れるようになりたい。その願いはこの一本のツルハシで叶うのだ。
そう聞いて嬉しくて涙が出て……ない。出てないったら出てないんだ。
「それと、これはとあるドワーフから渡すように頼まれた物でな。いつかこれの使い方がわかるようになったとき、その時でいいから使ってくれとのことだ」
いい物を作って見せてくれと言っていた、と。そう言ってダリルにいちゃんは一本の金槌を渡してくれた。
それはなんだか懐かしく、でもつい最近まで共にあったみたいで、なぜか酒臭くて、涙が出た。嬉し涙だ。なんでかは知らないけど。
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スウォードという街には何軒かの鍛冶屋がある。街の金物は基本的にここらで作られる物ばかりだ。
けどその中にいつからか外から持ち込まれる、山のドワーフ作の物が見られるようになった。
その腕は良く、たまに仕入れられたと分かるとすぐに売り切れるほどだ。その品物は特定の店にのみ卸されており、名をバルゾイシリーズとしてその種類は多岐にわたるが、ひとつだけ非売品として飾られる一振りの剣がある。それはその鍛冶屋の壁に飾られており、今も誰かの目につくのを待っている。