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週が明けて月曜日になった。


涼平はキャンプから戻り身も心もエネルギーに満ち溢れていた。

詩帆と過ごした一夜は涼平の失われていた自信を見事に復活さてくれた。今涼平は全ての事に全力で立ち向かえるパワーに満たされていた。


この日涼平は職場に着くとすぐに加納のデスクへ向かった。


「先輩、有給ありがとうございました。これ土産です」

「ありがとう。おい、田中! これ後でみんなに配っておいて」


加納は一番若手の田中に土産を渡した。


「ところでどうだったんだ? 初めての旅行は?」

「ええ、まあなんとか」


涼平が照れたように笑ったので加納がピンとくる。


「えっ? オマエしないって言ってたじゃん。したのか? なんだよーそうかーめでたいめでたい」


加納が満面の笑みを浮かべて頷いているとすぐに佐野が来て言った。


「えっ? 涼平さんテントエッチ成功ですか?」


佐野が直球で聞いて来たので涼平がコソッと言った。


「お前が言っていた通りテントの中でのアレは燃えるな」


それを聞いた加納が大笑いをする。


するといつもはすぐに反応する佐野が黙ったままなので変に思った二人が佐野を見ると、なんと佐野は泣いていた。


「おい、なんでお前が泣いているんだよ」


驚いた加納が聞くと涼平も慌てて言った。


「あれ? 俺なんか変な事言った?」


そこで佐野が泣きながら訴える。


「だって涼平さん、菜々子さんが亡くなってから真剣に恋愛をしようとしないから……俺ずっと……心配で……うっ……ひっく……」


とうとう佐野は大泣きし始めた。佐野は嗚咽を漏らしながら泣き続けるので周りの社員も驚いているようだ。

そんな佐野を優しい目で見つめながら加納が言った。


「そうだよな。涼平と菜々子ちゃんはお前にとっては兄と姉みたいな存在だったもんな。その姉が急にいなくなり兄貴もいい加減に生きていたらそりゃ心配になるよな」


すると佐野は更にわんわんと声を出して泣き続ける。


涼平はそんな佐野を見ていかに自分が周りに心配をかけていたかという事に気づいた。

菜々子がいなくなって以降、皆はいつも通りに涼平に接してくれた。

涼平は皆があえて普通に接してくれていたから余計な気を遣わずにいられたのだとこの時悟った。


しかしその陰で皆は常に涼平の事を心配してくれていたのだ。

その事実を知った涼平は胸がいっぱいになり泣きじゃくる佐野を抱き締めると、


「心配かけて悪かったな。俺はもう大丈夫だ、安心しろ」


涼平はそう言って佐野の背中を優しくトントンと叩いた。

そんな二人の様子を加納が穏やかな目で見つめていた。




一方、キャンプから戻った詩帆もその後精力的に活動していた。


フリースクールでの授業は順調に進んでいた。

生徒達は将来希望する進路を見据えて授業で行う実技を選択し基礎技術を学び始めた。


ゲームオタクの佐倉博己は高校卒業資格を取った後プログラミングが学べる理系の大学への進学を目標に定めた。

ファッション系に進みたいと言っていた山口絵里奈は大学の服飾科を目指す事に決めた。

自分で大学を調べ始めたところ行きたいと思える大学を見つけた。絵里奈も博己と共に高校卒業資格を目指す。

それと共にカラーコーディーネーターの資格試験にも挑戦するらしい。


絵本作家になりたいと言っていた小川ユリは当初からの目的である美大を目指す事にした。高校卒業資格の勉強と共に美大受験の予備校にも通い始めるようだ。授業の中では受験に必要なデッサン力を磨く。

山田幸紀は先日講師に招いたプロ山岳写真家の佐伯に影響を受けて写真が学べる都内の大学を目指す事にした。

そして更にスペックの高い一眼レフを購入する為にアルバイトも始めたようだ。



こうして生徒達は自分が進みたい方向へ向かって着実に動き始めた。

詩帆自身も前向きな生徒達から刺激を受けてイラストコンクールに応募していた。


ちょうど偶然詩帆が働いているカフェで『カフェに飾りたい絵画コンテスト』の募集が始まっていたので、詩帆はまずこれに応募しようと決めた。

下田で描いた海の絵を元に憩いの場であるカフェの雰囲気に合わせてアレンジを加え一枚のイラストにする。

詩帆が大学で学んできたデザイン的な要素も取り入れて優しい雰囲気の素敵なイラストに仕上がった。



一方涼平の方も、今手掛けている商業施設の設計を建築コンペに出す事にした。

元々は加納から出してみろと言われていたのだが、詩帆が頑張っている姿に影響を受けて涼平も挑戦してみようと思う。

もしこれで入賞すれば事務所の知名度も上がるし設計士としての涼平の名も知られる事になる。

そうなれば、近い将来自信を持って詩帆にプロポーズできる。涼平はそう考えていた。

セルリアンブルーの夜明け

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