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その後も、彼は、奈美と会えなかった時の出来事を、事細かに伝えていく。
元カノから、一日に何通も復縁したいとメッセージが送られ、辟易していた事を始め、優子に奈美のIDを削除された後、自分のスマホを取り返し、あの女のIDを目の前で削除した事。
彼女は瞳を濡らし、複雑な表情を見せながらも、黙って彼の話に耳を傾けている。
連休明けの勤務初日には、西国分寺駅で待ち伏せされた事を伝えた時、奈美は、アーモンドアイを丸くさせていた。
「俺は、あの女に、『付き纏ったり、危害を与えるような事をしたら、警察に通報する』と警告した。その事に逆上したんだろう。会った翌日、あの女はスマホから向陽商会のサイトの問い合わせ欄に、俺の誹謗中傷の内容の書き込みをした」
彼女は、両手で口元を覆い、黒い瞳からは雫が頬を伝っていた。
「そこで、連休明けの出勤初日だ」
奈美に会えなかった事の不満を晴らすように、豪は言葉を放ち続ける。
彼が、会社の上層部に呼び出され、プライベートの事、今は恋人がいるのかと聞かれた事。
翌日には警察が会社に来て、彼は捜査に立ち会い、社内サーバを調べた際、元カノスマホだった事が判明。
その後、警察署へ出向き、事情聴取もした。
そのお陰で、彼の業務が滞り、毎日残業する羽目になった、と話した時、豪の表情が、心底ウンザリしていた。
「今の恋人とは、もちろん奈美の事だ」
奈美が、照れたのか、頬を薄紅に染めている。
「あんな美人な方が、そんな事をするなんて……。人は見かけによらないものですね……」
彼女が瞳を潤ませながら丸くすると、豪は、奈美の不安を取り除くように、身体を抱き寄せる。
「その間、奈美からの連絡が来ていた事は分かっていたが、全てにケリをつけてから必ず電話する、って思ってたんだ。今週に入ってからも残業して、ようやく落ち着いたのが昨日だ」
奈美が黙って頷き、泣き笑いの表情を映し出した。
「今の話を聞いて…………ストーカーに殺害された事件とかもあるし……豪さんが……無事で良かったです……」
彼女の言葉に、胸が熱くなった。
豪をここまで想ってくれる女は、やっぱり奈美しかいない、と感じた瞬間。
「心配掛けさせて、本当にすまなかった。ようやく……全てが片付いた」
奈美は涙を溢れさせ、彼は彼女の頬に触れると、親指でそっと涙を拭い、胸元に引き寄せた。
しかし、彼女はまだ気になる事があるのだろう。
あ、そうだ、と豪の顔を見上げた。